38.リーブラン商店
12日目
「だって、夢のスイートルームだよ?」
ソファに飛び乗って寝室に入ってベットにダイブする。あーちゃんとラビも一緒だ。
もふもふまふまふしてたのをタツキは呆れて、サナエは微笑みながら、レイキはワキワキして見ていた。
そしてついに我慢出来なくなったレイキが姫と王子とベットにダイブして来た。
私はレイキと一緒に姫と王子を撫でて顔を見合わせて笑い合った。
ひとしきり笑うと
「ふーここまで来たな…」
しみじみと言う。
「うん、ほんの12日前なんだね…もしもーし、聞こえますかー?」
「あぁ、そんなだったな」
レイキはこちらを見て
「ほんと、お前がいて良かったよ」
「私も…⭐︎無し同盟だもんね!」
「あぁ…1人なら王宮すら出られなかった」
「レイキもいたし、サナエもタツキもいたからね。ここまでこれたよ」
「そうだな…不思議な縁だよな」
「ねー、まさか息子や娘くらいの年の子とこうして旅するなんてねぇ」
「お前、急にババくさくなるよな」
「そういうお年頃だからねー、ついおかん目線」
「の割には子供っぽいよな。地なのか?」
「そうだね、元からこんな感じ。でも年齢と共に落ち着いてた分がリセットされて、14に引き摺られてる」
「そういう事にしとく」
「へいへい」
「おーい、紅茶入ったぞー」
タツキだ!私たちが黄昏てる間に紅茶を入れてくれたらしい。
「「はーい」」
起き上がってあーちゃんとラビを抱いて居間に行く。
さすがお高い部屋にだけあって、紅茶も美味しかったよ。
「腹減った…」
「もうお昼過ぎてるもんね、どうする?夕食はきっとご馳走だよ?」
「町も見たいし、屋台か何かで軽食を摘むか?」
「「うん!」」
片付けをして部屋を出る。
受付で町のおよその配置を聞いて、屋台が出ているという公園に向かう。
宿から歩いて10分くらいの所に公園があった。もちろん、タツキと手を繋いでいる。
ギルマスに、気を付けろと態々言われたから。顔を見せてないのにね?
お昼を過ぎてるけど、食べ物の屋台はいくつか出ていた。定番の串焼きにパン屋、スープ屋だ。
串焼きは前の失敗があるから、柔らかい肉をチョイス。100ガロンと。
パン屋がある。堅パンとトルティーヤもどき以外を初めて見た。お値段は1個100ガロンとお高め。だって堅パンは両手に抱える程の丸型で1個100ガロン。このパンは良くある小ぶりなパン。
鑑定さんよろしく!
(柔らかいパン 独自で開発した酵母を使用)
くっ、ついに来たーーー!いや、パンはエオンで買えるよ?確かに。でもさ、焼きたてとか無理だからね。
そしてチラッとレイキを見る。同じくパンを凝視している!
目が合った。頷き合う。今、私たちは志を同じくする同志だ、いざ行かん!
ペシっ
何故かタツキに頭を叩かれた。
レイキと手を繋いでパンの屋台に到達!する前に
「まだ売ってんのか?いい加減諦めろよ!売れてねーだろ?約束、覚えてるよな?売り切れなかったら2度とここに出すなよー」
「ふん、どうせ売れねーよ。高くて腹に堪らないパンなんてさ!」
ガンを飛ばして机を蹴飛ばし、チンピラ風情が去って行った。
店主はまだ若い男性と女性。夫婦かな?手を取り合って涙目で震えている。
よし、なら買うぞ!と思ったらサナエとタツキが店に突撃して行った。
その後、公園の一角で。
「ねぇ?何考えてるの?加減って言葉知ってる?お金はね、みんなのものなんだよ?」
「そうだぞ!総意なく勝手するのはおかしい。俺たちはパーティーだろ?」
「「ごめんなさい」」
はぁ、もう。タツキとサナエの手にはたくさんのふわふわパンがある。
「「何で全部買わなかった!!」」
「「…はっ?」」
ポカンと私たちを見上げるタツキとサナエ。
「俺たちのふわふわパンが無くなるかも知れないんだぞ?」
「緊急事態なのよ?」
「「えっ?そっち…」」
「「どうして買い占めなかったの!」」
「「ごめんなさい?」」
「レイキ、どうしよう?今から行くのも不自然だよね?」
「気を遣わせるな…」
「あ、レイノルドにお願いしよう!後で買い取るからって」
「おう、行くぞ!」
レイキと頷き合って急いでリーブラン商会に向かう。
お、大きなお店だ…。ドキドキして来た!
「大丈夫か?俺が声を掛けて…おい!」
レイキがなんか言ってたけど扉を開けると
「頼もうー!」
隣でレイキがため息をついたけど、気にしてられない!私たちのふわふわパンを死守する為だ。
パリッとしたスーツを着こなした男性がやって来る。
「レイノルドに会いたいの!シエル…お馬さん」
「おい、省略しすぎだ!」
レイキに頭を叩かれた。
「だってふわふわパンの危機だし、お馬さん繋がりかと…」
奥から騒ぎを聞きつけてレイノルド本人が出て来た。
「あ、お願いがあるの!パン買ってー」
驚いているレイノルド。
「あ、君はメリッサとナリッサと連れて来てくれた…」
「シエルだよ!パンがね…」
「こら、いい加減にしろ。伝わらないだろ」
レイノルドは私の勢いに目を白黒させて驚きながらも、レイキの説明を聞いてくれる。
「つまり、その君たちが推しているパン屋を救うために代わりに買って欲しいと」
「そうなの、えっとお代はもちろん、お駄賃も出すからお願い!私たち、馬友でしょ?」
「う、馬友かは分からないけど、そういう事なら。ライル、買って来てくれるか?」
「承知しました、坊ちゃん。案内願えるか?」
「うん、屋台に近づく前にあそこだよって教える。私たちは面が割れてるから!公園に行けば分かるよ。レイノルド、ありがとう!」
「急に押しかけて申し訳ない…ライルどの、よろしく頼む。俺はレイキ、こっちはシエルだ」
「畏まりました」
慇懃に礼をするライル。
「早く!」
ライルの手を取って店を出る。レイキはため息をついて後ろから来る。
「あなた様がメリッサとナリッサを?」
「ん?お馬さんの名前?私は貰い受けて、魔術師のメッシーニが頑張った。私はほんの少し手伝っただけ。だって死ぬのが分かってて主人を助ける為に爆走して、置いてかれるのが分かっても主人の事ばかり考えてた。大切にされてなければ、そんな風に思わない。最後までもっと役に立ちたかったって思ってたから」
「そうでしたか…ありがとうございます」
「だから私はほとんど何もしてないよ!頑張ったのはあの子たち。だからいっぱい褒めてあげて!」
「はい、そのように伝えましょう」
「違うよ!ライルが、だよ。関わりがなければお礼なんて言わない。ライルも大切にしてたんでしよ?だからライルが褒めてあげて!」
驚いたあとでライルは作った笑顔じゃない本物の笑顔で笑った。
「そう致しましょう…」
公園に着いた。タツキとサナエには先に宿に戻るよう伝えてある。
「ライル、あそこの赤いテントのパン屋さん。これお金ね!お願いだよ?全部だからね!」
「いやお金は…」
「早く!」
ライルの手に5000ガロンのお金を押し付けて送り出した。レイキと木の陰から見守る。
ライルが屋台に到達した。何か話をしてる、パンは買えたの?ドキドキする。ミッションは成功か、どうなんだ。レイキと手に手を取り合って待つ。
戻って来た。ドキドキ…。
「買えましたよ。完売です。泣いてました」
「良かったー、ライルありがとう!」
「良かったらぜひ我々が買いたいです」
「なら持って帰って!お駄賃だよ」
「えっ…」
「いいよ、仕事中に連れ出しちゃったし」
「私のポケットマネーだから大丈夫。レイノルドにも渡してね!ありがとうー」
ライルはえっとかはっとか言ってたけど問題ない。手を振って公園を後にする。
やり切った。めでたしめでたし。レイキと宿の方向に歩いて行く。
「いいのか?」
「ん?すぐにいなくなる私たちより、この町の人の方がいいでしょ?パン屋を続けるなら」
「それもそうか…」
なぜかレイキに握った手をブンブン振られた。楽しそうで何より?
宿に戻ってタツキとサナエに報告。2人とも涙ぐんでたよ!
なのになぜかタツキに
「だからお前は、行動する前に考えろ!言葉を選べ!」
サナエにも
「メッ」
可愛いだけだよ…ぽよよんだし?
サナエが真っ赤になった。
「どこのセクハラ親父だよ…」
レイキの突っ込みは相変わらずキレッキレだね!サムズアップしたら頭を叩かれた。なぜだ…。
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