40.夕食前の取引
12日目
部屋でふわふわのパンを食べ終えてまったり中だ…ん、眠い。ソファでうとうとしていたらサナエが
「ベットで寝たら?」
「んー起きられなくなるから…」
目を擦りながらソファでぐだぐだする。
「おい、せっかくだし町中を散策しようぜ!」
お、いいね。ここにいたら寝そうだ。
「乗った!」
ということで4人でお散歩。ちなみにお宿ではリリ、姫と王子まで同室オッケーなのだ。もうね、タツキとレイキが大喜びで。
だから
「2人と3頭?で寝るの?」
と聞いたらレイキがピシッと固まってた。
「な、な、な、何で…?」
「魔力が混ざってたから」
「ま、混ざって…してないぞ!」
焦ってレイキが言う。ほほぉなるほど?
「何を?何をしてないの?」
レイキが詰まる。
「魔力が混ざる何を?」
ニヤッとして聞けばレイキが真っ赤になる。
ふふっ墓穴を掘ったな?と思ってたらタツキに頭を叩かれた。
「揶揄うな!ったく。分かってて聞いてんだぞ?レイキ。52なんだからな?真に受けるな」
えへへっ、ごめん。レイキが可愛くてね?つい。
さらに真っ赤になるレイキ。
そうそう、タツキもレイキも良く私を叩くんだけどね、不思議と音だけして痛くない。人間ハリセンだね?コツを聞いておこう。
姫たちも連れて町を歩く。まだ夕方には少し早いから人通りもチラホラだ。
商店を見たいけど、ショーウィンドウとかないから入らないと分からなかったりする。
うーん、お金もあるし何か買いたい。買いたい物があるんじゃなくて、買い物がしたいんだ。
「ねぇ、なんか買いたい」
「何かって何だ?」
「何かは何かだよ。とにかく、お金を使いたい!」
「目的も無いのにか?」
「チッチッチ、分かって無いなぁ。現金が手元にある。頑張った。だからご褒美に何か買いたい。何でもいいの、安くてもね!買うって行為がしたい」
「分かるよーそれ。男性には理解出来ないかも。ほら、ウインドウショッピングとか理解出来ないのと同じ」
サナエの援護射撃だ。有り難い。私の発言は説得力が無いからな!
「そんなもんなのか?」
「そうそう」
「あー俺の姉貴もそんな感じだった。とにかくお金を使いたかったとかってブランドのバックとか買ってたな」
「理解できんな…まぁ余裕はあるし、気になった店に入るか?」
「うん。あ、ねぇここ入ろう!」
カラフルな小物のお店だ。
サナエと手を繋いでお店に入る。可愛い!皮小物かな?バックもあるし、木のお皿に皮の取手が付いた物も。これ、ラビとあーちゃんのご飯入れにいいかも。
取手はたくさんの色がある。
「ねぇ、これ。従魔のご飯入れにどう?」
タツキとレイキが即座に反応する。いつも土で作った即席の器だったからね。
「おっ、いいな!」
「可愛い。姫と王子の色もある」
なにかね?推しのカラーかね?
「姫はピンクで王子は水色だ!」
まさかの推しカラーがあったよ。
「ならリリは赤だな!」
それなら私は
「ラビは金色で、あーちゃんは銀色」
サナエも
「じゃあルーは白にする」
いいね、こういう買い物がしたいのだ。1個1000ガロン。少しお高めだけど問題ない。他にも首輪を買い足したり、ラビとあーちゃんにリボンを買ったりした。
「そろそろ帰るか?夕食の時間は聞いてないが、迎えに来るって言ってたしな」
「「はーい」」
可愛い小物ってテンション上がるよね?
ご機嫌で宿に戻った。
するとそこにはライルが待っていた。まだ5時前だけど、早いね?
「夕食の前に少しお話がしたくて。お部屋に伺ってもよろしいですか?」
タツキとサナエにリーブラン商会の人だと伝えるとタツキが
「どんな要件だ?」
「商業ギルド、と言えば分かりますか?」
あ、あー石けんとかかな?タツキと顔を見合わせて頷く。
「どうぞ」
ライルと部屋に入る。部屋に備え付けの紅茶を入れてみんなの前に置く。
「シエルどの、ありがとうございます。実は、商業ギルドから非常に質の高い石けんと柔らかな布の手拭きを仕入れたと連絡がありまして…確認した所、大変質が良かった。仕入れ先はもちろん、明かしませんでしたが。最近、この町に来たのはあなた方だけだ。しかも、冒険者ギルドの後に商業ギルドと農業ギルドに用事があると言っていたと聞きました。それであなた様方と当たりを付けたのです」
ライルはそこまで話をして紅茶を飲む。
ソファに座ったライルの正面にタツキ、隣が私は。サナエとレイキはお誕生日席だ。
まぁね、分かるよね。今はここまで来る人は少ないし。消去法で簡単に分かる。商業ギルドも分かってて話を振ったんだろうな。色々と情報は掴んでるだろうし。
タツキもそう思ったのか
「そうか…」
と簡潔に答えた。
「そこで相談なのです。あの石けんと布。我々の商会に卸して貰えませんか?」
(ねぇ、ギルド通さなくていいの?私たちは商売の登録とかしてないけど)
(どうだろうな?素直に聞くか?)
(シエル、魔法通信で調べろ)
あ、そうだった。どうなのかな?
(商業ギルドに登録していれば、商店に直接卸すことが出来る。ただし、1回の取引金額が30万を超えると商業ギルドの仲介が必要)
(直接取引可能だって。ただ、金額が30万超えるとギルドの仲介がいる)
「金額によってはギルドの仲介がいるのでは?」
「相手と話し合いが出来たら、必要に応じて立ち会うと」
(やらせか?やらせなのか?しかも立ち会うって30万超えだよ?)
(物資が色々と足りてないのもあるんだろうな)
「こちらにも思う所がある。数は出せない」
「もちろん、無理のない範囲で。あれは確実に売れます」
「その、俺たちの事は黙ってて貰えるのか?目立ちたくないんだ」
「もちろんです!可愛いらしいお嬢様がいるのですから、当然ですよ」
可愛らしいだって!目で訴えたらなぜかタツキにため息をつかれた。なんで?
「分かりました。シエル?」
「はーい」
私は牛さん石けんとウタマル石けんを取り出す。
「あぁ、やはり…。シエルどの。まだ隠してますね?」
ギクッ鋭い。実は石けん推しでね、香り付きのも買ってみたんだよ。レックス石けん。シャンプーとかも出てる有名なシリーズの石けん。
こっちはお高くて、1個100ガロン。牛さん石けんの約3倍、ウタマル石けんの2倍する。
色気がでてね?高く売れるかなって。
出す?出しちゃう?いつ出すの。今でしょ!1人ボケ突っ込みをしてたらタツキに叩かれた。
「実は、新作で…でもお高いの」
「拝見します」
こちらはさらに上質な綿の白いレース付きの袋に入れた。高いよ?さぁおいくら万円?
「これは…なんと芳しい香り。この白さといい、まるでシエル殿のような…」
ん?私は石けんじゃないけど?そんなに白くないし。
「これは…1個1000ガロンで仕入れたいですね」
えっ、そんなに?綿の袋を入れても原価は170円、そんなもんかな?
黙った私を見て
「くっ、では1個1200ガロン。これが限界です」
頭を下げるライル。
「それで!」
食い気味に答えた私にタツキがジトっとした目を向けるが気にしない。
お金は大事。
「数は出せないぞ?」
「もちろん、承知の上です。どれくらい出せますか?」
タツキを見る。丸投げだ。
「20個」
「う、もう少し…せめて50」
「30個」
「よ、40…」
最終的には35個になった。中途半端だな。
「用意するから、夕食のときに渡すのでいいかな?」
「もちろんです。で、その…白いのと緑のも欲しいのですが」
またタツキをみる。呆れた目で見られたけどね、経済には疎いのだよ。
「そちらはすでに商業ギルドに卸しているからやはり数は出せない。各50だ」
「もう少しなんとか?王都からの物資がしばらくは途絶えます。ここからミドルナリス、サウナリスの店へと持っていくのです。なんとかもう少しお願いできませんか?」
痛いところを付いてくるな。さすが商人。
タツキも渋い顔をしながらも必要性は理解しているのだろう。考えている。
「それならば各100卸そう、明日になる」
「もちろん構いません!ありがとうございます」
笑顔のライルだ。でもまだ何か…そうか、ハンカチタオルだな。
ギルドに卸したのは無地のお買い得品。
でもね、エマゾンには某有名どころの今春タオル、そのあまり糸で作ったランダム柄のカラフルなハンカチタオルが売っていたのだよ。
しかもお値段は10枚で2000円。お安い。
高級ブランドのものは1枚1000円以上するからね?
今春タオルのガチもんだとやっぱり1枚800円とかする。
しかもランダムとはいえとってもカラフル。こっちのは地味な単色が多いからね!
売れると思うんだ。手触りも各段に上だし。
「あの柔らかい布、もっと違う種類もあるのではありませんか?」
にっこりとほほ笑むライル。スマイル0円だね?
「ぐほっ…」
レイキが噴出した。サナエもぽよよんとしている。眼福だ!
タツキに叩かれた。さーせん。
「実は…これが私の一押しで、でもお高いの」
そっとカバンから今春タオルのお徳用ハンカチタオルを一つ取り出す。
ライルの目が釘付けだ。
「そ、それは…なんと美しい。手にとってもよろしいですか?」
ライルは嵌めていた手袋を片方取るとそっと表面を撫でる。
あ、なんかのスイッチ入った?目が恍惚としている。
どうしよう、ちょっとぞわっとした。
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