41.取引の行方と今春タオル
12日目
あ、なんかのスイッチ入った?目が恍惚としている。
どうしよう、ちょっとぞわっとした。
「素晴らしい!これはなんと鮮やかな。ぜひお願いします!どれくらいいけますか?その前にお値段ですね。これでしたら1枚1500ガロンでいかがでしょう?」
ん-十分な気もする。でもね?悩むなぁ。
うんうん考えていると
「それなら…」
ライルも考えている。お高いからね。
あ、だったら付加価値を付けたら?レイキを見る。
(な、なんだよ?)
(付与…防汚とか)
(はぁぁ、汚れが目立たないから冒険者用とかか?)
(えっいや、貴族向けだよ)
(いらないだろ?貴族なら防汚とか)
(ステイタスにするんだよ!日用品に付与魔法)
レイキを見つめる。必殺おねだりだ!頭を叩かれた。
手を差し出すのでハンカチタオルを渡す。目を瞑って魔力を流している。
おぉ~素晴らしい!
(防汚機能付きのハンカチタオル 高品質)
ふふふっどや!
「ライル、特別に防汚魔法を付与したよ!さぁおいくら?」
目を丸くして驚くライル。じっとハンカチを見つめやがて
「これは…ふう、負けました。シエル様…商売の女神はあなたでしたか…」
へっ?何言っちゃってんの?
「1枚2000ガロンでお願いします」
穏やかな微笑を私に向けるライル、なんか怖い。
「は、はひ…」
咬んじゃったよ。
「何枚…」
「20枚で!」
「は、はひ…」
優しい微笑をたたえたライルがお金を渡してくる。ひとまず今は
レックス石けん 10×1200=12000
今春タオル 10×2000=20000
残りはレックス石けん25個と今春タオル10枚が今日の夕食時に、
牛さん石けんとウタマル石けんは明日各100だ。
商業ギルドに卸しているものは同じ金額でいいそうだ。
ふーやり切った。
石けんは買って綿の袋に入れるだけ、今春タオルはお徳用を買うだけ。
でもせっかくお高いからハンカチ専用の袋買って入れてあげよう!
「私は一旦、店に商品を置いてまた参ります。30分後に来ますので」
そういってライルは帰って行った。
「売れたね?」
「売れたな」
「ねぇ、自分たち用にも買ったから、レイキお願い!」
「はいはい…」
諦め顔で、でも防汚魔法を付与してくれるレイキ。ありがとう!
みんなには今春タオル(使ってるところを人に見せる宣伝用)をそれぞれ5枚ずつ配布した。
「これ見よがしに使うんだよ?でもあくまでもさり気なくね!」
レックス石けんを詰めて、今春タオルも袋に入れて用意。カラフルな紙袋だ。
先に渡した分の紙袋も付けるよ!
さらに、試しに使う用に1個を3つに切ったレックス石けんと木製のトレイ(レイキ作)をセットで渡す。
1つはお店で、1つはレイノルドが、1つはライルに使って貰おう。
あっという間に30分立ったので、ロビーに降りていく。
そこには空かける翼のメンバーとタフ、ライルとレイノルドが待っていた。
ライルとレイノルドは立ち上がると
「本日は夕食にお誘いいたします。期待してください」
「素晴らしい商品を卸していただきありがとうございます」
ライルに続いてレイノルドがあいさつする。
「商品は後でいい?」
「はい、もちろんです」
満面の笑みのライル。なんだか機嫌がいい?
(お前って…鈍いんだな、シエル)
ん?何が…?
「お揃いですので、馬車にお乗りください」
ぞろぞろと宿を出る。なんか高級そうな馬車が止まっているよ、あれに乗るの?
馬車の扉を開いてレイノルドが私に手を差し出す。えっと…困ってタツキを見れば頷く。
その手に手をのせて馬車に乗る。レディーファーストかな?
「ぶふっ…」
レイキめ、レディーに反応して笑ったな、失礼な。
サナエ、タツキ、レイキとレイノルドの手を借りて馬車に乗り込む。最後にレイノルドが乗り込んで出発だ。
「ここはサウナリスが近いので、新鮮な魚介類が手に入ります。王都の方々にも人気のレストランにご案内します」
「魚!」
「魚介!」
反応したのは私とレイキだ。二人でイエーイと手を合わせているとタツキに叩かれた。解せぬ。
魚介だよ?日本人だよ?焼き魚、煮魚、刺身、干物、天ぷら・・・活用方法は無限大だ!
グッとこぶしを握っていると
「ふふふっシエルどのは、可愛らしいな。あぁ、あのパン。大変美味しかった」
にこやかにレイノルドが言う。
「でしょ?ライルを貸してくれてありがとう。良かったらこれからも買ってね!」
優しいまなざしで私を見て頷くレイノルド。改めて見るとレイノルドはなかなかのイケメンさんだ。
茶色い髪に青い目。くせのある髪は短くて真ん丸な目は驚いているように見える。
可愛い系とでも言うのかな。にこにこしてたらおばさまに人気が出そうな子だ。
おかん目線でうんうんしてたらレイキが正面でため息を付いていた。
ほどなくして馬車が止まる。
扉が開くとレイノルドが降りる。乗ったのと逆の順番で降りた。
おぉーなんかお高そう。庶民には敷居が高いよ。だって、私は普通のワンピーススタイルだ。
さすがに冒険者の服はないかなって思って、シンプルな足首まであるワンピースを着ている。
さらにその上からフードを被ってローブを着ている。
私はウエストが絞られたデザインで、早苗は全体的にふんわりとしたデザイン。
タツキとレイキは体にフィットしたパンツにタツキが青、レイキがグレーのシャツだ。
場違いじゃない?ワンピースを摘まんでレイノルドを見上げる。
柔らかく微笑んで
「どんな服装でも大丈夫ですよ」
と言われた。良かった。まぁ空かける翼のメンバーはさらにラフな服装だからね。
中から人が出て来て
「ようこそいらっしゃいました、レイノルド様、皆さま」
やっぱりお高いのかしら?ついつい庶民な私はそわそわしてしまう。
タツキとサナエは堂々としている。レイキは私と同じだ。そっとレイキの手を握るとレイキも安心したような顔をする。
(場違い感が半端なくてな・・・)
(同じく・・・)
案内された先は個室だった。丸いテーブルが2つある。
それぞれのパーティーごとに分かれて座った。タフはあっちのチームだよ。
レイノルドはこちらの机だ。
着席した所で個室の扉が開く。もうひとり、30代と思われる渋い男性が入ってくる。
おぉー口ひげが似合っていてカッコいい。
「お待たせしました。私はレイノルドの父親でリーベルト商会の会長をしておりますロドリゲスと申します。以後お見知りおきを。
また、この度は我が愚息がご迷惑をおかけしました」
頭を下げた。
レイノルドも立ち上がって頭を下げる。
きっと彼らなりの誠意なんだろう。
「「謝罪は受け取った」」
ガルとタツキが応えた。
「本当にありがとうございます。息子のことも、メリッサとナリッサのことも」
「父上、はい、本当に…」
「出来ることをしたまでだ」
「師匠がいなければ彼らを野営場に置いて町には行けなかったからな」
「それについてですが…」
「ねぇ、座って!お腹空いたー」
私が声を掛けると、みんなが目を見合わせて笑う。
「そうですな!まずは食べましょう」
「食べながらでもいいよ!タフの活躍ならいくらでも話するから」
「はははっ、それはぜひ。では私はこちらにおじゃましましょう」
と言って渋面さんがやって来た!わーい。眼福ー。
タツキに頭を叩かれた。おかんの楽しみを取らないで。
お店の人に始めてと伝えたので、飲み物と前菜が出て来た。私の前にはジュースだ。チラチラとタツキのグラスを見たけど知らん顔された。
飲めるかなぁ?飲んじゃダメ?首を振られた。残念。
「ふふっお嬢さんにはまだ早いですな」
ロドリゲスさんに言われたよ。それぞれに飲み始める。私もジュースをひとくち。うん、美味しい。
前菜にはなんと、鮮魚のカルパッチョ。生魚だよー!
「ぐはっ…やめろ、シエル…」
えへへっ。トロリとした白身の魚はとっても美味しかった。
ヤバいね。渋面さんはにこにこしながら食べている。優しい顔だ。
「先ほども言いかけましたが…鉄拳がいたとは言え、あなた方は登録したての冒険者パーティーでEランクです。何故了承して下さったのですか?」
「ん?野営場に1泊?だってね…お馬さんがいたし」
渋面さんは私の応えに驚いた。
「骨折して歩けない馬など、本来は足手まといです」
「あの馬たちの何かを悟った目が忘れられない。助けたかった」
レイキがそう言った。無口だし無愛想だけど、誰よりも優しい。レイキならきっと見捨てずに何とかするんだろう。それだけの力もある。
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