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星なし転移者と仲間たち〜逃亡中〜  作者: 綾瀬 律
異世界転移?

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閑話 グスタフの想い

後書にグスタフとシエルのイメージイラスト載せてます…

シエルの目の色が違うのですが、能力の限界でした


 俺は馬に揺られている。俺の前には俺と同じ髪の色をした少女が座っている。

 その髪を撫でる。

 何?と言うように振り返ったその顔は銀色の珍しい目をした儚い美少女だ。

 もっとも儚いのは見た目だけだが。



 俺はまた前を向いた少女のその髪を梳く。

(母さん、探していた子たちを見つけたよ…)

 ふと昔のことを思い出す。


 俺の祖母はエルフだ。しかも、種族の族長の娘だったらしい。

 エルフは森から滅多に出ない。森の中で一生を終えることも珍しく無いのだ。

 しかし、たまたまそのエルフの集落近くに祖父が迷い込んだ。


 冒険者だった祖父は、まだ級も低かったがとにかく体が大きくて丈夫で、物理が強かったらしい。

 エルフは華奢で、男性でも中性的な顔立ちをしている。だからなのか、祖母はその対極にあるような祖父に惹かれた。

 しかし、族長の娘となると後継問題もあって反対された。

 で、駆け落ち。


 魔法能力が極めて高かった祖母と、物理が強かった祖父は追手を振り切って森を出た。

 そして結婚して幸せに暮らした。

 祖母も冒険者として登録し、2人だけのパーティーながら活躍した。


 Sランクにまで上り詰めたが、祖父が40才を過ぎた頃に引退。すでに3人の子を授かっていたので、最後の子である父を授かったのが引退のきっかけだ。


 エルフは長生きで、祖母は特別長生きだ。

 今も存命でピンピンしてる。

 末息子の父は森の中の一軒家で育った。やっぱり外には出ずに、森の中で暮らしていた。

 父が17の頃、森で迷子になった女性と出会う。それが俺の母アンナだ。


 母はこの世界では珍しい黒髪に黒目だった。いなくは無いが、とても珍しい色だ。

 その艶やかな髪と黒い神秘的な目に父は目を奪われた。

 その時、母は16才。

 弱っていた母を助け、甲斐甲斐しく世話をする。


 何故か祖母も2人の交際を許し、自然な成り行きで2人は結ばれた。

 父には兄2人と姉が1人いる。みんな祖母の出身の森に行った。それは同族での婚姻による子の出来にくさに困っていた祖母の父、族長からの依頼もあり。

 祖母も当時は冒険者として活躍していたのもあり、同族に託したのだ。


 だから引退して末息子の父だけは手放さずに育てた。物理の強い祖父と、魔法に強い祖母の血を引いた父はやっぱりちょっと反則なくらいは強かった。

 そして、母も細身の体からは想像できないくらい強かった。

 あれはスキルでは無くジョブだろう。多分、剣士系の上位ジョブ。


 しかも、鑑定も持っていた。

 普通、そこまで強力なジョブとスキルが与えられることは少ない。

 俺も森で育ったから、そのことを知ったのはもう母が亡くなった後だ。


 母は17才で俺を産み、32才で死んだ。

 ゆっくりと体が動かなくなり、最後は呼吸が出来なくなって。

「どうして…?」

 母はその問いに笑って答えなかった。


 ある時、寝込んでだいぶ経ってからだから多分、死ぬ1ヶ月ほど前か。

 部屋に呼ばれた。

 母は父に支えられて起きていた。

 2人の弟と妹は呼ばれていなかった。なぜ俺だけ?


「タフ、あなたに渡したいものがあるの」

 痩せて細くなった手で俺にカバンを渡す。これは母が出かける時にいつも持っていた?

 怪訝な顔で見上げれば

「もっと近くに…」

 そばによるとその濡れたような目で俺を見て寂しそうに笑った。


 そっと母の手が俺に触れるとくらり眩暈がした。父が支えてくれる。

「良かった…これで安心したわ」

 何が起きたのか分からなかった。

(タフ、聞こえる?)

 えっ、これは何だ。母さんの口は動いていない。

(タフ、応えて…)

(母さん?)

(そう、やっぱり出来たわね!)

(これは?)

(心音ってスキルよ。一般的には念話と言うわ)

(念話…?)

(そう、あなたは私に似てるから…使えると思ったの)


 確かに、俺のジョブやスキルは母さんに似たみたいだ。

(自分の手を見てみなさい)

 言われた通りに自分の手を見る。すると


 グスタフ 15才

 エルフの末裔 ***人の息子

 ジョブ **  

 スキル 天候感知 気配察知 植物魔法 鑑定


 と出た。

 えっ?これは鑑定…何故今?それに、一部は読めない。なんだ、これ。


(鑑定のスキルよ。まだスキルの熟練度が低いから、全ては見えないわ)


 何の気なしに母さんを見る。


 アンナ 32才

 ***人 

 ジョブ **

 スキル *** *** 鑑定


 やっぱりほとんど読めない。

(くすっグスタフ、カバンを見て?)


 空間拡張カバン

 容量 ***

 時間停止機能付き


 はいっ?容量は見えないけど、時間停止?そんなの神級遺物じゃ無いか。

 唖然としていると

(だからよ、あなたの託すの。ねぇ、私と同じ故郷の人を見かけたら、助けてあげて)

 故郷?

 そういえば母さんは故郷の話をあまりした事が無い。

 いつも寂しそうに曖昧に笑うだけだ。


(母さんの故郷って?)

(自然が豊かで清潔で安全な国よ…)

 遠くを見るその目は懐かしさと同じくらいの寂しさを湛えていた。


 でも同郷って?

 母はやっぱり笑うだけだった。

「疲れたわ、少し寝るわね」


 その時の話はそれで終わった。なぜ突然、鑑定のスキルが使えるようになったのか、とか同郷とはどこなのか、とか謎ばかりだ。

 その後も母は弱り続け、遂に自発呼吸が出来なくなって死んだ。

 珍しく霧のような雨が降ったその朝に。

 優しく笑みを浮かべたその顔はやつれていたけど、幸せそうで。

 でもやっぱりその若すぎる死は父を打ちのめした。


 その頃、祖父は他界し、祖母はエルフの集落に戻っていた。父は母と暮らした家に居るのが辛いと、弟と妹を連れて祖母のいる森に向かった。

 俺は成人していたから、1人で町に向かい冒険者となった。


 しばらくして久しぶりに森の家に帰ると、荒らされていた。部屋の中はぐちゃぐちゃになっていた。

 そんなにたくさんの物は置いていなかったが、何故か母の部屋だけが荒らされていたのだ。


 俺は緊張しながらその部屋を見る。

 見回しているとふと何か光った。あれは棚の奥、か。ほんのりと見える光を頼りに何かを探す。

 あった、これは…厳重に隠蔽された日記だった。


(アンナの日記 鑑定のある人にしか分からない場所に隠蔽されていた)


 めくる。文字が書いてあるのは分かるが、読めない。小さな文字でびっしりと何かが書いてある。

 そして、後の方はその文字が乱れていた。

 最後のページには


 ―タフへ…

 もし、貴方がこの日記を見つけたなら

 私の同郷の人を探して、そして助けてあげて

 きっと辛い思いをしているはず


 強力なジョブと鑑定、容量の見えないカバンに時間停止、それがヒント

 力になってあげて…


 追われている、かも

 私のように…


 グスタフ…どうか私のようにならない、で…同郷の人を…

 この病気は、克服出来る、この日記を…どうか―



 そこで文字が途絶えていた。

 最後までこれを書いていた?

 何故か心臓が煩い。故郷ってどこだ?

 鑑定は相当に有用なスキルだ。人には言わない程度には。

 そして空間拡張カバンの時間停止なんて()()()()()

 町に出てその事を知った。


 母さんの故郷はどこ?

 病気って?克服する方法は…?

 そして何故母さんは追われていたの?


 俺には分からないことばかりだ。しかし、ここが荒らされていた。俺は周りの気配を辿る。

 人、だな。10人ほど。急いで植物魔法を使いながら木々に紛れて家を離れる。

 カバンに日記をしまい、家ごと植物魔法で覆って。これで容易には近づかない筈だ。


 その後は故郷の帝国を出て、ハイランダー王国に来た。

 それなりに成功し、母さんの同郷の人間を探す。母さんはハイランダー国から帝国に来たと言っていたから。きっとそれがヒントだ。

 黒目黒髪。

 探せた人たちは、目を逸らして何も教えてくれなかった。その神秘的な黒目を伏せて。


 言わないのでは無く、言えない?

 すでに死んでいる人もいて、その人は母さんと同じ死に方だった。


 何が…?


 そして、結局は確信に辿り着けず年月が過ぎた。

 俺は父と母譲りの能力で、いつの間にかSランクの冒険者になっていた。

 エルフの血筋と男らしさを兼ね備えた父とは違い、凛々しさと儚さと母の危うさを引き継いだ容姿はどうにも目立つらしく。

 要らない災いを引き寄せてしまい、多分、母を探していた追手が迫ることもあったが全て撃退した。


 人との付き合いに辟易しながらも、母の願いを忘れることもなく。

 進まない情報収集に焦り始めていた時。

 偶然出会った。

 心音が使える冒険者。そして多分、強力なジョブに時間停止の空間拡張カバンを持っている彼らに。

 その中で料理をつくる子、シエルの料理は母さんの料理に似ていた。


 そんな折、追手が来た。巻き込みたくは無かったが、奴らはエルフの血に作用する禁制の薬を使って来た。

 シエルに自分の体を預ける。

 ごめん、頼んだよ…。


 シエルは全身全霊で俺を助けてくれた。

 その小さくて幼女みたいな体は、温かくて。年頃の女の子と裸で密着してるのに…全く感じなかった。

 ただただ、幸せで。家族みたいだと思った。



 俺に娘がいたら、こんな感じだろうか?

 目の前にある俺と同じ色の髪の毛を撫でる。


 きっと母さんが言っていた同郷は君たちだね?

 大丈夫、僕はきっと守り切ってみせるよ、母さん。

 だからどうか見守っていて。


 風になびく銀髪を見て、そう心に誓った。




右がグスタフ、シエルと謎の誰か…

挿絵(By みてみん)

生成AIで作成したら謎の人物が!



タフ?

ん、何だ?期待を込めてシエルを見る

ウザい!

ガクッ…


下を向いてウジウジしてたらシエルの小さな手が俺の手を掴んだ

しょぼくれたおじさんは可愛く無いだって

でも俺はその手が、言葉とは違って優しく俺の手を撫でるのを心地良く感じていた


レイキ なぁ、シエルってさ…タフには当たりがキツくないか?

タツキ あーあれはな、気を許してるな!

サナエ うん、キツく言っても受け止めてくれるって分かってるよね

タツキ サナエには甘々だけどな

サナエ えへっ


そんな会話がされている事をシエルは知らない



*読んでくださる皆さんにお願いです*


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