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星なし転移者と仲間たち〜逃亡中〜  作者: 綾瀬 律
異世界転移?

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39.ライルの回想

1224後書き追記しました!

 私はノースナリスの町の大店、リーブラン商会に勤めている。王都やミドルナリス、サウナリスにも店を出している。外国とも取引も行う店だ。

 最近、レイノルド坊ちゃんがやっと商品の輸送を1人で任される事になった。

 それがよりによって魔獣の横断で定期馬車が運行停止と重なるなんて、不運だ。街道の安全性が著しく下がるのだ。

 商人の行き来も減り、ノースナリスも物資不足になった。王都からしか手に入らない物もある。

 旦那様もレイノルド坊ちゃんに早く荷物を載せて戻るよう指示をし、護衛を雇って出発した。


 急いだ事もあり、高ランクの護衛は雇えなかったようだ。仕方なくギルド職員お勧めのCランクパーティーに依頼したが、魔獣の横断で負傷者が出て、その後の雷でさらに負傷者が出た。お勧めでは無かったのか?

 大雨の中、たまたま居合わせた高ランクの冒険者パーティーに依頼をするも断られる。

 護衛任務中との事で、寄生されても困ると。それもそうだ。依頼人は高ランクの護衛をわざわざ雇ったのだから。

 仕方なく、そのまま進むも速度は出ず。夜には魔獣の襲撃でやむを得ず逃走。護衛が足止めしていると思ったが、護衛は逃げた。結果、野営場にトレインで魔獣を引き連れる事態に。


 先に野営していたパーティーのメンバーが魔獣は討伐したものの、馬たちは負傷。なんとか積荷は守れたものの、馬が使えない。

 事情を話して、ノースナリスまで荷馬車を運んでもらえるよう交渉した。

 高ランクパーティーの依頼人も仕方ないと頷いてくれ、この町に帰って来る事になった。

 その報告は本来の護衛であるCランクパーティーが先にこの町に辿り着いて、冒険者ギルドに知らせて分かった。

 彼らは護衛依頼の失敗に加え、魔獣の引き連れにより厳しいペナルティが課されるだろう。


 私は他の従業員と町の門の外でレイノルド坊ちゃんを待った。午後3時ごろにようやくレイノルド坊ちゃんの馬車が見えた。慌てて馬を連れて駆けつける。

 帰って来たレイノルド坊ちゃんはもう見るに耐えないほど憔悴していた。見通しの甘さ、迷惑を掛けた冒険者パーティー、そして何より小さな頃から手塩にかけて育てたメリッサとナリッサにケガをさせ、置いて来た事。


 旦那様もお叱りになったが、今回はあまりにもレイノルド様が不運だった。だから迷惑を掛けた冒険者パーティーには手厚い補償を約束したのだった。

 さらに聞けば、レイノルド坊ちゃんに付いて来た冒険者パーティーは、依頼人を野営場に残して来たという。まだ冒険者に登録したばかりのEランク冒険者で、女性が2人もいるパーティーだと言う。

 野営場は比較的安全だが、オーククラスの魔獣には結界石は効かない。

 しかも護衛のパーティー全員がレイノルド坊ちゃんに付いて来たと言うではないか。

 たまたま居合わせた冒険者1人にEランクのパーティーを託して。それを聞いて旦那様も青ざめた。


 荷馬車を運んでくれたBランクの冒険者パーティーが無事に野営場に戻り、本来の依頼人とこの町まで辿り着くのを祈るような気持ちで待った。

 冒険者ギルドから無事に辿り着いたと連絡があった時には、レイノルド坊ちゃんが崩れ落ちた。

 心配だったのだろう。

 さらに驚きの報告があった。メリッサとナリッサも連れて来たと。

 あり得ない、骨折していたと聞いた。横倒しになったのなら、内臓もやられている。ここまで辿り着けるはずがない。


 ひとまず、手配した彼らの宿泊用の宿で出迎える為に、レイノルド坊ちゃんと向かった。そこにやって来たのはレイノルド坊ちゃんに付いて来た冒険者パーティーの空かける翼と、この町唯一のSランク冒険者の鉄拳、そして護衛依頼を出していたパーティーと思われる4人だ。

 Eランクパーティーの面々はフードを被っていたが、女性1人と少女1人にまだ若い男性2人だ。

 迎え入れる前にレイノルド坊ちゃんはメリッサとナリッサに飛びついた。

 私は代わりにお詫びを伝える。まだ若いEランク冒険者パーティーなら怒鳴るか、たかられるかと警戒した。しかし、全くの無反応だった。

 レイノルド坊ちゃんを見て何やら目を潤ませている?


 フードを被った小柄な少女は男性に頭を抱えられ、もう1人のフードの女性と男性に背中を撫でられ頭も撫でられていた。

 怒鳴られる事もたかられる事も無かった。私は肩透かしをくらった気がした。

 そのまま彼らは宿に入って行った。

 私とレイノルド坊ちゃんはメリッサとナリッサを連れて店に戻り、私はまた店に立った。


 しばらくするとダーンと勢い良く店の扉が開いた。

「頼もうー」

 はっ?慌てて入り口に向かうとフードの少女、この子はさっきの?

「レイノルドに会いたいの!シエル…お馬さん」

「おい、省略しすぎだ!」

 連れの若い男性に頭を叩かれいる。

「だってふわふわパンの危機だし、お馬さん繋がりかと…」


 奥から騒ぎを聞きつけてレイノルド坊ちゃんが出て来た。

「あ、お願いがあるの!パン買ってー」

 驚いているレイノルド坊ちゃん。もちろん私もだ。展開が早過ぎて着いていけない。

「あ、君はメリッサとナリッサと連れて来てくれた…」

「シエルだよ!パンがね…」

「こら、いい加減にしろ。伝わらないだろ」

 レイノルド坊ちゃんは少女の勢いに目を白黒させて驚きながらも、若い男性の説明を聞いている。


 そして要約して聞く。

「つまり、その君たちが推しているパン屋を救うために代わりに買って欲しいと」

 つまり、我々に金を払えということか。私は憮然とした。

「そうなの、えっとお代はもちろん、お駄賃も出すからお願い!私たち、馬友でしょ?」

 えっ、たかりじゃない?しかも大店の跡取り息子にお駄賃?はっ…?身なりを見るに余裕がありそうには見えないがお駄賃…?

「う、馬友かは分からないけど、そういう事なら。ライル、買って来てくれるか?」


 レイノルド坊ちゃんが私に言われた。

「承知しました、坊ちゃん。案内願えるか?」

「うん、屋台に近づく前に教える。公園に行けば分かるから。レイノルド、ありがとう!」

「急に押しかけて申し訳ない…ライルどの、よろしく頼む。俺はレイキ、こっちはシエルだ」

「畏まりました」

 彼らに慇懃に礼をする。

「早く!」

 私の手を取って少女は店を出る。連れの男性はため息をついて後ろから来る。その少女の手は柔らかくて温かかった。


「あなた様がメリッサとナリッサを?」

 私が聞けば

「ん?お馬さんの名前?私は貰い受けて、魔術師のメッシーニが頑張った。私はほんの少し手伝っただけ。だって死ぬのが分かってて主人を助ける為に爆走して、置いてかれるのが分かっても主人の事ばかり考えてた。大切にされてなければ、そんな風に思わない。最後までもっと役に立ちたかったって思ってたから」

 馬の言葉が分かるのか?なぜ…と思ったが、この子ならあるいは、と思えた。


「そうでしたか…ありがとうございます」

「だから私はほとんど何もしてないよ!頑張ったのはあの子たち。だからいっぱい褒めてあげて!」

「はい、そのように伝えましょう」

「違うよ!ライルが、だよ。関わりがなければお礼なんて言わない。ライルも大切にしてたんでしよ?だからライルが褒めてあげて!」

 私の話から見抜いたと?レイノルド坊ちゃんと共にお世話したメリッサとナリッサだ。愛おしい気持ちはレイノルド坊ちゃんにも負けない。それを見抜いて?

 私は驚いたあとで作った笑顔じゃない本物の笑顔で笑った。

「そう致しましょう…」


 公園に着くと、

「ライル、あそこの赤いテントのパン屋さん。これお金ね!お願いだよ?全部だからね!」 

 ひそひそ声で私に囁く少女。

「いやお金は…」

「早く!」

 私の手に5000ガロンのお金を押し付けて送り出された。背中に痛いほど視線を感じる。チラッと振り返れば男性と木の陰から見守っている。いや、全く隠れてないが?

 私は屋台に到達した。まだかなり残っている。確かにふわふわっぽいか?

「いらっしゃいませ…」

 オドオドと店主が言う。

「す、少し高いけどふわふわなんです!」

 隣の女性が必死に言う。

「残り全て買う」

 一瞬、固まってから

「あ、ありがとうございます!」


 全部で38個、3800ガロンだった。支払って受け取る。持った感じも確かにふわふわだ。

 木の陰にいる2人の所に戻ると手に手を取り合って緊張した面持ちで私を見た。

「買えましたよ。完売です。泣いてました」

 と言えば

「良かったー、ライルありがとう!」

「良かったらぜひ我々が買いたいです」

 お金も払うつもりでそう言えば

「なら持って帰って!お駄賃だよ」

「えっ…」

 お駄賃…はい?

「いいよ、仕事中に連れ出しちゃったし。私のポケットマネーだから大丈夫。レイノルドにも渡してね!ありがとうー」

 私が、えっとかはっとか言って固まっている間に、手を振って公園を後にしていた。

 やり切った風に2人で手を繋いで。


 私は手に持ったパンとお釣りを見る。そして笑いが込み上げて来た。なんと愉快なんだろうか?怒る?たかる?とんでもない!

 むしろお駄賃だとパンもお釣りすら受け取らず、値段も聞かずに去って行った。

 なんと潔いのだろうか。晴れ晴れとした気持ちで笑った。

 そして、それなりにポーカーフェイスに自信があったんだけどな、と思った。

 私もまだまだ、だな。帰ったらレイノルド坊ちゃんにこの話をして、メリッサとナリッサをたくさん褒めよう。私は温かいパンを抱きしめるようにして店に戻った。

 あの少女、シエルどの…不思議な子だ。私の手を握った小さな柔らかい手をふと思った。




お勧めのCランクパーティーは貴族の姉弟で構成される面々

お勧めしたのはもちろん、インクリス…


※読んでくださる皆さんにお願い※


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