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星なし転移者と仲間たち〜逃亡中〜  作者: 綾瀬 律
異世界転移?

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49.やっぱり肩の上がいい

14日目

『ぷもん…』

 ラビが鳴いてるけど、何を言ってるのか分からなかった。そして、あぁラビはテンと一緒にいたいんだと分かった。だから私との繋がりが切れて、言葉が理解できなくなった。

 そうか、そう言うことか。ならば、自由にしてあげるよ?ラビ。あっちに行けばいい。


(私シエルとラビの契約を解除する…)

 ラビはふわんと光って、その目の色は元の無色に戻った。これで自由だよ…ラビ、いやもうラビじゃ無いか。

 レイキが何か言いたそうにしているけど、今はそっとしておいて欲しい。



 私は突然家を出たかつての夫を思い出していた。

「お前といると気が休まらない。仕事が出来て、家のことも出来てな。出来る嫁でいいなって同僚が言ってた。何処がだよ?男をたてることも出来ない気の強い女が!出世出来るのに、したく無いなんて言う女の…何処が出来た嫁だ。俺が惨めになるだけだ!」

 そう言って、家を出た。


 そんな風に考えてたんだ。仕事をしながら家事をこなすのは正直、かなり大変だ。

 疲れて家に帰っても、すぐに食事の用意。やっと座れるのはご飯を食べる時。食べ終わればまた片付けに洗濯、お風呂の準備。


 全て終わってやっと1人の時間が取れる、その頃には疲れ果てて眠る。頑張って頑張って、その生活を維持していたのに。男をたてる?そんな余裕すら無かった。

 追われる仕事、部下の育成、溜まる決算…とにかく必死だったのに。


 25年の時間を否定させたようで悲しかった。子供なんていらない、そう言われたから。楽しそうに子育ての話をする友人の輪から漏れて、産休を取る部下の代わりに仕事を引き受けて。

 何も思わなかった訳じゃない。それなのに


 子供も産めないんじゃな…そう言って。不倫して付き合ってた年下の子が妊娠したのをキッカケに家を出て行った。

 きっと自分の子供は可愛いよな、と嬉しそうに笑って。

 言いたい事は沢山あった。でも、それを私のプライドが許さなかった。

 だから、ラビが私じゃ無く他の人を取るなら…私は追わない。それが幸子の生き方であり、誇りだから。誰かに縋ったりはしない。


(シエル、ラビが話しかけてるぞ?)

 いつの間にか、レイキの肩に白うさぎがいる。

()ラビ、だよ)

 困ったような顔でレイキが私を見る。

『ぷもん…ぷもん…』

 声はもう聞こえないよ…繋がりは絶たれたからね。

(ラビが、また契約してって言ってるぞ)

 何でレイキがうさぎの言葉を分かる?

(うさぎ語を習得した!)



 …はい?



(余りにもな、見てて。ラビもお前も…だから何とかしたいと思って。そしたらうさぎ語を習得した!)

 私はなんと言ってもいいか分からなかった。でもラビはテンのそばにいたいみたいだから、私は要らないよ。だから契約はしない。私は、私を選ばなかったその子を受け入れられない。


 レイキは私をじっと見ると、私の頭に手を乗せて

「レイキの名において、シエルと白うさぎの契約を代行する。白うさぎの名はラビ…」

 私は目を開く。まさかの契約代行…ジョブで作った?



(見てられないからな…俺が責任を持つ。ラビはお前のそばにいたいと心から願っている)



 レイキの肩のいるうさぎは光るとその目が青になり

『ママ!』

 私の方に飛んできた。

『ママ、ごめんなさい!誤解なの…私は昔、子供を亡くしてて。だから自分の子供のように思えてついお世話を。でもママと居られないなら、その方が嫌。何も言わなくてごめんなさい。だからそばに…そばにいさせて!』

 レイキは知ってて?見れば頷く。

(ラビ…)

『ママッ名前を呼んでくれた…』

 こうして、ラビは戻って普通に歩いている。



 時々、魔獣が出るけど想定の範囲内だ。やっぱり速度は上がらない。なのでお昼は行動食になった。要するに歩きながら食べる。

 焼き鳥風の串焼きを作っていたので、それを食べる。歩きながらだとこれだよね!

 で、肉まん。レンチンが必要なんだけど、レイキがレンチンのような温める魔法を作って、ほわほわにしてぱくり。私は肉まん派なので、あんまんは買っていない。欲しい?却下だ、邪道だよ。


 いい匂いがするからか…どこかでゴクリと喉がなる。御者台か、レイノルドとライルの視線を感じるけど同行者ではないよ?たまたま同じ街道を進んでいるだけだから。

 自分たちだけでモグモグタイムだよ。みんな?マズイ干し肉を齧ってるね。でもそれが普通。普通に戻るだけなんだから、問題ないよね!

 こうして本日の野営場に到着した。


 ササッとテントを建ててまったりする。ふぅ、安全なのはいいけど暇っていうか、つまんないよね?

「平和なんだけど…退屈」

「それな…。安全第一なのはそうなんだが」

「景色が変わらないしね?」

「それだよな、せめて風景がなぁ」

 なんて贅沢な話をしていた。すると外か、声がかかる。ガルだ。

「よう、タツキちょっといいか?」

「おう、そっちに行く」

 この先の行程だろうな。タツキはサナエと一緒に話を聞きに行った。タツキが私は来ない方がいいと思う言ったから。で、レイキとお留守番。


 ラビはなんだか前にもまして甘えたさんになった。ピッタリと頬に張り付いて離れない。ずっと左の頬にもふんなラビの毛が当たっている。

「ん?…あぁ、そうなのか。でもな、伝わらんぞ?」

 何やらレイキとラビが会話をしている。

「まぁな、でも急に他の人に懐いたらそれはな、やっぱりさ。名前も与えて力も増したのにってなるぞ」

 うさぎ語で会話する。真っ白なラビとレイキ。なんだろうね?これ。


 外から声がしてタツキとサナエが戻って来た。

「なんだったの?」

「ん、あぁミドルナリスまで1日遅れるって話だ。仕方ないがな…上手くいかんな」

「それが普通の旅なの?」

「いや、イレギュラーだってさ」

「…」

「まぁ仕方ない」

「それとな、やっぱり食事について…一緒に作って欲しいって提案があった」

 無言でもタツキを見上げる。

「断ったさ。単なる同行者も、護衛も。本来なら自分たちで用意する。それをな、勝手に同行しておいてたかるなんて。それについては謝られたけど、だからと言ってな。行程だって遅れてるし」

「そうだね…勝手だよね」

「人数も多いしな。でも食い下がられて、保留にした。俺たちの他に4人分を夕食だけでも作って欲しいって」


「…一昨日、村でビックバードの丸焼きをご馳走したよ?誰もお金を払うかって聞いてくれなかった」

「それも言ったさ。取って来たタフはともかくな。申し訳なかったってさ。払うって言われたけど今更だよな」

「お金が欲しい訳じゃないから」

「で、どうする?」

「みんなの意見に合わせるよ」

「俺は手伝いしかしてないからな!シエルがいいなら構わないぞ」

「わ、私はなにもしてないから…でも、視線が少し気になるの」

「だよな、なら俺も手伝うから夜だけなら用意するするか」

「分かった」

「なら伝えてくる」

「いつから?」

「多分、今日から…」

 はぁ、そあなるのか、仕方ないな。

 

 タツキがどう伝えたのか分からないけど、雄叫びが上がった。さてと、どうしようかな。

 そう言えば炒め物ってしてないかも?中華風のレシピでもいいかな。

 牛肉のバラ肉煮込みとか。チンゲンサイは無いけど、ほうれん草で代用すればいいか。

 醤油がないから塩と鶏ガラで味付け。いいんじゃ無い?

 後はパンだね。堅パンでスープグラタン。

 よし、きまった。

「夕食の準備するね!」

「手伝う」

 テントの外に出たらミリオとタフが待っていた。何だ?

「手伝うぞ」

「間に合ってる」

 がびーんとか言ってるけど。慣れない人に手伝われるとかえって時間がかかるから。


 彼らは置いといて、オーク肉を取り出す。それを鍋に入れて塩や鶏ガラを入れて圧を掛ける。ホロホロになる頃合いをレイキに鑑定で見て貰う。

 タツキにはほうれん草と人参、キャベツを茹でて貰った。私は堅パンを風魔法でサイコロ状にカット。それをお皿に入れてトマトやキャベツ、茹でた人参、玉ねぎを入れる。その上からたっぷりとチーズをかけて熱々のコンソメスープを掛けたら出来上がり。

 もう一品はポテトサラダ。味付けは塩と酢と砂糖だけ。マヨネーズは無いからね。

 それをレタスの上に乗せたら出来上がり。


 後ろでミリオとタフが見てたよ、楽しいのかな?

 テーブルに1人前ずつ取り分けて、残りは大皿に。お代わりは自由にどうぞ、だ。

 もちろん、私たちパーティーとはテーブルを分けたよ。こっちは安全に食べたいんだ。

 今日はレイノルドとライル、タフとミリオが夕食を食べるみたいだ。

 あちらでは一見行儀良くその実、熾烈な争いが繰り広げられていた。

「取りすぎ」「そんなことは」「だから取りすぎ」「こんなもんだよ」「あ、最後の」


 こちらは平和なもんだよ。私はそもそもたくさん食べないし、サナエも普通の量より少し多いくらい。タツキもレイキもせいぜい2人前。この世界の人は細くても良く食べる。

 レイノルドもライルも細身のなのに3人前は軽く食べてる。あちらは4人でも15人前盛ってるのにね。

 さらには食べるのが早い。まだこちらが食べ終わらない内に完食してた。私たちが食べ終わるとレイノルドとライルが

「とても美味しかったよ、ありがとう」

「美味しかった」

 ミリオは

「まさか旅の途中でこんなに美味しい夕食が食べられるなんて思わなかったよ、ありがとう」

「いつもながら美味いな!」


 良かったよ。片付けが終わったらテントに戻ってから居間の空間に集合。おやつタイム。

 本日はどら焼きーパフパフ!お供はほうじ茶にした。

 ううーん、美味しいね。オヤツは別腹だい。

「しかしなぁ、食事やっぱりたかられたな」

「ま、シエルの料理は美味いからな…分かるんだよ、俺も」

「うん、もう干し肉とか無理だよね」

「私はビーフジャーキーなら大丈夫だよ!」

 と言ったら

「簡単でもいいから作って欲しい」

 タツキとレイキに懇願された。

「まぁ頑張るよ…」

「ごめんな、お前に全部やらせて…」

「ならたまには代わって!」

「う、そうだな。そうする」


 オヤツタイムが終わると各自、シャワータイム。ついにレイキがシャワー室を空間魔法に組み込んだ。やっぱり苦労したみたいだ。お陰で湯船には入れないけど、シャワーを浴びられる。

 道中、少しずつ不潔になるみんなとは違うのだ。ふふふっ。

 きれいサッパリしてラビとあーちゃんともふもふまふまふタイム。ラビはテンと一緒が良かったんじゃないのかな?とか思ったり、ちょっと飲み込めない思いもありつつ。もふんなラビはやっぱり可愛いと思ったり。


 で、そろそろ眠くなったのでサナエとベットに入ってその柔らかな体と温もりに包まれて眠った。



 ぷもん…ん…何?眠いよ。

 ぷもん!ラビが頬を叩く。えっ?何これ。何かおかしい。ラビとあーちゃんを感じるのにサナエの気配も、タツキとレイキの気配もない。

 ()()()()()()


「あ、バレた?そんなに警戒しないで!ここは僕の心象風景だよ。君に興味があって、呼んじゃった」

 ()()

「んーそうだなぁ、分かりやすい言い方だと神様だね」

 真っ白い空間に真っ白な人。肌も髪も白い。その目だけが紫に色付いている。人形のように整った神様だ。

「ふふっ、ありがとう!サチコ。君を若返らせたのは僕だよ…たくさん生きて欲しくて」

 たくさん生きて?

「そう、あちらではもう生きられないからね」



 …聞きたくない、聞いてはダメ、そう感じる。

「そうだね、まだ今は。くすっ大丈夫だよ、だからこの世界を楽しんで!アディオース」

 最後の言葉がこだまして…意識が浮上した。



「ぷもん…」

 ラビ?何、この気配。あ、これは現実の気配だ。背中にサナエを感じるから。そして良くないものが近くにいる。私は全身の毛が逆立つような気がした。防御をしている筈のテントに何者かが侵入する。私は息を殺して気配を探る。

 何故入れるの?防御が働かない?怖い。恐怖で身がすくむ。口元を抑えられた。!っ体を硬くすると

「俺だ!グスタフだ。なんかヤバい気配がする。いいか、テントから出るなよ?分かったな」 

 口を抑えられたらまま頷く。

 するりとタフがテントを出て行った。おかしい、防御はタフにも働く筈なのに。



 緊急?何の気配が…振り向くことも出来ずにただ、ラビとあーちゃんを抱きしめていた。






※読んでくださる皆さんにお願い※


幸子の想いにほろっとしたら…そして

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