星なし転移者と仲間たち〜逃亡中〜

異世界転移？

5.散々だよね

　部屋に入って食事を食べる。持ってきた時からすでに冷えていた。だって湯気が出てなかったし。

　ボソボソとしたパンに冷えたスープ。具も少しだけ。肉も魚も野菜も無し。

「分かりやすく歓迎されてないね」

「本当…」

　まぁ特に問題無いけどね。

「おーい、壁を開けてー」

　レイキが壁に穴を開けてくれる。

「おい、なんだこれ、食事なのか？」

「無いよな」

　やっぱりね？

「ちょっと待ってね？」

　私は帰りがけに買ったものを取り出す。

　地域限定のカップラーメンに魚介弁当、ステーキ弁当だ。冷凍しておこうとたくさん買っていた。

　ちょうどイベントの物産展で売っていて、大人買いしたのだ。

「えっ凄いな？」

「いいのか？」

「いいよ、食べて？」

　カップラーメンには魔法でお湯を入れる。

　お皿やカップはある物を使えばいい。

　みんなで分けて食べた。んー美味しい！

「美味いな」

「美味しい」

「生き返る」

　だよね？美味しい食事は基本だよ。

「シエル、ありがとな」

「「ありがとう」」

「いいんだよ」

　私ははレイキをチラリと見る。実験だしね？

「みんな、荷物の中身をこれに移し替えておいて」

　そう言ってビニール袋を取り出す。マルシェ用にたくさん持ってて良かった。

「なんでだ？」

「検証の為だよ。もしかして補充されないかと」

「そうなのか？」

「分からないけど、あるあるでしょ？」

「まぁな、補充されたら儲け物だな」

「そうそう。で、元の袋は残してね？」

　話はそこで終わらせて、各自詰め替え作業だ。

　終わると一息つく。ふぅ。

「やっぱり帰れないんだな」

「……」

「俺は別に帰れなくても」

　とレイキ。私も頷く。サナエもだ。

「ならここで楽しむか！」

　みんなで顔を見合わせて笑った。

「それなら、明日だね。いかにうまく立ち回るか。でもその前にレイキ、布団とか枕とか茶器とかソファをコピー出来る？」

「はぁ？どうやって？」

「調べる！」

　ふむふむ、転写でいいのか。創造は魔法の一種で、使うにはキーワードがいると。コピーの場合は同じ物を思い浮かべて転写、と唱える。

「コピーしたい物を思い浮かべて、または触って転写って言う。声に出さなくてもいいみたい」

　レイキは座っているソファに手を当てて目を瞑る。

　すると

　ドンッ

　横にソファが出た。

　おぉ〜拍手だよ！凄いな、すぐに出来るなんて。やっぱり⭐︎6はチートだね。

「凄いな…」

「魔力は？減った感じある？」

「いや、無いな」

「気を付けて他もやってみて」

「おう」

　それから次々と転写していく。有り難いね。さっさと亜空間にしまって、一旦解散かな。

「お風呂に入り終わったらまた集合ね！」

「俺たちの方が早いから、終わったら声掛けてくれ」

「おけー」

　で壁の穴も閉じて解散。

「サナエちゃん、お風呂に入ろう。私ね、泊りからの帰りだからシャンプーとか一式持ってる。一緒に使おうね？ここには石けんすら置いてなかったし」

「男性陣は？」

「大丈夫でしょ？多分」

「明日以降に考えたらいいかな」

　サナエとお風呂タイムだ。おっ、なかなか。眼福だね。

「サナエは細身だけどなかなかだね？」

「嫌なんだけどね、目線が。シエルはまだペタペタね」

「そっかー偽賢者とかモロ見てたもんね」

「そうなの、だから隠すような下着を」

「あー、それは大変だね。私は成長してもしれてる」

「可愛くていいよ、その方が」

　なんて会話をしていた。

　お風呂が終わると髪の毛を風魔法で乾かす。サナエのも乾かした。

「シエル凄いね！」

「サナエも出来るよ？魔法は全部使えるんだから」

「そうなの？」

「転移者だからなのか分からないけど、中級程度はみんな使える筈」

　そこから風魔法の使い方を簡単に教える。するとすぐに出来てた。

「出来た！」

「ちょこっとした時に使えて便利だよね。後はどれくらい魔力があるのか、だね」

「うん」

「それを知る方法もおいおい調べるよ」

「くすっシエルと一緒で良かった」

「それは私も。やっぱり同性がいるのは心強いよ。おばさんでもね、特に今は」

「仲良くしてね！」

　笑い合ってお水を飲む。何も混入はしてない。

　ソファでしばらくまったりしてから

「上がったよー」

　隣に声を掛ける。すぐに壁に穴が開く。

「シャンプーとか大丈夫だったか？」

　タツキが聞いてくる。

「私が持ってた」

「良かった。液体は袋に出せないからな、元に戻るとといいが」

　頷く。

　私は亜空間からパックの緑茶を出してポットにお湯を入れる。

「おっ緑茶か？なら俺はこれだな」

　タツキが亜空間から何かを出す。それは、博多の超有名なミルク餡のお菓子だ。

「タツキは博多の帰り？」

「あぁ、出張でな」

　箱ごと机に置いてくれる。一つ取って食べる。美味しい。緑茶と合うなぁ。

「「美味しい」」

「「美味い」」

　余韻に各自浸る。

「ねぇ、もう一つ貰っていい？増えなかった時の為にキープしたい」

「もちろんだ、一つと言わず後4個いいぞ」

「ありがとう」

　遠慮なくみんなも貰った。

「食べながら聞いて。明日ね、彼らが言う所の放逐されるよね？だから最低限の物とお金は貰っていきたい」

「ヤツラが素直にくれるか？」

「うんケチそうだったし」

「だな」

「だからね？出させるの。しかも向こうから、だよ」

「どうやって？」

「んー切ない演技と帰してって言葉。あとは勝手に呼ばれてどう暮らしていけば…って泣く？で、タツキくんが何とか生活の基盤が出来るまでの資金をって援護射撃」

「なるほどな、お前って相変わらず痛いとこつくよな」

「こっちも必死だよ？無一文で投げ出されたら死ぬ未来しか思い浮かばないしね。で、一番大切なのは情報。通貨とか周辺国の情報、魔法とかもろもろ。

　それだけは教えて欲しいって泣きつく。後は当面の資金と物資かな。そこまで貰えたらここを出る。ダメって言われたら生活基盤が出来るまでここに置いてって言う」

「分かった。あとはアドリブだな」

「間違っても噴き出さないでよ？」

「「「誰のせい？」」」

　顔を見合わせて笑う。

「いや、でもシエルのお陰で惨めな思いをすることもなかった」

「うん、吹き出すのを抑えるのでいっぱいだった」

「腹筋がヤバかった」

「「「でもお陰で笑えた」」」

「じゃぁ良かったってことで。疲れたしそろそろ寝ようか？また明日ね、おやすみ」

「「「おやすみ」」」

　壁が塞がれて静かになる。防音結界も解除っと。

　さて隣のサナエを見る。

「洗面台にコップに入った紙があったの覚えてる？」

「あ、確かにあったね」

「あれ、多分歯磨き」

「えっ紙だったよ？」

「擦るんじゃない？やってみよう」

　やってみた。うん、確かに歯の表面は擦れる。でもね、大事なのは歯茎との間。

　諦めてマイ歯ブラシでゴシゴシ。携帯していたホテルの未使用歯ブラシをサナエに渡す。

　歯みがきは大事。

　さすがに疲れたし、時間も分からないし寝ることにした。

　ベットは2つ、でもサナエが遠慮がちに

「シエル、一緒に寝て？」

　可愛い子のおねだりには応えないとね！

　サナエの柔らかくて温かい腕に抱きしめられて目を閉じた。

　翌朝、目が覚めた。

　頬にはぽよんな感触、朝からご馳走様です。

　変態ではないんだけど普通に柔らかくっていいもんだよ、うん。

　下手に顔を動かすとぽよんが動いちゃうかな？遠慮がちにそっと顔を離す。

　動いたのが分かったのかサナエが目を覚ました。

「おはよう」

　まだ眠そうだね？

「おはよう、良く眠れた？」

「うん、シエルのお陰で温かくて安心出来たよ」

　それなら良かった。多分、私も同じだと思う。サナエがいて良かった。

　さすがに男性陣は抱き合って寝ていないだろうけど。

　それでも同じ空間に人がいてくれるのは安心だよね。

　体を起こして顔を洗う。いや、顔を拭く布とかも無いんだよね。やっぱり嫌がらせかな？

　持ってたからいいものの、酷いよな。

　サナエも顔を洗うと着替える。一応、夜用の服？テロンとしたワンピースがあったのでそれを着て寝た。

　今日着る用の着替えは貰ったから、それに着替える。

　体をほぐしたりしていると隣の部屋でも起き出す気配がした。

　タツキだな、レイキはまだ寝てそう。

「タツキおはよう」

「おう、おはよう。見た？」

「ん？何を…あ、待て…おっよっしゃ！」

「やったね？亜空間に入れたものは戻った。外に出してたものはダメ」

「法則があるんだろうか？」

「ん…うるさい…」

　レイキだな。

「おい、戻ってるぞ！」

　まだむにゃむにゃ言ってる。

「昨日の饅頭がまた食べられる」

「何？」

　そこなの、そこなのか？サナエと笑い合う。

　壁に穴が開く。レイキ…寝癖直そうよ？タツキはきちんと着替えも終わってる。

　タツキが取り出した饅頭にレイキのテンションも上げ上げだ。

「なら毎晩出したら増えるのか？」

「検証しよう」

　そこでレイキも寝癖に気が付いて慌てて洗面台に駆け込んだ。

　この部屋もだけど鏡が無い。で、荷物にあった手鏡を見て驚いたよ、髪の毛の色とかさ。

　ちなみにタツキはグレーの髪にグレーの目、レイキは黒髪にグレーの目、サナエは明るい茶色の髪に同じく明るい茶色の目。

　で、私は銀？艶消しの銀にグレーの目。で、みんな虹彩の縁がほんのり青みがかっている。

　何で銀？顔立ちはみんなも私も微妙に補正されていた。

　タツキは鼻が少し高くと口元がスッキリと。

　レイキは一重が二重になってホリが深く。

　サナエは二重の幅が広くなって鼻が高く。

　私は奥二重がキッチリ二重で鼻が高く。

　こんな感じ。

　ちなみにタツキは頼れるカッコいいお兄さん。

　レイキはスッキリ切れ長の目のキレイめ男子。

　サナエはふわふわ可愛い女の子。

　私は地味顔の女の子って感じ。

　こちらの基準が分からないけど、昨日見た感じは美男美女が多いかな？それで微補正されたのかもね？

　タツキ曰く、サナエは体型（背がそこそこ高くて細いのに胸はしっかり）もあって男性に要注意。

　私は小柄なのもあって変態に注意。レイキは男色家に狙われそうだからマッチョに要注意らしい。

　タツキは人が良さそうだから女性全般に注意だね。