53.陶芸の町で買い物
タフと笑い合ってその温もりにまったりとしていた。なんかね、お母さんみたい。変なの…。
「シーちゃんはほんと可愛いね…」
「そう?顔は見られちゃダメとは言われるけど」
「うん、見た目ももちろんね。可愛いけど中身?儚さとは無縁の潔さとか、子供体型なのとか」
「子供体型は関係ないでしょ?それならタフだってカッコいいのに色々と残念だよ?」
「あははっ酷いな、くすっ。みんな思ってても言わないのに、シーちゃんはハッキリ言うなぁ。ねぇ、またご飯が携帯食なのは嫌だから先に言っとくよ!サウナリスまで一緒だ。だからご飯作って欲しい」
頬をくすぐりながら言う。狡いなぁ。
「キス友だろ?」
なんだそりゃ。吹き出してしまった。
「分かった、もう…仕方ないな」
なんだろうね?タフって憎めないんだよな…イケメンだからかな?お得だねー顔がいいと。
後ろから私を抱きしめたまま、髪の毛を避けて首に顔を埋めて来た。くすぐったい…。肩を撫でて胸を撫でて、あれって感じで往復するのは酷くないか?
「無いね?」
取り敢えず脛に蹴りを入れておいたよ。
「揉んであげるよ、少しは成長するかも?あ、でも揉むほどないか」
今度は膝打ちしておいたよ。
そのまま少しゴロゴロしてから起きることにした。
ふぁぁ、伸びをしてあーちゃんとラビをもふる。そばでタフも一緒になってモフッてたよ。
着替えようかな、とタフを見ると服を脱いでいた。はい?乙女の部屋で何してんの?
あ…まずい。
「ちょ、待って…タフ早く服着て!」
焦ってその腕を掴んだ時に扉が開いた。タフはパン一だ。私は寝る時用のノースリーブの膝丈ワンピース。慌てて肩紐が片方外れている。
「シエル、起きて…えっ…」
フリーズしたサナエの後ろからタツキとレイキも部屋を覗き込む。
食器を扱うお店は名産品というだけあってたくさんあった。落ち着いたら色合いが多くてどれも目を引く。
私は隣でため息をつくタフに声をかけた。
「このお店!」
繋いでいた手を引っ張ってお店に入る。
薄いピンクのお皿が目に付いたから。お皿とお揃いでスープボウルとカップ、深皿もある。
1枚1500ガロンからだ。大皿だと3000ガロン。
安いね。私は薄いピンク、薄い緑、薄い青に薄い黄色をそれぞれ購入した。
お揃いのスプーンも買ったよ!後は茶器。カップとソーサーに紅茶を入れるポットと茶葉を入れるポット。こっちは薄いピンクと薄い緑。セットで6000ガロン。こちらの感覚では高いんだろうけど、クオリティを考えるとむしろ安い。
お店の人にめっちゃ感謝された。
タフは青と緑の混ざったお皿各種を購入してたよ?ちなみにタフも目深にフードを被ってる。
私はまた隣でため息をつくタフを見上げた。
「なぁ酷くないか?俺が子供に手を出す変態みたいに思われたんだぞ?」
ある意味、自業自得かと。乙女の部屋で着替えようとするからだ。あの時、パンツに手を掛けていたタフ。その腕を掴んだ私と私の肩を掴んだタフは一見すると見つめあって、コトが終わった後のようにも見える。
逆に、今まさにコトに及ぼうとしているようにも。
前者はサナエとレイキで、後者はタツキ。そのように見えたという事。
それからはカオスだった。サナエは悲鳴を上げてぽよんがぽよよよよーんだし、レイキは殺気を放って風の刃を飛ばすし、タツキは剣を抜くし。
なんとか騒動を収めてソファに並んで座ると、タツキがタフに
「本当に何も無かったんだな?」
と聞いた。そこでそうだ、と言えれば良かったんだけどね?ほら、一応はキスをした。何度もね?しかも身体も撫でたし?なんなら胸も揉んだ。揉んだのかは微妙だけど。一応ね。で、タフが口ごもった。私もそっと目を逸らす。
またしてもレイキが魔力をねるし、タツキは腰の剣を抜くし。サナエだけは冷静に
「待って…シエルの気持ちを聞きましょう」
私?えー、私なの?
タフを見上げる。涙目で訴えられた。
(シーちゃん、俺を変態にしないでくれ…)
「ん、んん…わ、私はあり、かな?キスも胸を揉まれるのも、嫌じゃ無かったし?」
タツキとレイキの鋭い目に晒される。思わずタフの手を握りしめた。
で、ナニかを誤解されたまま今に至る。何も無かった訳じゃないけど、ナニかあった訳じゃない。でも具体的に話をするのは恥ずかしすぎる。実際には暴露していたけど無自覚。
彼らは彼らでいつもと違う魔力やら匂いを纏っていて…どうやらお疲れのようだ。
だからゆっくり休んでね、と部屋に置いてタフと逃げ出したのだ。
で、買い物をしている。
「子供とは言え、乙女の部屋で全裸になろうとするのがダメでしょ?キスしたり胸を揉んだり」
「キスはしたけど親愛のだし、胸は揉むほど無かったよ?僕さ、シーちゃんと一緒にお風呂入れるよ?無反応で」
自信満々に言われた。いや、反応されても困るからいいんだけど。
「だからって服を目の前で脱ぐの?」
「気にならなかったから、つい…」
なんて会話をしながら買い物をして、ついでに市場で野菜や小麦粉、香辛料も買って宿に帰った。
なんとなく自分たちのパーティーの部屋には行きにくくて、タフの部屋で昼食。屋台でお魚の焼いたのが売ってたからたくさん買ったよ。
堅パンを薄く切って炙って、レタスとトマトと挟み込んで食べる。タフにも同じのを作ったあげて、お湯で溶かすスープを入れて食べた。
「美味しい!やっぱりシーちゃんは僕のものだ」
なんでそうなるかな?
「とにかく、誰かと結婚したら?」
「うーん、難しいんだよ。ほら、エルフの血が入ってるって言ったろ?だから少し長生きなんだ。看取るのもね、辛いし」
「ふーん、大変だね」
「シーちゃんは裏表がないから楽なんだ。可愛いのに女を感じないしさ」
「お互い様だね?」
特にすることもないのでまた、そのままソファでタフに寄りかかって少し寝た。
ん、この魔力は…レイキ?
(おい、そこにいるのか?)
(うん…)
(朝はその、悪かったよ。部屋に戻れ)
(…嫌だ)
(…シエル?)
(知らない魔力と匂いがたくさん…)
(!!!)
(しばらくこっちにいる)
レイキの魔力が遠ざかっていった。
なんとなくこうなる事を、タフは分かってたんだろうなぁ。
(シーちゃんは魔力に敏感だからね。ラビもだし、あーちゃんは匂いに敏感だ。居心地悪いかなと思ってね)
(やっぱり分かってんだ)
(まぁね、でさ、僕と一緒に寝たら魔力がつくし、それでおあいこって思ったんだけど…なかなかね?)
(タフはそれで良かったの?大変な事になるとは言ってたけど…)
(あぁ、まあね。魔力に変換出来るから)
そのまましばらくのんびりとしていた。タフも1人だと気楽だけど、たまに人恋しくなる。それで声をかけると、相手が頬を染めて襲ってくるらしい。
私は人恋しくなる時にうってつけなのだ。タフも女として見てないし、私も男として見てない。お互いに気楽だ。
そして、今夜も昨日懇意にした人とお店に行くらしい。夕食も一緒に取るとか。パーティーだからといつも一緒にいる必要は無いので、たまには子守から解放してあげないとね!
でもやっぱり少し寂しいのは内緒。全部分かってるよって顔をしてるタフがちょっと憎らしいけど。
タツキたちが出かける前に声だけ掛けておこう。
今日はレイノルド経由でミドルナリスの商業ギルドにも石けんを売って欲しいと要望が来たから。
タツキとレイキも卵と牛乳は売りたいみたいだったから、カードを預かって私が代理で売れるか確認したら、大丈夫だって。調べたら同じ冒険者パーティーだって分かるしね。
なので、サナエ、タツキ、レイキのそれぞれのギルドカードを預からないと。魔鳥の卵と魔牛の牛乳も。
だから部屋に戻る。そこはやっぱり知らない匂いに満ちていた。
ソファで寛いでいたみんなに
「レイノルドから商業ギルドに石けんとか卸して欲しいって言われたから行ってくる。カードを預かって私が行くので大丈夫だって。みんな、カード。タツキとレイキは売りたいもの出して?」
「分かった!頼む」
カードと卵1個と牛乳を30Lを預かる。
「その、タフと行くのか?」
「うん、みんなはもう出かけるでしょ?1人で外に出るのは良く無いだろうし」
「その、俺たちだけ悪いな」
「シエル…お留守番でごめんね」
「うん、それは全然平気!私はそっちは興味無いから…じゃあね!」
手を挙げて部屋を出る。お留守番なのはリリや姫、王子も同じだから。
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