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星なし転移者と仲間たち〜逃亡中〜  作者: 綾瀬 律
異世界転移?

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46.ミドルナリスへ

14日目


今年最後の更新です(12月31日なので当たり前ですが…笑)

来年も引き続きよろしくお願いします!

 どうしてこうなった。

 そもそもガルたちのご飯はミドルナリスまでって言ってたからね?

 知らないよ。そんなにたくさん仕入れてないし。

 タフ1人ぐらいならなんとかなるけど…あちらの護衛なら要らないよね?

 良かった、たくさんの人数分用意するのは大変だから。

 なんか視線を感じるけど知らんぷりだ。そもそも同行を勝手に決めるから。



 黙々と歩いて行く。レイノルドに馬車に乗らないか、と言われたけど

「同行者では有りませんので、お先にどうぞ」

 と言った。

 無視だ、無視。

 むしゃくしゃするので、ラビが感知した(前よりも遥かに高精度になった)獲物(魔獣)はサクッと私が狩ってるよ。知らないもんね。

 魔獣の横断に当たったら逆に何もしないんだ。守ってくれるんだよね?護衛なんだから。


 サクサクと進んで行くと、お昼時になった。ガルから休憩の合図が出たので

「散歩」

 と言ってみんなで少し先の原っぱまで移動した。見える範囲だからいいだろう。

 作り置きのハンバーガーを食べる。フライドポテトとコーラもね!飲みたくてエオンで買ったよ。

 ゴクゴク、プハー。美味しい。

「コーラがヤバいな」

「うん、こんなに美味しかったんだね」

「食事が進むな!」

「ね!ジャクンフード万歳!」

「「それな」」

 美味しいなー、あっちは干し肉だね。侘しいね?知らなーい。私は関係ないし。


 ぷもん…。

 ラビが何かに反応した。即座に臨戦体勢だ!

『遠い…』

 ラビが反応するのは助けが必要な時だ。行くか!

「走るよ!」 

 声を掛けて走り出そうとすると

『乗ってー』

 ラビが巨大化した…はひ?ラビちゃん。巨大化したラビは2mほど。ふわふわな白い毛が輝いている。

『走ってたら間に合わない』

 よし、あーちゃんを肩に乗せて跨る。先に行くと声をかけようとして振り向くとリリは本来のダチョウサイズに、姫も本来のサイズに、王子は姫よりは小さいけど立派なサイズになっていた。


 へっ…

『ご主人、乗ってー』

『ご主人は私に、サナエは王子に乗ってー』

 す、凄い。

『行くよー!』

 走り始めた。待って待って、ラビは跳ねるよね?私飛ばされない?

『大丈夫ー飛ぶから』

 と、飛ぶ?えっ…。ぴょーーーん…大ジャンプだ。うん、飛んでるね。

 自分でも結界で保護してるし、ラビも風魔法で風を避けてくれてる。

 みんなは大丈夫かな?

 リリは水平に体を維持して滑るように走っている。タツキの周りには、あれ?結界が。あ、まさか…。

 指輪の防御が働いて簡易結界を作ってるんだ。ほぇー凄いなぁ。

 サナエもレイキもだ。さすがにチートジョブだけある。


 リリは物凄いスピードで走る。ラビは跳ぶ。姫と王子はレイキの風魔法で体を浮かせて走る。これって時速何キロだろう…少しだけ考えてしまった。

 後ろに置いて来たガルたちが米粒くらいになった時、前に見えて来たのは横転した馬車と倒れ伏した人々だ。間に合わなかったか…。

 最後のジャンプを終えると、ラビは私を放り投げて跳びながら小さくなった。そして、血だらけの人に向かった。

 間に合ったんだ!いや、私は放り出されたけどね?


 この惨事を招いた元凶は今まさに目の前にいる。大きい。大きな魔獣。


(オークキング ネームド)


 よりによってキングのさらにネームドとは。名付き…それは多数の被害を出している凶悪な魔獣にだけ付けられる呼称だ。大抵は特殊な個体。

「チッ、ネームドか…」

 レイキも気が付いた。でも既にロックオンされている。

 やるしかないね!


 タツキはスラリと双剣を抜き放つ。サナエは杖を、私とレイキは手ぶらだ。タツキがタンッと地を蹴って双剣を振るう。キングに掠りはしたが、弾かれた。表皮は魔法を弾く。物理は効くけど、皮が硬い。

 すかさずサナエが足を凍らせる。ピキリッと凍ったが、力技で足を動かした。なんていう剛力。

 タツキが仕掛け、サナエが凍らすが堂々めぐりだ。

「サナエ、援護して!」

 私はキングの手前に巨大な土壁を立ち上げた。すかさずサナエが表面を凍らせる。強度を増したのだ。


 キングは邪魔な土壁を殴る。後ろからタツキが膝裏を狙って僅かに傷をつける。そこに私が風魔法で傷を広げ、レイキが傷口を火魔法で焼く。

 キングは魔力で皮を再生させるが、焼けた皮は再生しない。

 魔法通信で調べた。その傷を徐々に広げて行く。

 土壁は壊されたが問題ない。足元に小さな土壁を立ち上げていたから。それに蹴躓いて、ドウとキングが倒れた。


 サナエが膝裏の傷口に氷の矢、アイスアローを突き刺す。

 ギィエーーー!

 矢が貫通した。そこから凍り始める。これならいける!と思ったら体を手の力だけで持ち上げて、立ち上がった。膝には氷の矢が刺さったままで。

 もう片方の膝裏にも、とタツキが背後から近づいた時、危ない。

「タツキ離れて!」

 キングが風魔法でタツキを吹き飛ばした。ズザー。タツキの体が土の上をバウンドする。


 ピキリッ…タツキを投げ飛ばしたな?ブワッと怒りが吐き出すのを感じる。私は腰の剣を抜いた。そして、その場でキングに向けて一閃。全ての魔法属性を乗せた刃が飛ぶ。それはキングの首を掠めて霧散した。

 傷口には毒を散布した。ルーの蜘蛛毒だ。タツキは頭を振りながら起き上がる。防御が働いてたから大きなケガは無いはず。

(タツキ、大丈夫?)

(ん、おぉ…少し目が回っただけだ。何をした?)

(ルーの毒を傷口からね)

(よし!)


 タツキが軽くジャンプしてから苦しむキングに後ろから踊るように、舞うようにしなやかに…斬った。

 その剣は首に半分ほどまで食い込んで、やがてキングは絶命した。

 即座にキングを解毒する。

 美味しいお肉のためならえーんやこーら。

「ぶはっ…シエル…」

 レイキは相変わらず吹き出していた。サナエがタツキに駆け寄る。タツキはふらりとしてサナエが支えた。

「タツキ!」

「おい、大丈夫か?」

「タツキ…」

「あぁ、悪い。ちょっと頭に来たからな…少し無理した」


 タツキを見ようとしたら

「お前っ…ダメだろ!」

 レイキが即座に駆け寄ってタツキを座らせる。


(腕と足を骨折)


「えっ…タツキ、なんで…」

 私も駆け寄った。防御は効いてたのに、何で?

「悪い、最後の一振りで…振り切れた」

 レイキが足に魔力を流す。ふわりと光った。私は呆然としてただタツキの手を握ることしか出来ない。

 レイキは腕にも魔力を流してまた光った。

「なんで…」

 ぺたんと座り込んでしまった。安全に倒せる筈だったのに。何を間違えた?何がいけなかった?⭐︎6のジョブがあるのに…。


 プモン…ラビが呼んでる。私はゆっくりと立ち上がるとラビのそばに行った。そこには横たわった男性がいた。ケガをしてるけど、血は止まっている。


(ラビが内臓の致命傷を治した。やがて目が覚める。骨折はあまりにも不自然なので、治していない)


 メッシが追いついて来るだろうから、任せよう。

 タツキを見る。レイキが治したとはいえ、ケガした事実は無くならない。痛みの記憶も残る。

 何がダメだったの?分からない…。ただ、あまりにも私は弱い。

 魔法通信では裏技や秘技も見れる。見れる内容は理解できなくても、再現できる。それが魔法通信の真骨頂だ。でも、所詮は付け焼き刃。身に付いた技では無い。万能にする為には、努力も経験も必要なんだ。改めて分かった。

 私はなんて甘かったんだろう。仲間すら守れないのに、人を助けようなんて。

 もっともっと、体も心も強くならなきゃ。みんなを傷つけずに守れるように。


 やがてタフが走って来た。ガルたちに荷馬車を任せたのだろう。

「おい、急に走り出すな!何が…はっ?キング…えっ…」

 改めて周りを見る。助かったのはたったの1人。商人らしき男性と女性。護衛らしい男性3人と女性1人。私たちが着いた時点で既に死んでいた。

 助かったのは護衛と思われる男性1人だ。

「コイツをやったのはお前らか?」

「「「…」」」

「おい、何考えてんだ?お前ら自分のランク分かってんのか?キングの討伐ランクはA、ネームドならAAAだ!挑んだ時点で普通は死ぬんだぞ?人を助ける前に、お前らが全滅だ!」

「「「…」」」


 タフの言うことは最もだ。私たちは安易に駆けつけるべきでは無かった。慌ててたから相手の力量を確かめもしなかった。その通りだ。でも…助けないと思ってしまった。

 何を言っても言い訳にしかならない。ただ俯くことしか出来なかった。肩の上のあーちゃんが口元をペロリと舐める。ラビはいつの間にか肩に乗って私の頬に体を擦り付ける。

『ラビが助けてって思ったから…ごめんなさい。ご主人』

『ラビは助けたかったんでしょ?そして助けた。それでいいんだよ。私たちが死ぬような状況にならないって分かってたんでしょ?』

『ぷももん(うん…)』

『ならいいよ…』


 荷馬車とガルが追いついて来た。

「こりゃまた酷いな…」

「キングか?おいおい、よりによって…お前ら何考えてんだ!」

「治療する…」

「はぁぁ、護衛の意味がないじゃないか」

 怒られた。当たり前か。


「なぁ、助かったんだしいいだろって思ってんだろうけど違うぞ。それは結果論だ。死んでた可能性の方が大きい。勝手に動くな!分かったか?聞けないなら依頼は終わりだ」

 ガルがそう言い放つ。

「「「…」」」

「気を付ける」

 タツキがそう応えた。サナエもレイキも私も何も言わない。言った所で私たちの気持ちは分からない。

 きっとそれは価値観の違い。助けられるなら助けたい。死ぬかもとか考えるよりも前に、助けられるならって思った。それがこの世界の非常識だとしても。

 きっと平和な日本で育った私たちとは根本的な考え方が違う。分かっていても見捨てることが出来ない。甘いと言われても簡単には変われない。


 メッシは骨折やケガの治療を終えて、意識の戻らないけが人は荷馬車の脇に積んだ。レイノルドが付きそうようだ。

 



本年は拙い小説を読んでくださり誠にありがとうございましたm(__)m

連載中の「異世界転移 残りものでも〜」の方もよろしくお願いします♪


※読んでくださる皆さんにお願い※


面白い、続きが読みたいと思って貰えましたらいいね、やブックマーク、↓の☆から評価ををよろしくお願いします♪


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