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星なし転移者と仲間たち〜逃亡中〜  作者: 綾瀬 律
異世界転移?

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42/127

42.今日の夕食はきっと豪華だ。

13日目


後書にシエルのイメージイラスト載せてます…

「骨折して歩けない馬など、本来は足手まといです」

「あの馬たちの何かを悟った目が忘れられない。助けたかった」

 レイキがそう言った。無口だし無愛想だけど、誰よりも優しい。レイキならきっと見捨てずに何とかするんだろう。それだけの力もある。


「あなた様も、馬の治療を手伝って下さったと聞きました」

 レイキは首を振った。

「俺がしたことなんて…」

 そんな事ない。お馬さんがたちが痛みを感じないで眠れるようにって、治癒と回復の魔法を掛けてたよね?

 知ってるよ!

 レイキが私を真っ直ぐに見る。

「それでも、メリッサとナリッサが助かった事が全てです」

 ふふふっ私のレイキは凄いのだ!

(だれがお前のなんだ!)

 あらっ、サラッとさ流せると思ったのに、今日もキレッキレだね?


 隣のテーブルからタフがグラスを片手にこっちに来た。

「あーソイツラは自分の事は自分で守れるからな」

「えっ…?」

 私たちを見る。一見すると細身のタツキ、ヒョロいレイキ、ぽわんなサナエに私だ。

「あ…」

 思わず声を出した。だってフード被ったままだ。

 いそいそとフードを取って、また食事を再開だ!

「「「!!」」」

 ん?まいっか。



 今は前菜に続いて出て来た魚介のサラダだ。

 うん、これはタコさんでこれはイカさんで、これはエビさんだね…うん、美味しい。

 何のソースだろう?緑色。もしかしてエビさんの卵とか?

 ふんふん言いながら食べていると

(おい、見られてるぞ)

 レイキから念話が入る。え?顔を上げてレイキを見る。ん?レイキが軽く顎を向けた方向を見る。

 渋面が私を凝視していた。ん?首を傾げる。

 その横でレイノルドも固まって私を見ている。ん?私くらいの年の子って珍しいのかな。

 首を傾げれば固まったまま顔が赤くなった。

 何だ?レイキを見るとなぜかジトっとした顔で見られた。


 サナエを見るといつのまにかフード取ってる。あれ?私だけフード被ってたのか。だからか。

 ごめんなさい、お行儀悪くって。

 こころもちしょんぼりしていると視線を感じた。

(お行儀がとかじゃないだろ)

 そうなの?目をぱちぱちさせてレイキを見つめる。

 また視線を感じたのでそっちを向くとライルだった。びっくり顔で私を見ている。

 何だ?そんなに面白い顔かな…まぁいいか。

 お行儀が悪くって見られてるんじゃないならね。食べよう。

 いそいそと食事を再開。美味しい。



(シエル、周りの雰囲気とかには敏感なのにな、自分のことは残念なんだな)

 タツキがぽつりと言う。

(たいがい無頓着だろ。おかんだし)

(それね、あるかも。こんなに可愛いのに)

 サナエの方がぽよんだし可愛いよ?全体的にふわふわしてるし。抱き付き心地最高だし。

 だってふわふわでぽよんだよ?

 タツキに机の下で太ももをたたかれた。

(おい、またどこのセクハラおやじだ!)

 はい、ここでーっす。小さなおじさんです!


 口元を拭ってジュースを飲む。

 渋面のイケオジがタツキに話しかける。

「そのタツキどのたちは…」

「どうか呼び捨てで。こちらの方が年下だ」

 苦笑して言えば頷く。

「タツキたちはどういう?」

「同郷なんだ。故郷は遠いところで。ここまで4人でなんとかな…」

 遠い目をするタツキ。本当に遠くに来たよね。ふいに涙ぐみそうになる。

 タツキが背中を撫でてくれる。もう帰る事が出来ない故郷。そこは余りにも遠い。



 ちょうどサラダが下げられ、出て来たのは蒸した魚と野菜。お母さんの得意料理だ。私が作るとパサパサしちゃうのに。お母さんが作るとぷりっとして美味しい。

 両親はすでに他界していて、肉親と呼べるのは1つ年上の兄だけ。兄は23で結婚し、3人の女の子に恵まれた。でも奥さんはまだ40代で亡くなった。その後はまだ存命だった両親が協力し、上の2人は社会人になっていた。

 下の子も高校生。大学生になったら兄妹2人で旅でもするか、なんて話をしていた。なのに、私はいなくなってしまった。

 冗談めかして、お前はきっと長生きだから俺を看取ってくれよ。なんて言ってたな。

 いかん、思い出してしまった。お兄ちゃん、ごめんね。看取るどころか、行方不明だよ…。



 手元が見えなくなって来た。あぁ、本当に突然だなぁ。思春期の不安定さって。どうしよう、フード取っちゃったよ。

 うだうだしながら鼻を啜っていたら、いつの間にか温かな腕に抱きしめられていた。

 ぐすん、私はその肩に顔を擦り付けて泣いた。

 温かくて優しい手が背中を撫でる。


 ねぇ、どうして私だったの…?




 目が覚めた。あれ、ここは?腕の中にはあーちゃんがいる。全部夢?いつもの慌ただしい日常が戻ったの?私は震える手であーちゃんを撫でる。もふん。ああ、やっぱり夢じゃない。夢なんかじゃない。ラビのもふんを感じる。これは現実なんだ。

 ふぅ、ぐすっ…ううっ…。声を殺して泣いた。あーちゃんは私の泣き声に気が付いて体を起こし、必死に口元を舐める。うん、そうだね、大丈夫だよ…でも少しだけ、抱きしめさせて。


 あーちゃんの首元に顔を埋めた。あーちゃんの匂い。大好きな匂い。大丈夫、大丈夫。

 背中のぽよんが動いた。

「シエル…」

「サナエ…私は」

 振り返って聞くと、困ったような顔で

「うん…泣き出しちゃって、そのまま寝たの。だからタツキが抱っこして帰って来た。タツキにしがみ付いて離さなくて…」

 そう言って涙を拭ってくれる。

 ありぁ、迷惑かけたな。

「そう、食事は?」


 サナエはふふっと笑いながら

「シエルがしっかりしがみ付いてたから、タツキは手を離して普通に食べてたよ」

 なんと、器用な。ってかどんだけしがみ付いてたの?私。恥ずかしい。

「サナエもごめんね…」

「私は大丈夫」

「みんなも泣きたい時があるのに、私ばっかり泣いて」

「くすっ、いつもシエルが泣いてくれるから…大丈夫なの。まだ大丈夫って思える。だからありがとう」

「サナエ…ギュッてしていい?」

「もちろん」

 私は柔らかなサナエの胸にギュッと抱き付いた。そのままぽよんに顔を埋める。男子の夢だよね、これ。


「ふふっエロオヤジみたい…」

「サナエのぽよんがけしからんのだよ!」

「ふふふっ、もう」

 サナエもギュってとしてくれる。あったかい。その柔らかな体を堪能していると…あ、やっぱり気にしてるか。

(タツキー入っていいよ!)

(あ、いやその…大丈夫か?なら俺は別にだな…)

(入って来て!)

 軽く扉をノックしてタツキが部屋に入って来た。後ろにはレイキもいる。珍しい。いつもならまだ寝てる時間なのに。



「シエル…」

 サナエの胸から顔を上げてタツキを見る。その顔はおとんの顔だ。心配かけたなー。寝転んだ体勢のまま両手をタツキに差し出す。

 ため息を付きながらも私を抱きしめてくれる。昨日、こうして抱きしめてくれたんだね…おとん。

「誰がおまえのおとんだ!…ったく」

「タツキ、ありがとう」

 そのままギュッてしたら、変な顔された。

「お前、昨日も思ったけど、潔いほど平らだな…」



 ペチリッ



「気にしてる事言うなー!」

「ぶはっ…マジで?そんなにマナイタなのか?俺にも抱っこさせろ!」

「いやだー」

 レイキがタツキの横から抱きしめて来た。

「うわっ、男子か!これはまた…遠い未来に期待だなぁ」



 ペチリッ



 全く失礼な。サナエと比較したらそうだけど、男子よりは…スルン…。

「…」

 泣いていいかな?スルンって。頭をなでなでするレイキの手を払いのける。

「サナエ、今日から揉んで!」

「ぶはっ」

「ぐふっ」

「シエル、いいの?好きなだけ触ってあげるよ?」

 育つためならば!



 みんな笑ってる、良かった。

「突然泣くくせに、おかんなんだからな…」

「本当だ、振り回される俺たちの身になって見ろよ。まぁ昨日、振り回されたのは俺よりはなぁ」

 え、そうなの?

「ん?あぁリーブラン商会の3人の慌てようがな…。俺たちはまぁ何度か見てるし、またかぐらいだけどな」

「初めての人は驚くよね?普段とのギャップもあるし」

 普段から儚気女子なのに…。

「見た目だけな」

「確かに見た目は儚気かもな」

「可愛いもんね、シエル」



 その後は昨日、どんな様子だったのかを聞いた。私は突然黙って俯いた。隣にいたレイキがすぐに気が付いてタツキに念話し、タツキが声を掛けても反応が無かったから問答無用で私を抱き上げて膝に抱えたそうだ。

 そしたら必死にしがみ付いて来たので、一瞬、ぐえってなったとか。ごめんよ。

 肩を震わせて泣く私を見て、渋面さんやレイノルド、ライルが慌てて立ち上がったり、タフがオロオロと歩き回ったり、ガルが挙動不審になったりしたらしい。ありゃあ…申し訳無い。




シエルのイメージ…

挿絵(By みてみん)

目がグレーじゃない…そして、もっと平らなはず…どこが、とは言わないけど

生成AIで作成



※読んでくださる皆さんにお願い※


シエルたん可愛い〜と思ってもらえましたら…

また、面白い、続きが読みたいと思って貰えましたら…

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