66.タツキの失恋
間違って65削除…少し整理します
65.再投稿しました
お風呂覗きの騒動があった日の翌日の夜。
その日はごく順調に距離を稼いだ。
途中で黒馬が魔魚じゃなくて大きなイカ(クラーケン?)をツノからの雷攻撃で仕留めたり。
タフがワイバーンを狩ったり、私がジャイアントディアを狩ったり。
サナエがゴブリンの集落を滅したり、タツキがオークの群れ蹂躙したりはあったけど。
レイキ?レイキは収納式のピザ窯を作ってたよ!
リリと姫と王子はルーと一緒に狩りをしていた。リリが追い込んで姫と王子がとどめ、ルーは糸を展開してリリの追い込みの手伝い。
こうしてまぁまぁ平和な1日を終えた。
で、荷馬車に4人で集合してお茶を飲む。
「なぁ、グスタフのことだけどな。シエルは信用出来るって言ったけど。彼は何者だ?」
タツキが切り出す。
「少なくともシエルに恋愛感情はないな」
「そうね、昨日も何も感じてなかったし」
…見えてたの?お湯の中のソレが。
サナエは顔を赤くして
「あの体勢で、何かを感じてたらそういう顔をしてる筈。でも彼の目は澄んだままだった」
欲情すると目が変わるの?
「あーそれな。目の色って言うか…ギラギラするよな」
思わずタツキを見る。
「そうなの?」
「まあな…」
レイキも頷く。
「それにシエルも…なんて言うか、親にもたれるみたいに安心して寄りかかってたし」
「だな…」
上手く言えないんだけど、感覚?守られてるような…。アンナの息子って言うのがね。
「前に少し話をしたタフが襲撃された話ね」
みんなは静かに聞いてくれる。
「その時に襲撃犯が、アンナの息子って声を掛けてた」
「アンナ?」
そう、どっちとも取れる名前だ。
「その名前…あっちの名前じゃないか?」
「うん、そうも思えるし…なんて言うか微妙?」
「まあこっちでもありそうだけど」
「タフが35でしょ?お母さんがこっちだと早ければ10代後半かな、で産んだとして。18と仮定したら今は53才」
「そうなるな、でその母さんはもう?」
「多分ね。故人で、その人の持ってた何かを探してるんじゃないかと」
「何故そう思う?」
「ブツを寄越せって言ってたから。それにタフは私たちのポーチが時間停止だって気が付いていた」
実際はポーチじゃなくて亜空間だけどね。自動転送してるから、結局は時間停止と同じだ。
「それなら収納量についても気が付いてるか?」
気になってた事がある。
「ワイバーン…」
レイキがあっと言う顔をする。
「まさか?」
「多分、悪意はない。確認する為、かな…」
「どう言う意味だ?」
「タツキ、ワイバーンの大きさは?」
「あ…」
そう、ワイバーンは大きい。さらに時間停止または時間遅延が無ければ肉は腐る。そして、そもそも大きくて普通の収納なら入らない。
空間拡張であっても、かなりの大きさじゃ無ければ入らない。それがワイバーン。
多分、タフは悪意ではなく確認のためにワイバーンを狩った。その肉はまだ私の亜空間に収納されてる。
ならば、時間停止と収納サイズがおよそ確認できる。
この世界で、時間停止の空間拡張カバンはないと私たちは知っている。
タフはそれを言い当てた。
ならば、タフは時間停止があることを知っている。
それが私たち転移者特典ならば…実際にはポーチじゃなくて亜空間だけど…タフは転移者を知ってるのかも。
あ、もしかして…ポーチやカバンに時間停止を組み込める?
魔法通信で調べた。
ん?なるほど…でもそれって。
調べた結果は想定内でもあるし、想定外でもあった。
「魔法通信で調べたんだけど、時間停止のカバンは作れない。私たちと同じで自分の亜空間と接続させることで時間停止に見せかけてる」
「なぁ?タフが時間停止のカバンがあると知ってるのなら」
そう、彼は持ってるか…知ってる。
「やっぱりアンナは私たちと同じで、転移者なんじゃないかな」
それしか考え付かない。
「故人だとすると、襲われたとか?」
首を振る。分からない。
「何にせよ、信じるとしても俺たちのことはまだ話せない」
頷く。それは私も賛成だ。
私たちの為でもあるし、タフの為でもある。
「よし、何か甘いもん食べよう!何がいい?お取り寄せするよ!」
私はふと思いついてサイトを探す。あった!
サイトを開く。
うほぁ、やっぱり値段上がってるなぁ。
ん?待て待て安くないか…これ。
私はアレとアレをカートに入れる。
「どうぞ!コーズィーコーナーだよ」
レイキとサナエは?な顔をする。タツキは頷いた。
「「何それ?」」
「銀座コーズィーコーナー。洋菓子屋さんだね」
「「へー」」
やっぱりかぁ。何となくそうかなぁって思ってたけど。チラッとタツキを見ると目が合った。
頷く。
(今はまだ…やめとけ)
(分かったよ…タツキ、後で2人で話がしたい)
(分かった)
なんて会話をした。
「うわぁ美味しそう!このジャンボシューはもうシエルがみんなの分を入れてくれたんだね?」
「そうだよ!」
「んーなら私はこのショコラにする!みんなはチョコケーキ食べられる?」
「甘すぎるのはダメだ」
「俺も…」
「サナエ、私は食べられるし。3個とかにしたら?タツキとレイキがダメなら2人で分けて食べよう」
「うん!」
レイキはスフレチーズケーキ、タツキはフルーツミルクレープにしていた。
「シエルが頼んだナポリオンケーキ、凄い美味そう」
「美味しいよ!食べるの大変だけど」
話をしながら共用のお金を写真で撮ってチャージ。
チャリンと音がして亜空間に届いた。
その中からジャンボシューとナポリオンパイを取り出す。
「どうぞ!私の一押し」
「「「いただきまーす」」」
パクリ
ヤバい…おいひー!
「美味い!」
「美味しい…」
「美味いな!」
ふふふっ思い知ったか!私が10代の頃からあるのだよ。それだけロングセラーなのは間違いなく美味しいから。
それにしても安いな。
ジャンボシューは60円、ナポリオンパイは200円だった。多分、あちらの約3分の1。
やめられないぞ?止まらないぞ?カッパエビさん!再び。
「ぐほっ」
レイキがリアルにむせた。
サナエが背中をさする。
「お前、やめろよ!」
「えっ?聞こえてた?ごめんごめん」
おかしいなぁ。単なる心の声なのに。
「ダダ漏れよ?」
「そうなの?」
「そうだぞ!」
ならちょうどいい。タツキの失恋記念だ!
ぐっと拳を握ると
「ごふっ…だからお前は!」
レイキに梅干しされた…痛いよー。
「梅干し…」
サナエの呟きの威力よ。
「はぁ勝手に失恋って…メリルさんだろ?まあな、なんて言うか…ドンピシャな感じに思えたんだよ」
うん、恋に落ちる瞬間を私は見た。
「そうなの?どんな様子?」
サナエが身を乗り出す。そして揺れるぽよん。
タツキに頭を叩かれた。
さーせん。
「んとね…目がポーってした」
「俗に言うハートマークか?」
「それに近いかな。初めは驚いたような感じで。次に耳まで赤くなって、手が泳ぐ。でね、目が飛んでるって言うか…焦点が合わないって言うか」
「はぁ。だからってパパ抱っことかないだろ?」
「習性で普通に抱き上げてくれたけどね!」
「習性で…」
なんだろう、サナエの呟きが呟きゴローみたいでツボにハマる。
「くほっ…おい、パイが喉に引っかかるだろ!」
「レイキはもう少し落ち着きなよ。もう」
背中をさする。
コーヒーを飲んで落ち着いた。
「シエルの心の声がな…ツボるんだ。はぁ苦しかった」
と言いつつもジャンボシューもパイも完食していた。
私はジャンボシューを半分タツキに渡してナポリオンパイだ。
サクッとな。パクリ…んん、美味しい。
昔よく家族で食べたっけ。ハル兄さんはこれ大好きだったなぁ。
あ、マズイ…今はタツキの失恋記念を祝う時なのに。ふと思い出すと涙が止まらなくなる。
「何が失恋記念を祝いだよ…」
そう文句を言いながらも抱き上げてくれるタツキ。
この首に抱きついて泣いた。
「ぐすっ…パイはちゃんと食べるから…ぐすっ残しておいて…」
タツキは軽く頭をこづくと
「泣きながら言うのがそれかよ…」
「だって…」
思春期に引きずられる幸子、52才。居た堪れない。
しばらくして泣き止むとタツキになぜかあーんされてパイを完食した。解せぬ。
おとんなタツキは健在
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