閑話 サナエの独り言
連載再開…の前に閑話を2話
明日の後書きににグスタフのイラストいれます
私の名前は相川早苗。
何処にでもいるごく普通の社会人。ブラックでも無いけどホワイトでもない、そんな会社に勤めている。
仕事は事務作業。
若い子が入る度に歳を感じるお年頃の27才。すっごい年寄りじゃ無いけど、若くも無い。
周りは30才を前に第2次結婚ラッシュだ。本来なら私も乗る筈だったその波に、私は溺れて乗れなかった。
いや、溺れたと言うか、溺らされたというか。結婚を約束していた相手に裏切られた。
同じ会社の先輩は、私の3つ下の後輩とよろしくした挙句、妊娠させた。
そしてあっさり私を捨てた。
彼は私よりボリュームのある体をした後輩がお気に入りだったようだ。歳を取ればやがて張りがなくなって垂れるだけなのに。
私は彼の何を見ていたんだろう。男の人を見る目の無さに打ちひしがれた。
同期の女子会は荒れに荒れた。
「そんなクソポンコツなんか、別れて正解!結婚してから他に子種巻いてましたーとかさ、ありえんて」
「でもさーそろそろお肌も乾燥しやすくなるし、若い子の張りには敵わないよねー、まあさ、クソなのは違いないけどー」
「いや、なんかさ。アイツって女性社員の胸ばっかみてたじゃん。早苗には言わなかったけど、絶対に浮気するよ!良かったじゃない」
ボロクソだった。ってかそんなにみんな嫌ってたの?
「知らなかった…」
地味にショックだ。
「あー早苗ってさ、可愛いけど奥手って言うかーちょっと強引なのに弱いっていうかー」
「そうそう、だからね。まぁ早苗にはあういうタイプが案外合ってるのかなって」
「うんうん、評判はあんまだったけどさ。早苗があんまり幸せそうで…」
さらにショックだ。評判悪かったんだ。
なんだかその日はいつに無くお酒が進んで…帰り道に幼馴染に電話した。
「あっ、ちーこ?元気ー?久しぶりー」
「早苗、酔ってる?」
「あははっ全然ー酔ってないですよー!」
「…今どこ?」
「んーと家の近くれしゅ」
「具体的に」
「あーいつもの公園の前」
「迎えに行くから動かないで!」
「はいれしゅ!」
私はその場で敬礼した。
公園の入り口の柵に腰掛けてボーっと月を見上げる。空を見上げのはいつぶりかな?
「…えー、早苗ー」
「ちーこー」
おーいと手を振る。息を切らせて走るちーこ。目の前で止まると
「早苗!」
肩を掴まれる。だから敬礼した。
「お勤めご苦労様でし!」
「あんた、相当飲んだでしょ…」
でへへっちーこは何も言わなくても察してくれる。その小柄な体に抱き付く。
「ちーこ…私ね、振られたー。結婚の予定無くなったよ…」
ちーこは何も言わない。ただ、静かに背中を撫でてくれる。涙が溢れてきた。背中の温かな手に、その華奢な体に、いつものちーこに安心して…声をあげて泣いた。
いまだにぐすぐすしている私の手を引いてちーこは
「取り敢えず、家に来な。そんなんじゃ帰せないよ」
頷いて歩く。
小学生の頃にいじめられて公園の滑り台の下で泣いてた私を見たちーこは、やっぱり今日みたいに静かに抱きしめてくれた。背中をさする小さな手の温もりを今でも覚えている。
私、あの時から何にも変わってないんだな。
悲しさと呆れと…ほんの少しの喜びと。変わらないちーこはあの時より大きくなったけど、やっぱり私の親友で。
その手の温もりはあの頃と変わらなかった。
そして、酔っ払って寝て起きた朝、ちーこは暖かい紅茶を淹れて話を聞いてくれた。
「はぁ、本当にアイツはクソだったなぁ。ま、結婚前で良かったと思うしかない」
だよね、私もそう思えるようになったかな。
「そうだね…。もうしばらくそういうのは、無理かな」
「自分のペースでいいんじゃない?誰かと競争してるわけでもないんだから」
そうよね、私は一体何を焦ってたんだろう。
そこで気がついた。そうか、私は結婚出来なかったことが悲しかったんだ。
彼が離れたことじゃ無く。だとしたら、私はそこまで彼の事が好きじゃ無かったのかも。
あれ?なら私は結婚をしたかっただけなのか。泣いたのは周りに乗り遅れたのが恥ずかしかったから。そう、悲しさより恥ずかしさが勝ったんだ。
なんだ、私は傷付いてたわけじゃないないのか。だって彼の声とか聞いてももうどうでもいいし、なんなら貰ったものはさっそくフリマアプリで売ったし。
そう考えたら気が楽になった。
やっぱりちーこと話をしていると、余裕が出来る。受け止めてくれるって分かってるから。
ちなみにちーこは本名じゃない。村本茶子。
でも小学生の頃から
「茶色の子、茶子だー」
「お茶の子、茶子だー」
とか囃し立てる男子がいて、凄く嫌がってた。
「ほんと、なんでこんな名前つけたのかな?」
「普通に可愛いじゃない。ちゃこって響き、私は好きよ!」
「早苗は可愛い名前だから…」
目に涙を溜めて言う茶子。小学生って微妙なお年頃だからね。
そんな事があり、ちゃこと呼ばれるのを嫌ったので、ちーことなった。そんな昔のことをふと、思い出した。
会っても私の話ばかりで、そう言えばちーこの彼氏の話とか聞いた事がない。
よし、今度はじっくりちーこの話を聞くぞ。そう思ったからメッセージアプリを送った。
―今週の金曜日、飲み行こ!ちーこの話プリーズ―
ピコン
―無理しなくていいよ―
―無理してない!私がちーこと話したいの!!―
ピコン
―分かった。店は任す―
―りょ!―
ピコン
―お店決まったら教えて―
もう決めてるのだ。ふふっ2度つけ禁止の串焼き屋だ。カロリーなんて気にしないもん。
―お店は串焼き屋だよー!カロリー爆弾だ―
ピコン
―うい―
―フランス人か!―
ピコン
―ノン―
否定来た!…ふふっ楽しい。
そして週末の金曜日。
串焼き屋の前で待ち合わせ。私は仕事帰りだからカットソーにパンツ、コート、ちーこはジャケットにデニムだ。
仕事はIT関連だから、普段は家で仕事をしている。きっと家から来たんだろう。
「ちーこ!」
「早苗乙ー」
「乙ー!お腹空いたよ、入ろう」
ビールで乾杯して串焼きを頼む。野菜や肉、魚。おつまみにキャベツなんかも頼む。
「楽しいー!」
「うん」
ちーこも私もざるだ。お酒が進む。濃い味とビールって合うよね。
でも食べて飲むのに夢中であんまり話が出来なかった。だから2次会はちーこの家で。
私とちーこの家は歩いて5分ほど。お互いの両親も良く知ってるから、気軽に行ける。
飲み物とおつまみを買い込んでちーこの部屋に。女の子らしくない機能的な部屋で、なのに凄く居心地がいい。
そこでさっそくチューハイの缶を開けて乾杯。
「ちーこはさ、彼氏とかいないの?」
「今は、ね」
「えっ、前はいたの?どんな人?」
私ってば全然知らない。
「んー可愛い人?」
以外、かも。すっきりとした奥二重の目のちーこはともすれば冷たく見えるらしい。性格もさっぱりしてるので、男前なタイプだ。
姉御肌なのかな?
「以外、かも」
「そう?誰かに甘えるイメージないでしょ?」
確かに。
「その、どうして別れたの?」
「色々、ね」
そっかぁ、知らなかった。
「私ばっかりだね。話してくれたら良かったのに」
曖昧に笑うばかりだ。
その後は恋バナを聞かず(話してくれず)、お風呂に入る事にした。
細くて胸もほどほどな体は羨ましい。私は背も164cmと少し高めで、胸がね…。
「細くていいなぁ」
自分の胸を見て言えば
「無いものねだりだよ。私は大きかったら世界が違うって思うし」
「えー?肩こるし目線は気になるし、汗かくし太って見えるし…いいことある?」
なんて話をした。
そして、別の日にちーこから告白される。私は混乱したけど、嫌悪感はなくて。
求められるままに体を許した。ずっと見ててくれた人がいる、それが私の自信になって。
付き合うとかそんな感じじゃなかったけど、そういうのも悪く無いって思った。思えた。
珍しくあちらの世界の夢を見た。異世界に来てからは、なんだかんだと盛り沢山で、あまりあちらのことを気にする余裕が無かったから。
その原因はやっぱりシエルかな。幸子お母さんって呼んだら怒られるからね!
自由で天真爛漫で破天荒。なのに人一倍涙脆くて温かい。私はそんなシエルがいてくれて良かった。
それにタツキもレイキも凄くいい人だ。胸元に視線を固定しないよう努力してるのも分かるし。
タツキはお父さんみたいな包容力と先頭に立って引っ張る力がある。
シエルはなんだかんだとムードメーカー。
レイキは一歩引いて俯瞰してる感じ。さり気なくフォローしてくれる。
私は、私は何を出来てるかな…?
シエルはきっとそこにいて笑ってくれてるだけでいいって言ってくれそう。
あ、ゴブリンは任せた、とかも!
考えたら笑ってしまった。
あぁ、懐かしいなぁ、ちーこは元気かな。
私は元気だよ!
まさかの異世界転移で若返って。もう一度やり直そうって思えた。
また会えたら乾杯しよう。それまでお互いに元気で過ごそうね。
レイキーそう言えばさ、まりって誰?
えっ?なんで知ってるんだ…シエル
寝言でね?
あーもふもふフィギュア第1号のゴールデンレトリーバーの名前(照
…
いや、無言はやめてくれ!
タツキとサナエはそっと目を逸らしたとか…
***
サナエー、おパンツ一緒に洗う?
シエル、言い方!
パンティが良かった?
もう、違うよー
年齢差は如何ともし難い…
普通にパンツで良くね?と思ったタツキだった
***
タツキーあの上の方にあるヤツ取ってー
お前、風魔法で浮かせて取れるだろ!
扉は開けられないし…立ってるものは使わなきゃ
俺は椅子に座ってるだろ!
…てへっ
52才のてへっはやめてほしいと思ったタツキだった
その2人を微笑ましく見ているレイキとサナエがいた
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