59.新しいお土産
ちょっと更新サボってました…すみません
レイノルド、どもりすぎだよ?
タフに貝の入れ物に入ったハンドクリームを見せる。
「シエルが僕に試作品としてくれたんだ」
「どれどれ…なんだこれ?」
「手荒れを治すクリームだよ」
「へーいいな。入れ物も可愛いし。俺にも…」
「だ、ダメ…これは僕の」
「えー」
「タフも欲しいの?」
「おう!」
みんなに配るかね?新しい販路の開拓だよ。ふふっ宣伝は大事。タフや他の人に渡す分も作る。
「はい、これね…使い方は…」
タフの大きくて硬い手に塗り塗りする。最後に手でしっかりと包んで出来上がり!どう?
「おっ…いいな。しっとりする…お前の手は小さくて柔らかいな」
にこにこしながら私の手をにぎにぎするタフ。
横でレイノルドが
「な、な、な…」
どうしたんだろ?
そのまま私の顔を覗き込み、髪の毛を耳にかける。頬に手を当てると
「それ、可愛いな。貝殻か?左右で違うデザインなんて初めて見た。似合うぞ!」
頬を撫でながら言う。
「ふふっ、ねぇ…売れるかな?」
「売れるだろう!ここの町で売ってるのか?」
「まだ売ってないよ」
「新作か?それでレイノルドなんだな。どこで売るんだ?値段は?」
「えっと、売るのはリーブラン商会の店で…値段はまだ決めてなくて」
「貝殻に入れて売ったらどうかな?贈り物用に…ねぇ、タフならいくらだと買う?」
「ん?町娘とか飲み屋のオネェさんとかに渡すなら…3000ガロンまでなら出すかな。可愛い貝殻付きで、だぞ」
「参考にするよ!ねぇシエル、これも少なくてもいいから作れるだけ卸して欲しい。売値の6割の買取でどうかな?」
「買取?」
「そうだよ、買取」
それは私にかなり有利だ。売れ残りがないのだから。レイノルドにメリットが無いような。
「レイノルドにメリットが無いよ?」
「そんな事はない。独占販売だよ。謎の美女作…新しい金具と左右非対称のデザインは登録が必要だ。しかも貝殻が使われてる。サウナリスの特産品だ。すぐにでもミドルナリスに連絡をしないと!」
「ぐはっ、謎の美女…謎の幼女の間違いじゃ無いのか?」
取り敢えず、タフの脛を蹴っておいた。失礼な。少女でしょ…幼女では無い。
「いや、その胸でな…」
スルンと撫でられた。また脛を蹴っておいた。硬くて効いてない、残念。
レイノルドは正面で固まってる。
「な、な、な、胸を撫でて…む、胸…」
「平だからな、揉んでないぞ?あ、取り敢えず撫でとくか、将来に期待して」
そのまま胸をスルンスルンとする。笑い過ぎ。
「ぐははっ、ひぃひぃ…引っ掛かりが…皆無…」
お腹をくすぐっておいた。あ、これは効くな。そのままお腹をくすぐっているとやり返された。
2人でくすぐり合っているとレイノルドが
「あ、あの…2人はその…付き合って?」
「はっ?」
「へっ?」
タフと顔を見合わせてから
「「ないない!」」
「娘?」「残念な父?」
「「はぁ?!」」
レイノルドが
「あの、それなら…」
「「「ただ今ー」」」
タツキたちが帰って来た。あれ?何か言いかけた?
「レイノルド、何か言いかけた?」
「あ、いや大丈夫。お帰り…」
ライルが髪の毛を耳に掛けた私を見て、近寄ると
「きれいだ…」
「でしょ?さっき作ったの」
ふふっ、釘付けね!このピアスに。
「これは仕入れを…?」
「うん、レイノルドに作って欲しいって。あ、ライル。手を出して?」
不思議そうにしながら手を出す。その手に貝の入れ物に入ったハンドクリームを塗る。万遍なく、指先まで。最後に手で包んで出来上がり。
「どう?新作になりそう?」
「これは…なんてなめらかな…」
私の手じゃなくてね?自分の手を見て。
「貝の入れ物にいれるんだ?これは贈り物にいい。このクリームも素晴らしい」
私の手をがっしりと握ってライルが言う。
「ぜひ納品を!」
「貝殻、拾わないと…それにいつまでここにいるの?」
レイノルドとライルは頷き合って
「シエルが納品出来るまで、ここに滞在するよ」
「んー貝殻次第かな?後は数だね」
「シエル、君たちはこの後どこに行く?」
「まずはマイヤーだな。その後はヤールカに行く。多分、さらに東に移動して帝国を目指す予定だ」
この大陸は6つの国と1つの共和国がある。ここハイランダーの西にミレナリス、東にヤールカ、北にイルクーツカ、ヤールカの東に帝国、そのさらに南東に共和国が、北東に聖教国がある。
ハイランダー、ミレナリス、ヤールカの北に広がる広大な土地がイルクーツカで北の海に面している。国土は広いけど寒さの厳しい土地で、国民は少ない。
帝国は南と北で海に面する大きな国で、この大陸で1番栄えている。帝国の北東に位置する聖教国はこの大陸の聖教の総本山がある神聖国だ。
神のおわす国で、聖人が唯一産まれる国でもある。
帝国の南東の共和国は海に浮かぶ7つの島を含む共和国だ。それぞれが独立した自治権を持ち、内政不干渉、侵略不可侵などの協定を結び、それぞれの代表が共和国を治めている。
とは王に貰った本の知識だ。
ヤールカに住むのは流石に性格的に奔放過ぎて無理だと思ったので、この国から離れた大国である帝国を目指すことにした。ハイランダー国から遠く離れたかったのが主な理由なのは間違いない。
「帝国…また遠い所を」
そう、サウナリスはハイランダー国の西南に位置する。ここから東端のマイヤーまでは海沿いを東に移動してからまた北に進んで行く。凡そ2週間。位置的にはノースナリスの東側だが、山脈で遮られて直接行けない。マイヤーはなかなか不便な場所にあるのだ。
そこからヤールカは3日、ヤールカを東に横断するのに湖を迂回して1ヶ月ほど、そしてようやく帝国に着くのだ。だいたい2ヶ月くらいだろうか。
「実は…まだ少し先の話で、でも帝国に店を構える準備を進めていて。旅の先々で連絡を取りたい。ぜひ、商業ギルドに立ち寄って欲しい。そうすれば連絡が取れる」
タツキは難しい顔で考え込んだ。そう、私たちの動向はなるべく知られたくない。もっとも帝国に行くと伝えた時点である程度は足取りが追えてしまうかもしれない。ただ、王様たちが名前も知らない私たちを簡単に探せるのかは分からないけど。
彼らは私たちの見た目の特徴だけしか知らない。
(どう思う?)
(もう帝国に行くって伝えたし、問題ないと思う)
(彼らに何も無いといいけど)
(大丈夫だとは思うけどね?)
タツキは頷いて
「分かった。連絡を入れよう」
「あぁ、頼む!」
レイノルドはホッとしたように笑った。
「なぁ、この先も護衛を雇うのか?」
どちらにしろ、ここでは雇えない。それなりに戦力はあるけど、知らない事が多すぎるからどこかで雇いたいな。特にヤールカに入ったり帝国に入る前には。
「どちらにせよ、マイヤーまでは冒険者ギルドも無いからな…そこからはまた誰か雇うさ」
「ソロの冒険者でそこそこ強くて、帝国出身のヤツがいるんだ。食事を与えれば快く引き受けてくれるぞ?帝国まで。どうだ?」
レイキがチラッとタフを見る。
「Sランクは国を跨いだ移動を禁止されてる筈だろう?」
「Sランクならな!俺はAランクだ」
俺って…自分で暴露したよ…この人は。タツキが私を見る。何?
(いいのか?)
(私は別に…?案内人は必要だし…まぁみんながお姉さんと仲良くしててもタフはそばにいてくれるし?)
「ん、んん…その冒険者にお願いしたいが、金がな。折り合いが付くのか…」
「ソロの場合はそこそこ安いよ?それに、ここからの移動は馬車を使う」
「乗り合い馬車が出てるのか?」
「行商の馬車に乗せてもらうんだよ!護衛を兼ねてな」
「そんな方法が?」
「荷馬車だからな。護衛代わりならむしろ喜ばれる。海沿いは魔獣が海からも来るからな」
海からも?食べれるの…?
「ぶはっ…」
レイキは黙ってて!
「ただ、馬は1頭いてもいいがな。多分、途中で手に入る」
ニヤリと笑うタフ。
「で、いくら?」
「シーちゃんは…情緒が無いぞ?」
「だって、タフの事でしょ?」
「あ、まぁな…」
結局、50万ガロンで引き受けてくれた。いやいや、安いでしょ?ワイバーンの肉貰ってるんだから、お釣りが来るよ!タフになんらメリットもないよ?有り難いけどね。
そして、話はまとまったので夕食に向かった。そこはテラス席でテーブルが並んでいる。リリや姫たちも近くに低いテーブルが用意されていた。
出て来たのはロブスター!巨大なエビだ。うわぁ美味しそう!ソースはシンプルなオリーブオイルと塩だったけど、ほんのりついた塩味だけでも美味しい。
他にもハマグリやイカ、タコなどの新鮮な魚介が出て来て堪能したよ。
エビグラタン食べたいなぁ。カニクリームコロッケも食べたいなぁ。カニ売ってないかなぁ?海に潜れないかしら?うーん創作意欲が!
食後にアクセサリーやハンドクリームについて話をして、3日後を目安に30個、出来たら50個欲しいと言われた。貝拾い頑張るぞ?って思ってコテージに帰った。
「なぁ、貝殻…コピーするか?」
そうだった、ここにチートがいた。でもなぁ、全く同じだと怪しまれそう。
「あんまり同じ貝殻の数が多いとバレそうな?」
「完コピーしなければいいだろ?」
はい?完コピーなし…?え、似た感じでコピー出来るの?
「レイキって、天才?」
「まぁな!」
「大好きー!」
飛びついたらヨシヨシしてくれた。わーレイキ凄い!
思わずチュッチュッしたよ。うふふっ。
朝、目が覚めた。胸元にあーちゃんとラビ。背中には…ん、誰?私の腰に回っている手を見る。あれ、レイキ?
振り向くとレイキの顔が近くにあった。何で?記憶を探る。夕食を食べて、コテージに帰って来て貝殻の話をして…レイキが似た感じに作れると言って?
そこから記憶がない。抱きついたような…?あ、もしかして。得意の抱きついて寝落ちパターン?
また私が離さなかったとかとか?いやー申し訳ない。
少しボサボサの髪の毛を撫でて、お互いの体を洗浄できれいにする。
なんか、食べての寝落ちとか子供みたい。
「う、ん…ま、り…」
まり?誰の名前だろ。
そう言えばあまり詳しくお互いの素性とか知らないんだなぁ。
レイキは若いのに良く気がつく子だ。お姉さんがいたのは聞いたし、結婚してなかったとも聞いた。どういう人生を送って来たんだろう。
寝落ちした私を置いていけないくらい優しい人が、心に思うのは誰なんだろうね。
君は戻りたい…?
じっと見てたら、まつ毛が震えて瞬きをした。
「ん、シエ、ル…起きて…すぅ」
起きないんかい!こっちは完全に目が覚めてんだけど…サナエと違ってホールドが完璧で抜け出せない。
はぁ…起きるのを待つか。
それからおよそ1時間…あーちゃんの匂いを嗅いで、ラビをもふって過ごして、ようやくレイキが目を覚ました。
「ん、シエル…おはよう。お前って抱き枕だな。小さくてあったかくてムラムラしない…抱き枕」
いちいち失礼だよ!ひとまず脛を蹴っておいた。悶絶してたよ?シーラナイ。
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