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星なし転移者と仲間たち〜逃亡中〜  作者: 綾瀬 律
異世界転移?

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52.オークキングの素材

 そもそも何で私たちにオークキングの所有権があるのか。それは私たちが倒したから。でも対外的には言えない。なので、タフと空かける翼のメンバーが倒したという事にしてあるので、依頼人である私たちパーティーに所有権を渡した。

 そういうストーリーになっているからだ。

 前にも話があった通り、依頼中の討伐は依頼人との折半が基本。でも本来なら必要のない人助けなどの場合は依頼人が総取り出来る。

 タフはギルドを通したレイノルドたちの依頼を受けていない。要は私用のついでに個人で請け負っている。だからレイノルドも権利を放棄し、私たちの物になった。そう話をしてある。だから私たちにオークキングを売って欲しいと言ったのだ。


 色々と使える素材なのと、貴重らしいから使わない分は売る事に。牙や爪、目玉も使えるらしい。うへぇ。

 牙は魔力伝導がいい素材らしく1本は残す事に。後は売りに出す。

 今回は売るものもたいしてないからこんなもんだ。ガルたちも特に大物は無かったしね。

 で、ミリオの話とも合うという事で解散。オークキングの査定は明日いっぱいかかるそうだ。なので明後日、ここを出発する事にした。

 オークキングはすでにわたしが亜空間で解体済み、お肉の確保は必要だからね。

 なので解体済みの皮と牙、爪を渡した。何やら内臓とかも魔法の実験で使えるらしく、欲しいと言われたよ。捨てるか姫たちのエサになるだけだしついでに置いて来た。


 ライルが手配した宿に向かう。ギルドから程近いそのお宿はノースナリス程ではないけど、立派だ。そのまま部屋へと案内された。

 またもやスイートルーム、大丈夫?お高くない…庶民は気後れしちゃうよ?

「おいくらなの?」

 サナエが案内してくれたお姉さんに恐々と聞く。

「1泊1部屋4万ガロンでございます」

 えっ、このクオリティで4万?1人1万…安!

 これにはみんなも納得だ。はい、何泊でも…。

 ペシリッ

 はい、すみません。テンション上がってました。

 部屋に備え付き茶器で紅茶を淹れてくれる。


 その茶器に目がいく。繊細な感じではなく、無骨なのに愛嬌がある。釉薬を使わない素朴な色。それがまたいい。

「こちらの茶器はミドルナリスの特産品ですよ」 

 お姉さんが教えてくれた。どうやら土の中の成分によって焼くと色が変わるらしい。表面がひび割れた風なのもここの焼き物の特徴なんだって。タイのセラドン焼きみたい。青に緑、ピンクとくすんだ淡い色がとてもいい。さらに顔料で裏に違う色を付けてあったりする。これは買いだな。


 今使ってるのは王都で買ったお皿やカップだ。柄物は繊細な作りが多くて、野外には向かない。

 ならばとミトリで買うと、今度は白磁なので目立つ。不便だし可愛くないし。悶々としてたからね、嬉しい。

 それはみんなも感じてたようで、明日、見に行くことにした。

 夕食はレイノルドがいいお店を紹介してくれて、みんなで行くことに。お金は各自払いでね!

 懐は暖かいから大丈夫さ。


 簡単にシャワーを浴びて着替える。この宿にはシャワーがあるからね。

「やっぱり夕食はお魚?」

 サナエが誰にともなく聞く。

「どうだろうな?前のことがあるし、肉かもな」

 チラッとタツキが私を見ながら言う。

「う…」

 面目ない。なぜかレイキが頭をポンポンしてくれる。

 そっと抱き付くとふんわりと抱きしめてくれた。

「お前ってほんと女の子っぽくないよな?いや、サイズは小柄だけどほんの小さな子を抱きしめてるみたいだ」

 レイキをジトッと見上げる。何が言いたいのかな?

「ん?一緒に風呂入っても平気そうだなと」

 レイキのお腹を突いた。硬かった…。

「誰かさんに鍛えられてるからな!」

 ニヤリと笑われて憮然としたのだった。


「ほら、戯れてないで行くぞ!」

「「はーい」」

 宿の入り口に降りて行く。ロビーのようになっていて、そこにガルたちのパーティーとレイノルドとライルが待っていた。

「待たせたか?」

「今来たところだ」

「行こうか、今日はお肉の美味しいお店だよ」

 チラッと私を見てレイノルドが言う。面目ない…。レイキの後ろに隠れた。

 みんなで宿を出て歩く。どうやらお店は近いみたいだ。レイキと並んで歩いて行く。

 そこは小洒落た感じのお店。知らなかったら入らないだろうなぁ。レイキと並んでお店を見上げていると、後から

「おい、つかえてるから進め」

 はい、なんか気圧されてたよ。


 中に入ると店員さんが恭しく礼をした。

「レイノルド様御一行様、ようこそいらっしゃいました。お部屋へご案内します」

 様?レイノルドを見上げると

「うちの店が主に食材を卸してるお店なんだ」

 個室に案内された。

 丸いテーブルが2つ。私たちパーティーのテーブルにレイノルドとタフ、ガルたちパーティーのテーブルにはライルだ。

 そしてなぜかタフは私の左隣で、右がレイキ。レイキとタツキに挟まれてサナエ。タツキとタフの間がレイノルドだ。

 お肉料理と言っても全部が肉ではなくて、前菜は野菜の酢漬け。スープはエビのビスク?風。サラダは温野菜。サブメインで白身魚でメインがステーキだった。

 どれも味付けが独特で、とても美味しかった。


 今日は大丈夫だったよ!ドヤ顔でタフを見上げるとなぜか優しい笑顔で頭をポンポンされた。むう、小さな子じゃ無いのに。

「くすっシーちゃんはほんと反応が可愛いな!」

「ぶふっ…」

 レイキめ…また吹き出して。タフが私を抱っこして部屋の隅に移動する。そこには大きな窓があって、だからフードを被ったけど夜の町が見えた。

 明かりの少ない町は夜の闇に溶けるように静かに佇んでいる。特に理由は無いけど、タフ首にしっかりと掴まった。その横顔はどこか遠くを見ているようだった。じっと見てたら私の方を向く。

 うん、性格は色々残念だけどカッコいい。整った顔は見ていて見飽きないね。

 タフはその長い指で私の頬を撫でて

「そんなに見られると照れるよ?可愛いお嬢ちゃん」

「お嬢ちゃんじゃ無いよ!タフはカッコいいなって思って」

「くすっ、ありがと。お嬢ちゃんは僕にまるで興味無さそうだけど」


 面倒なのは勘弁だからね!Sランクってだけで充分面倒だし。

「ないね。見てるだけなら眼福」

「あははっ、酷いな!僕はね、そう…モテる。だから寄ってくるのはそういう下心のある人ばかりで。疲れるんだ」

 まぁ冒険者としても、男性としても狙い目なんだろうね。

「ご愁傷様?」

「あははっ、本当に興味ないんだね…残念」

 全く残念そうではなく言ったよ。

「そろそろ帰ろうか?」

 振り向くとなんかみんながソワソワしてる。ん?何?

 タツキもレイキも目が泳いでるしサナエは頬を染めている。

 あ、あー…なるほど。タフは私を引き離す為に窓際に寄ったのか。そう言えば全く声が聞こえなかった。音を遮断したな。私に聞かれたくない事。ならやっぱりアレね。まぁね、こっちから提案するかと思ってたし。楽しんで来て?


「タフは?」

「ん?僕はお嬢ちゃんのお守りだよ」

「行って来ていいのに…」

「僕が行くと騒動になるから」

「体は大丈夫なの?」

 タフは驚いてから困ったような顔をして

「子どもは心配しなくていいんだよ!」

「私はだめだよ?」

 タフはポカンとした顔をしてからえ、は、え…と焦ってから大きなため息をついて

「そんな事考えてないよ…」


 念の為ね?

 で、私とタフは一足先に?宿に帰った。そこで別れるかと思えば危ないからと部屋に来て、何故か同じベットで寝た。あの…一応は思春期の女子なんだけど?

 タフは全く頓着せずに私を後ろから抱きしめてスヤスヤと眠った。抱き枕?温もり付きの抱き枕ですか?

 私も疲れてはいたので、胸元のラビとあーちゃんのもふもふとまふまふに癒されて、背中のいつもより高い体温とがっしりとした体にすっぽりと包まれて、安心して眠った。



 ん…苦しい。ギュウギュウ抱きしめられてる。

「うん、母さん…行かないで…」

 苦しそうな声。タフ?すぅすぅと寝息が聞こえた。腕の力は少し緩まったので良かった。色々とね。

 あーちゃんもラビもスピスピしてる。可愛い。

 とってもカッコいいタフに同じベットの中で密着してるのに、ほんと何も感じない。いや、なんだろ。子供の頃にお母さんの布団に入ってたような、そんな感じはある。ただ、異性という感覚は無い。

 転移前の状態のまま、体だけ若返ったのかな?まぁ変に発情するより楽だしいいか。


「うん…シーちゃん?起きてるよね…」

 ゆっくりを振り返ると間近にイケメンの眠そうなで無防備なドアップがあった。

 おわっ…びっくりした。

 優しい顔(寝ぼけた顔?)で私の頬を撫でると、そのまま唇にキスして来た。

 …えっ…?

 タフは、ん?という顔をするとまたむちゅうってキスして来た。柔らかな…っていやいや、何してんのよ!


 バチーン


 わ、私の…この体で初めての…初めてを…、、。

 うわぁぁ…恥ずかしい。感覚が52才だから居た堪れない。

「えっと、あれ?シーちゃん…怒った?」

 私が真っ赤になって狼狽えてるのを見て、タフも焦って

「えっ、えっ…もしかして初めて…?」

 恥ずかしくてタフの胸に顔を埋める。

「うわぁ…ごめん。知らなくて…」

 タフが顔を覗き込んでくる。恥ずかしいよ…もう。自分の顔の価値が分かってるの?この人は。恋愛感情なくても焦るんだよー!

「くすっシーちゃんでも狼狽えるんだね?可愛い」

 ギュウギュウ抱きしめて来た。

「初めてとか分からないくらいすれば恥ずかしく無いよ!」

 どんな理屈よ?

 有言実行…タフにその後、何度もキスされた。なんだろうね?この行為。親鳥が雛鳥にエサを分け与えるような感じ。タフも同じみたいで

「なんだか餌付けしてる気分」


 2人で顔を見合わせて笑ってしまった。だってタフの体は全く無反応だし、私の感情も全く揺らがなかったから。




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