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6.いよいよ作戦開始

 そんな話をしていたら、ご飯かな?人が来る気配。レイキが壁を塞いだので、ソファに座って待つ。

 扉がノックされるとガチャガチャと音がする。外鍵を掛けられてたようだ。

 返事も聞かずに扉が開いたので、思いっきり叫んだ。

「キャー侵入者よー誰かぁーー」

「ち、違う!」

「返事もしてないのに乙女の部屋の扉を開けるなんて、しかも男性が!酷いわぁ、うわぁぁぁん…」

 隣の部屋からタツキが出てくる。

 バァン

「どうした?」

「返事もしてないのに…ぐすっのに…扉が…ぐすっ、着替えの途中で…」

 咄嗟に少しだけ肩を出した私。タツキは男性を睨むと私の肩を直してそっと抱きしめた。


「いや、その…そんなつもり」

「見たのか?おい!責任取るんだよな?」

「いや、その…申し訳ありませんでした」

「ぐすっ…怖かった」

 これは演技じゃない、マジで怖かったよ。震えながらタツキに抱きつく。

「ん、王様がお会いになる…ので急いでいて」

 言い訳にならない言い訳をしてタツキの目線から目を逸らした。

「そちらに非があると認めたのならいい」


 それ以上はタツキも深追いしなかった。

「ん、おほん…王様がお会いになる」

 それで朝食も出さずに話をして放逐予定かね?全く腹芸覚えて欲しいわ。

 ぐふぅ、とレイキが噴き出していた。


 その男性に付いていく。行先はそれなりに歩いた先の会議室みたいな部屋。

 扉を開けた奥側に偉そうに王様が腰掛けていた。

 不機嫌そうだ、勝手に異世界から呼び出しておいてその態度はどうだろうか。

 私はムッとする気持ちを抑えておどおどした顔をする。


「わざわざ朝早くから時間を取ってやった」

「あちらの世界に帰して」

「ぐっ、無理だ」

「酷い…勝手に呼んでおいてそんなの、あちらに大切な家族がいるの!お願いだから帰して」

 涙ながらに訴えるわたし。

 サナエも

「わ、私も…結婚間近で。大切な人があちらにいるんです、帰して…お願いします」

「俺もたくさんお土産を買って帰るって子供たちに約束して…なのにカバンは検査すると渡したきり返ってこないし。子供たちにお土産を渡したいんだ。荷物を返してあちらの世界へ送ってくれ」

 援護射撃あざっす、タツキ。

「俺も仕事が佳境で周りに迷惑がかかる。初めての一大プロジェクトなんだ!あの仕事を終わらせないと。荷物もパソコンが入っていたんだ。荷物も返ってこない。体も帰れないなんて…早く帰してくれ!」

 レイキも迫真の演技だ。

 いや、演技ではないのかもしれない。帰れないと思いながらももしかして、と思っているのだろう。


 事実も織り交ぜながら話をしているから迫力が凄い。

 さすがに王様も隣にいた宰相さんも青い顔をしている。

 私はすかさず

「こっちでは要らない子だけど、あちらではそれなりに仕事も信頼して任されてて、必要としてくれる取引先や家族が待ってるんです」

 ダメ押しだ。

「うぐぅ」

「変な声出してないで早く!まずは荷物返して。で、体もあちらに帰して!」


 王様はまず荷物を返すことを考えたようだ。執事風の男性を見る。その男性は青ざめている。

「荷物を返してやれ」

「そもそも検査するだけっていうのにまだ返ってこないなんて、私たちの持ち物なのに…」

 しょんぼりする。

「まさかと思うが、横取りしてないよな?早く返せ!」

「何をしている?早く返してやれ!」

 執事風の男性ははもう汗がだらだらしている。

「そ、それが…夜中に何者かに盗まれたようで…」


 私は驚いた、言うに事欠いて盗まれただ?

「ここはそんなに警備が手薄で物が簡単に盗まれるの?どこに保管して誰が管理してたの?」

「…」

 青いを通り越して真っ白だ。

「何をしている!盗まれたなどと」

 王様はどっちの味方なんだ?こっちか?

「ここに出入りできるのなら盗んだのもここに出入りしている人間だ、身体検査したら分かるだろ」

 タツキも容赦なく追い詰める。

「いやしかしそれは」

「返す気ないんだ?」

 レイキの続く。

「いや、そんなことは」

「なら返して?」


「おい、どうなっている!」

 王様がキれた。私は自分の荷物の場所を確認する。あるねーあそこに。

「あ、見つけた!魔力で目印付けてたんだ」

 意気揚々と会議室を出て歩く。

「ま、待って…」

「どこにあるか知ってるの?」

「ぐっ…」

「知ってるのに盗まれたって言うんだ?なんかだいぶ奥の方だね?あれって王様たちの居住区?まさかね」

 執事風の男性は倒れた。即近寄って、頬を強めに叩く。都合よく倒れてんじゃないわ!

 すぐに目を覚ました。

「気付けに叩いておいたよ、荷物は?」

「と、取ってきます」

「取りに行くよ?また盗まれたら困るし」

「どうかどうか、ご勘弁を」

「何を…?」


「ええい、何をごちゃごちゃと。早く持ってまいれ!」

「はいぃ!」

 王様に怒鳴られて、執事風の男性は慌てて部屋を飛び出した。さて、無事かな?スーツケース。使う機会は無いかも知れないけど、やっぱり思い出の品だから、手放したく無い。

 少し待っていたらバタバタと数人の足跡がして、カバンやスーツケースを持って来た。

 一応、あったみたいだね。

「良かった、色々と(主にゴミ)入れてたから…」

 早速スーツケースを開ける。

 空っぽだった。残念。コンビニおにぎりのフィルムとかあったからさ。もしかして復活しないかと思ってたんだ。


 しょんぼりだよ。下を向いて唇を噛んでいると

「何も入ってないじゃ無いか!」

 王様、ナイスアシスト!ってかほんとどっちの味方よ?

 わたしは潤んだ目で頷く。

「入ってたものが…無くなってる(主にゴミ)」

「ぐぅ…それは、おい、中身はどうした?」

「そ、それがその…」

 ついにサナエと私が泣き出した。カオスだ。タツキとレイキも憮然としている。

「思い出が…」

 ポツリと呟く。私は顔を上げて

「残念だけど、これで帰れるから大丈夫」


 ピクってと王様と宰相さんが動いた。

「ん、んん…たいへん遺憾ではあるが、帰せないのだ」

「えっ…」

 最大限に目を開く。そして目が乾くので涙を流した。

「そんな…」

 やっぱりかぁ。アーちゃん…ごめんね、ママ帰れないみたい。そう思ったら本気の涙が溢れてきた。

「アーちゃん、アーちゃん…ぐすっ、帰れないって。ごめんね…アーちゃん」

 ガチ泣きしてしまった。これは本気で悲しい。そうか、もう会えないのか。

 ダメだ、これはマズイ。涙が止まらない。




 ぐずぐずと泣いていたら、いつのまにか外に出ていた。あれ、ここはどこ?記憶が飛んでる?

 顔を上げると心配そうなサナエにタツキ、レイキの顔が見えた。あれ?

「えっ?あれ…ここは?」

 周りを見回す。

「おい、お前…やっぱりガチ泣きだったのか…」

「シエル」

 呆れつつも心配そうなタツキに手を握ってくれていたサナエ。レイキはオロオロして目が泳いでいる。

「アーちゃんて誰だ?」

 レイキ、今聞くことそれ?



「どうなったの?」

「お前のガチ泣きで流石にみんながな…最後は王様も頭を下げてお金と着替えとか必要な装備をくれた。後はこの国とか周辺の国の情報が乗った本や習慣とか通貨や食べ物についての本もくれた。教えてくれって言ったら、早く追い出したかったようでな。本をくれたよ」

「そう、お金は?」

「価値が分からないが、聞いた感じでは多分50万円くらいだな」

「高いのか安いのか」

「一家4人が暮らすのに必要なお金の5倍って言ってたよ」

「こちらの物を何も持ってない私たちには手厚いとは言えないかも」

「だな、でも着替えとか食材とか、毛布や簡単な装備、剣や短剣も貰った」

「そう、なら仕方ないんだね」


「まずは今日の宿と、この国を出る事だな」

「本見せて?」

 タツキが渡してくれる。何となく分かるかも。本に手を当てて知りたいと念じる。様々な知識が頭に入って行く。なるほどね…やっぱりチートだな、魔力通信。

「うん、だいたい分かった。宿を決めよう」

「分かるのか?」

「宿が集まった所ならね」


「なぁ何で分かるんだ?」

 レイキが腕をつつく。

「私のジョブはネットみたいなもんだよって言ったでしょ?だから検索したの。よそ者に人気の宿って」

 ニヤリと笑うと一瞬ポカンとしてから笑い出した。

「あーなるほどな」

 なぜか頭をポンポンされた。やめい!その手をはらうと

「元気になったなら良かった。で、アーちゃんて?」

「ん?犬」

「は?」

「だから犬?」

 なぜかレイキが崩れ落ちた。どうしたんだ?



※読んでくださる皆さんにお願い※


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