51.調子が戻ったよ
15から16日目
この日はミドルナリスの手前の村に1泊する。ここには集会所はなくて、各村人の家に分散するとか。私たちは危険なこともあって、4人で泊まれる助役さんの家におじゃました。
「ようこそ、何にもない村だがゆっくりしてってくだせえ」
「「ありがとう」」
部屋は客間でお布団が並んでいる。下手に分かれるよりある意味、安全だ。
食事は各家がもてなしてくれると言う。
この村はミドルナリスからちょうど1日かからない距離で、街道にほど近いこともあって旅人が良く泊まるそうだ。
お金を払ってもらったり、物物交換したりとそこそこ潤っているらしい。
もちろん、ただで泊まることはしてない。
お金とものとどちらがいいか聞いたら
「食料、特に肉と魚、調味料が欲しいですだ」
だそうだ。肉はオークと猪。魚はサケ、調味料は塩とコショウ。もらい過ぎだと言われたけど、大丈夫だからと渡した。
夕食に使って貰う用の肉と野菜も提供したよ。そしたら物凄く豪華な食事が出てきた。
有り難いね!
美味しく頂いて、レイキに部屋に出して貰ったシャワー室で順番に体と髪の毛を洗って寝ることにした。
ふう、昨日は熟睡出来なかったからね…今日はゆっくり寝たいよ。
ラビとあーちゃんをもふもふしてから目を瞑る。今日はみんな各自の布団に入っている。私とサナエを真ん中にして。
ふわぁ、おやすみ…。
うーん、良く寝たぁ。腕に抱えたあーちゃんとラビはとにかく可愛いくて温かい。ぬくぬくしてるとタツキが起きる気配がした。
リリと姫と王子は外の小屋で休んでる。ふう起きるか。そっと布団を出て部屋の外に出る。
「「おはよう!」」
「よく寝れたか?」
「うん…ぐっすり」
「なら良かった。リリや姫たちの散歩に行くか?」
「うん!」
外に出て小屋に入るとリリがタツキに飛びついて来た。
姫と王子を連れて外に出る。村の外に出ても近くなら大丈夫だと聞いたので、お散歩だ。リリ、姫、王子は歩くだけだと物足りないみたい。
だから思いっきり走らせてあげよう!って事で近くの川までダッシュ!うわぁ気持ちいい。爽やかな朝だ。あーちゃんも走ってラビは跳んでる。楽しそうだね?
ふふっもっと遠くまで、あ、ダメ?離れすぎる?だよね…。仕方ない。
リリも姫も王子もラビやアイカまで川にダイブした。えっ濡れないの、と思ったら体の周りに結界があって濡れてない。凄い!
私もーとダイブしようとしてタツキに止められた。何で?だって楽しそう。
「いやシエル…スカートだろうが」
ありゃ、そうだった。寝る時用の長いスカートだった。てへっ…残念。
帰りも走ったり追いかけっこしたりして村に向かった。あ、木苺だ!
「木苺!」
「お、ほんとだな」
高いところはタツキに、手の届くところは私が収穫。ジャムを作ろうかな。ふふん、あ…キノコも発見!
「早起きは三文の得だね!」
「だなぁ」
収穫しながら帰った。
ちょうど朝ご飯が出来たところだった。パンとスープ。だからハムを取り出し渡した。うん、人が作ってくれる食事は美味しい。
食べ終わるとお礼を言ってオークの肉をドドンッと置いて来た。
助役さんはお野菜をたくさんくれた。ウィンウィンだ。
こうして出発した。さぁやっと今日はミドルナリスだ。
意気揚々と進んで行く。
でもね、景色は変わらないんだよ。残念。てくてくと歩いて行く。町が近いからか、魔獣も出て来ないし、野党もいない…平和にてくてく歩いた。お昼ご飯を食べてまたてくてくてくてく。平和だね?
そして午後4時、陽が傾き始めるかなってくらいにようやく町が見えた。もう本当に変わらない景色がね?
ホッとした。疲れよりも何よりもひたすら。
そして、町に入る為の列に並ぶ。夕方だからね、依頼帰りと思われる冒険者たちがいたよ。
そこに並ぶと
「鉄拳だ!」
「鉄拳だじゃ無い?」
「「カッコいい」」
の次に
「レイノルド様ー」
「レイノルド様よ」
「「可愛い」」
ときて
「きゃーライル様が」
「ライル様素敵!」
「「萌える…」」
強さ、可愛いさ、かっこよさかな?一緒にいる私たちへの視線がね…殺気、殺気なの?
グレイは平然としてる。いやまぁグレイは別の意味で目立ってるし。
「キャー斧背負ってる!」
「カッコいい!」
だよね?グレイは女の子が憧れる女性だ。
そして
「ねぇ、素敵な人…」
「カッコいい」
「黒髪よ、珍しいわ…素敵」
「あー目付きがするどくて、カッコいい」
タツキとレイキも人気だ。確かに見た目はカッコいい。今までの町ではあまり騒がれなかったけど?
位置取りかな?いつもはタツキと私が手つなぎで、後ろにレイキとサナエだ。私とタツキが兄妹でサナエとレイキが恋人って見られてたのもね。
それが今はタツキ、私とサナエ、後ろにレイキ。冒険者のお姉様が騒いでいる。
モテ期が来たね!そう言えばそろそろ男性的なアレが疼くのではなかろうか?ちょうどモテてるし、いい人がいればね?アリなのでは?
ちなみにこちらに娼館はない。日本と同じで飲み屋さんはある。意気投合すれば奥に消えて行く。お持ち帰りは不可だ。
お姉さんやお兄さんがいる飲み屋と、いわゆる出会いの場となる飲み屋がある。
そこで意気投合すると、お持ち帰りになってしっぽりとね。
私以外は成人してるし、私に構わず行って来ていいのだ。後で言おう。
そんなこんなで注目を浴びながら進んで行った。やっと門に着く。まずはミリオが荷馬車の説明をする。中には亡くなった人が乗ってるからね。
門番はそれを確認して、すぐに誰かを迎えにやった。
次はレイノルドとライルがタフと共に身分証を見せる。タフにピシッと敬礼をし、レイノルドとタツキには助かります!と声を掛ける。馬車は町に入った。
ただ、ミリオのこともあるから待機だ。
そしていよいよ私たち。ガルたちに続いてタツキを先頭に冒険者じゃない方のガードを出す。
実はサナエと私もゴールドになっていた。ふふっ、上級ギルド員の証だ。
ちなみに名前はこちら風に変えて登録した。理由は後で私たちの事を王族が調べても分からないように、だ。私はシエラーネ、サナエはサナーリル、タツキはタッキーニ、レイキはレイリーエフ。
それぞれの略称がシエル、サナエ、タツキ、レイキだ、と言う設定。
門番は私たちのゴールドカードを見て
「もしや、ノースナリスで革命を起こした?」
誰が?いや、革命って何?首を傾げる。
「こほん、いえ、1人ごとです。どうぞお入りください。ミドルナリスへようこそ!」
町に入る。うん、ようやくミドルナリスだ。
と言っても入ったところで待機だ。しばらくすると冒険者ギルドと商業ギルドの職員がやって来て、ひとまずギルドに来て欲しいと言うことになった。
宿は大丈夫かな?心配そうな顔をすると、レイノルドが
「我々が出資している宿がある。人の移動が減ってるから空いてるはず。ライルに走らせるから、確保させるよ」
「ありがとう、多少高くてもいいからよろしく」
サナエが応えた。我らが金庫番だからね!
冒険者ギルドに着くと、広い部屋に通された。そこに座る。私たちいるの?と思ったらタフにキングの件だ、と言われた。
少し遠い目をしてしまった。
ちなみに情報の擦り合わせが必要ということで、ミリオは別室だ。
「まず、お疲れさん。良くミリオンを帰してくれた」
仕切るのはこれまたドンッと大きな人。ギルマスで名前をベアリルさん。熊さん、熊さんなのね?
見た目ももじゃもじゃで大きい。熊さんだね?
「ぐぅ…」
レイキが吹き出すのを耐えている。今この時に腹筋は鍛えられている。
タツキに頭をペシリと叩かれた。
「まぁな、偶然通りがかった。他の人は間に合わなかったんだ。荷と馬車はなんとかなったが」
「あぁ、リーブランの倅だな?助かった。しかし、強い馬だな」
そう、レイノルドの馬車は本来なら2頭で引く。それを1頭で引いて来たのだ。凄いのだ!
コッソリとレイキが荷馬車の重量を風魔法で軽くしてたけど。お馬さんは覚悟して引いたのにあれ?って顔をしてた。そして休憩時間にレイキに突撃してたよ!
ふふっ家政婦は見た…。
ペチリ。
(こら、集中出来ないだろ)
さーせん。タツキに怒られた。
「にしてもオークキングとはな…鉄拳は相変わらず引きが強いな」
なぬ?やっぱりタフなのか…チラッと見ると気まずそうな顔をする。Sランクがいた安心だと思ってたのは間違いか?引き寄せてるならタフがいない方が平和とか?
なんかなぁ、チカラがあるとやって来る。でも力があるから安全。卵が先か鶏が先か。
「素材は買い取れるか?」
タフがこちらを見る。タツキが
「何に使えるんだ?」
「ん、あぁまだ登録したてか…オークキングの皮は魔法を弾くからな。革鎧に使われる。ローブに仕立てるのもありだ。とにかく、値打ちもんでな。防御の為の装備に人気だ」
「どこで仕立てられる?」
「オークキングの素材なら鍛治の町だな…ここからサウナリスに行って、さらに東に行ったこの国の端にあるマイヤーって町だ。そこなら確実だな」
「自分たち用に使いたい」
「全員分使ってもまだ余るだろ?防御が強い首や足、腕と胸の皮以外を売って欲しい」
「なら必要な分を除いて売る」
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