65.タツキの恋
間違って削除してしまったので再投稿します
さらにレイキが崩れ落ちた。
なんかごめん?
「はぇーまた不思議な馬車っちゃ。これが都会のブームっちゅうやつかいな」
違います。即、心の中で否定した。
「いや、これは特注と言うか…」
タツキが説明を始めると…
「やあ、メリル。元気だったか?」
メリルさんの目が開かれてタフを見る。間違いなく恋する乙女の顔だ。僅かに目が潤んで頬が赤くなる。
「グスタフ殿…」
タフは走り寄ったメリルさんを華麗に避けると、タツキに抱っこされていた私を奪って抱きしめた。
首にぐりぐりするタフ。
えー地味にウザい。
(うわぁ、即撃沈か…)
サナエの呟きが静かに落ちた…サナエさん、威力が増しましです!
タツキが呆然とメリルさんを見つめる。
「グスタフ殿のお子か?」
「そうだ!」
しれっと嘘ついた。
ジトっと見れば
「そうだの前にほぼって付けたからな」
小声で言った。ウインクして誤魔化してもダメだよ、もう。でもやっぱり顔がいいから許せてしまう。
イケメンはもう…仕方ないな。
「行商に来たんだ。魚は要らないか?新鮮だぞ」
メリルさんはまだショックなのか、固まってる。するとおじいさんが
「新鮮な魚ですとな?欲しいですがよ」
サナエが荷馬車の幌を開けて、中から氷漬けの魚を取り出す。
「あれまぁ…また見事に凍っちゃよ!」
メリルさんも始動して魚を見る。
「ほんとだぁな…ここらは魔魚が多くて。魚はいても漁もできないっちゃし」
「どうやって食べるんじゃ?」
サナエが
「自然に解凍するか、魔法で溶かして。後はウロコを剥いでから3枚に下ろして、生でも茹でても焼いても…なんでも!」
「はぇ…しかし魔魚のウロコは硬くてのぉ」
あ、そうか。私たちは魔法通信で買ったエオンの鱗取りでザリザリ取れたんだ。
あちら由来の物は売れないし。チラッとレイキを見る。頷いたね。
それを見たサナエはすかさず
「ウロコ取りも売れるわ」
連携もバッチリさ。
お金の交渉はタフだ。
まだ私たちにはこちらの物価がわかってないからね!
そして、村は50人ほどのそれなりの大きな村で。約30世帯が暮らしているという。
各世帯に1匹と、ウロコ取りは村でまとめで10個買ってくれた。
魔魚の漁は出来なくても、浜に打ち上げられたり街道に落ちてビチビチしてるのがいるらしい。
ただウロコが硬くての調理ができなかったから、捨てるしかなかったと。ウロコを剥げば普通の魚と同じ。
この辺りの魔魚は毒がないからね!
で、ウロコ剥ぎの練習。
ついでに空中の魔魚を捕獲する網と投げ方をタフが伝授。その間、メリルさんはタフの横で目をキラキラさせていた。
タツキ、弱ってる今が攻めどきだよ!
(ぐほっ、お前なぁ。言い方!それとずるいだろ?)
大切ならば手段は選ばないぜよ。
(そこまででもないような?まだ若いのに村長をしてるっていうギャップ萌えじゃない?)
とはサナエ。んー成程?
タツキはタフをお手伝いしていた。その目はやっぱりメリルさんを見てて、頼れるリーダーの恋にみんなが注目した。
お魚のとり方とウロコ剥ぎの講習を終えると村をそそくさと出発した。
メリルさんからはぜひ泊まってくれと言われたけどね。タフが頑なに出発すると言って聞かず。
「何年前かなぁ?あの村に行商の護衛として泊まったんだ。夜這いされてな…パン一で部屋から逃げ出した苦い思い出が…」
「えっとちなみに誰に夜這いを?」
「メリルを筆頭に20人くらいに囲まれて…パンツはなんとか死守した」
「「…」」
サナエも私も絶句だ。
「羨ましい…」
誰だ?ってタツキか。いや、怖いでしょ?目を爛々と輝かせて20人に囲まれるって。
「それはな、あの光景を見てないからだ。裸の女が20人…老も若きも…だせ?恐怖しかない。暗闇に鼻息と荒い息遣いがさ…一斉に襲い掛かられるんだぞ?新鮮な男だって」
「それは…」
(新鮮…)
サナエさんや、まさにね?男に新鮮も何もね…。
流石のタツキも黙った。
レイキは…そっと股間を抑えて震えている。
うん、あの村に泊まったら君たちは活きのいい雄として…食われたんだろうね。活魚ならぬ活男。
(活男…)
サナエの呟きだ。流石のレイキも吹き出す余裕はないらしい。
「村はやっぱり閉鎖的だからなぁ。刺激に飢えてるんだよ」
…怖い。それに刺激に飢えてて男性に突撃するの?裸で。ないわー。
「だからな、お前たちは若いし見目も整ってる。強そうにも見えないし、なるべく小さな村には泊まらない方がいいぞ」
みんなでうんうんと頷いた。
で、その夜は見晴らしのいい場所で野営。
荷馬車の中も広いから、タツキとレイキはそこで寝ている。私とサナエは馬車の中。
で、タフは外だ。
見張りは要らないと伝えてある。ラビがいれば異変にはすぐ気がつく。それに、黒馬たちもかなり優秀。
あのツノがね。
だから外とは言ってもタフもテントで寝ている。
囲いを作ってお風呂に入る。レイキ作のアレだ。
旅をする以上、タフにも解禁しようと話し合って決めた。で、お披露目。
タフは目を点にしてから
「マジか…」
と呟くと即座に服を脱いでお風呂に入った。
こら、サナエがいるでしょ?
サナエをチラッと見ると顔に手を当てて…目の所は指の隙間から開いてるね?しっかりと見たのかな。
「ぷはぁ…最高!シーちゃんもおいで」
行くか!みんなが見てる前で裸になんてならないよ、もう。
ん?って顔してすぐさま土の壁を立ち上げた。私とお風呂とタフだけを囲うように。
くっ気持ちよさそうだ、しかも今は2人だけ。よし、行ったるぞ。
服を脱ぐとお風呂…というかタフにダイブした。
「あははっ豪快だな」
しっかりと私を受け止めて抱きしめる。
タフが襲われて裸で抱き合って寝た日の後、タフから言われた。夜目が効くと。
「見たの?」
と聞けば
「余すとこなく全て」
と言われたら。その後しばらく、タフの頬に紅葉のような赤い手形が付いていた。
だからもう今更だ。
「いや、シーちゃんはやっぱり凄い」
「何が?」
「裸でさ、お風呂で抱き合ってるんだよ?異性同士で。なのに…何も感じない!」
キッパリ言ったな。
それは私もだけど。ドキドキとかはしなくて、ただ安心感だけがある。
そのままタフにもたれて目を瞑る。
色々あったかいなぁ…。
突然目の前に土の壁が立ち上がる。はっ?シエルは…。しばらく放心してから慌てて土の壁に穴を開ける。
そこで目に入ったのは…
翌朝、目が覚めた。
ん?もう食事を作ってるのか。昨日は堅パンと魚を焼いたものを食べた。決して不味くはない。不味くは無いのだが、隣から漂ういい匂いが鼻をつく。
食べたいが…はぁ。結局、その美味しい匂いだけ嗅がされて食べられなかった。
だから凄くお腹が空いている。
朝食を作っているのは気配でシエルだと分かる。今は1人みたいだから、謝ろう。
昨日、突然自分たちとシエルを分断した土の壁に焦って穴を開けた。
その先にあった光景は…グスタフに抱きついて目を瞑るシエルと、そのシエルを抱きしめて髪の毛にキスをするグスタフだった。
「あ…」
グスタフの呟きに上体を起こしたシエル。グスタフの上に乗ってるからか、上体はお腹辺りまでお湯から出た。
その細くて薄い体と平らな胸が…折れそうに細いウエストまで余すことなく見えた。
シエルは俺を見て固まった後
「キャーーー!」
叫んでグスタフの首にしがみ付いた。
ぐえっと声を出したグスタフはシエルの体を抱き止めて…
「覗きはダメだよ?」
俺は慌てて穴を閉じた。
「見ちゃった?」
サナエが誰ともなく聞く。
俺は頷く。しっかりばっちりとその幼児体型を見た。動揺はしたものの、それだけだ。
タツキも頷く。
「13才って…あんなか?」
やっぱり誰にともなく聞く。
サナエは
「個人差があるから…」
だろうな、サナエに聞いてもそうとしか言えないだろう。
流石のシエルも怒ってて…いや半分はとバッチリなんだがな、七面鳥の丸焼きが目の前にあるのに。
「レイキくんはいらないみたいだから」
と食べさせて貰えなかった。
「いや、あのな…見たけど。子供だろう?平らなのを見てもな?事故だ!」
火に油を注いだようだ。サナエが首を振りタフは呆れタツキはあちゃーという顔をした。
頭を振ると起き上がる。
珍しくタツキより早く起きたようだ。荷馬車の荷台から降りるとシエルが料理をしていた。
俺をチラッと見るとそっぽを向く。
「おはようシエル…その、昨日はごめん」
頭を下げる。
しばらく沈黙が落ちた。すると頭を撫でる小さな手を感じた。
「おはようレイキ。覗きはダメだよ?」
顔を上げるとニヤッとした。良かった。機嫌は直ったか。
「ごめん…なんか慌ててしまってな」
肩をすくめるシエル。
「にしても、幼児体型は本当に何も感じないな!」
ピキッ
「レイキくんは朝ごはんいらないんだねー」
ハッとした。ヤバい、またやってしまった。
「いや、それはいる」
ジトっと見られた。シエルはため息を吐くと
「感じるって言われても困るし…仕方ないなぁ」
ふわりと笑ってくれた。良かった。朝食ゲットだ!
こうして暖かくて美味しい朝食と、昨日の七面鳥の丸焼き(残してくれてた)、魚のフリッターを食べた。
涙が出るくらい美味しかった。
俺もグスタフを笑えないな。シエルおかん無しでは生きられそうもない。全く…な。
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