35.トレインはルール違反
11日目
目が覚めた。頭が重い…あぁ、そうか。昨日の夜中にトレイン、いわゆる魔獣のなすり付けが合ったんだ。野営してて襲われて、なりふり構わず逃げて。って感じかな?護衛は何をしてたんだ?迷惑な。
商人は護衛を置いて夜に馬車を走らせて、馬はここに辿りていて力尽きて。倒れて骨折。ここまで頑張って走ったんだね。それなのに、脚が折れたら歩けない。馬の未来に待つのは死だけだ。
はぁ、起きるか。朝ごはんはどうするかな?
うん、作ろう。こんな時は料理だ!
うーん、どうしようかなぁ。何にしよう。あ、アレにするか。
寝袋から出てテントから這い出る。隣のテントからタツキも出て来た。
眠そうだ。
「おはよう」
「おはよう…眠いな」
「途中で起こされたからね…」
「あぁ」
「朝食、作るから手伝って!」
「おう!」
テーブルを出して小麦粉と卵と砂糖に油を入れる。混ぜるのはタツキだ。
私はハムとレタスとチーズ、果物を取り出す。てきとうな大きさにカットする。
「混ざったぞ」
「ありがとう」
フライパンを熱してバターを溶かす。お玉いっぱい分を入れて薄く伸ばす。周りが固まったらひっくり返す。
それをドンドン作って行く。途中から起きて来たレイキが変わってくれる。
サナエ?は料理はまったくダメ。だから料理自体は任せられない。
なので、トッピングを任せた。こういうのは得意みたい。私は苦手だから任せた。
最後はくるくる巻いて出来上がり。
私はトマト味のスープ。玉ねぎの甘味が引き立つよ。お芋も入ってるし。
出来上がった。なんか知らない視線を感じるけど無視だよー。
テーブルに並べて、手を合わせて
「いただきます!」
「「「「いただきます!」」」」
パクンッと。うん、美味しいね。甘めの生地に酸味のあるトマト。そしてもう片方はフルーツ載せ。デザート感覚で食べられる。
スープも甘いクレープの後味を緩和してくれる。
ゴクリッ
どこからか音がしたが聞こえなーい。
「ふ、少しだけでも分けて貰えないか?」
却下だ!
「魔獣を押し付けて安眠妨害するような人に分ける分は無いな」
「うぐっ、あ、あれは不可抗力だ」
「なら同じことされても平気なんだな?心が広いことだ。俺はそんな心は待ち合わせて無い」
「…」
タツキがやり込めた。拍手ー!やれば出来る子だね。
(ぐはっ…子って)
レイキは朝から絶好調だね!
食べ終わってテントを片付ける時に、例の商人がガルに話しかけている。
ガルは渋い顔をしつつも腕を組んで考えている。
そしてパーティーとタフと話をしてからこちらにタフと来る。
「なぁ、アイツからの提案なんだが…馬車を押しながらノースナリスまで護衛して欲しいと」
「馬は?」
「捨てて行くそうだ。脚が折れた馬は連れて行けない」
「俺たちは任務中だ、しかしノースナリスに卸す商品はあの町が待っている。知らん顔はしにくい」
それもそうかぁ。
「ここからなら今日中にはノースナリスに行って、ここに戻れる。だから、1日、待ってて欲しい」
「ここでか?」
「あぁ、タフはここに残る。馬車を動かすならパーティー全員が参加しないと難しい」
タツキをみる。肩をすくめた。これは仕方ないって事だろうなぁ。私もこれはもう仕方ない。でも、補償は必要。どうするんだろ?
「あちらから提案が合った。今回の護衛代金の半分はあちらが持つ。代わりに1日、ここで待機して欲しいとさ」
タフを見る。
「まぁそこまで言うなら妥協点かな。今日は天気もそこそこだし」
「ノースナリスでの宿泊代もあちらもちだとさ」
「仕方ない」
「済まないな、物資を運ぶ商人は蔑ろに出来ないんだ」
「ノースナリスにお店があるの?」
「あぁ、大店だ」
「なら何か珍しい食材とか教えて貰いたい!」
「伝えておこう!なら俺たちはすぐに出る」
ふう、反省してるなら仕方ないか。
「馬はここに?」
「そうだな」
「わたしが貰ってもいい?」
「大丈夫だろ?聞きに行くか?」
「うん!」
タツキとその商人の所に行く。
ガルが
「了解を貰ったぞ!ノースナリスに着いたら、店で珍しい食材を教えてほしいだってさ」
「申し訳ない、迷惑をかけた。それくらいならお安い御用だ」
「後、馬な…このお嬢ちゃんが欲しいってさ」
「脚を怪我した馬なのに?もちろん、構わない。無理をさせたからな。安らかに眠って欲しい」
「なら貰うよ!じゃあ代わりにこれ!お昼に食べて」
ビーフジャーキーとクレープサンドだ。
驚いたその人は
「あ、ありがとう。俺はレイナルドだ。ありがとう」
涙目でお礼を言われた。
ちょっと、かなり残念な人だけど。あの馬たちを気遣う様子は本物だ。思い入れがあるんだろう。
だから、ね。無事に着けるように。
レイナルドさんは歩きで、ほかのメンバーは馬車を引く人と押す人に分かれてノースナリスに向かって歩いて行った。その歩みはゆっくりだけど、確実に進んで行った。
彼らが見えなくなったのを確認すると、なんとか立っていた馬たちがドウと倒れた。私は馬たちに向かって魔法を放つ。脚よ、治れー!ぽわん、と光った。それは脚だけじゃなく、全身。満身創痍だったんだろう。本当に良く頑張ったね…。
アレって顔した馬たちは脚を見てトントンと他に脚を付けてから立ち上がった。足踏みする。
ヒヒヒーーーーン!
ちゃんと音を結界で覆ったよ?立ち去った彼らには聞こえないように。
あのレイノルドさんは少し自分で頑張らないとね!
馬たちに頭突きをされてヨロけた私をタツキが呆れながら支えてくれる。
馬のまん丸な目は輝いている。あの全てを諦めた目じゃ無い。良かった。またあの人の為に走れるよ?
だって聞こえたから。
あの人の為に、もう走れないって寂しそうな言葉が。
だからね、私に出来ることは少ないけど。
でも、明日は町まで乗せてね?
ヒヒーーン。却下だだって、残念。楽しようとしたのに。
その日は剣やタフに教えてもらったり、食材の仕込みをして過ごした。
途中、消えたと思ったタフが大きな鳥を取ってきたり、ゴブリンが襲って来て首から即、氷柱を生やしたり、石窯ピザをレイキが作ったり。
平和な1日だったよ。
そして陽が沈む頃に空かける翼が戻って来た。だいぶお疲れのようだ。
「戻ったな!」
「あぁ師匠…疲れた」
「無事に町には着けたんだな?」
「あぁ、なんとかな。シエル、飯ありがとうな。アレがあるから頑張れた」
「そう、良かった。夕食も期待してよ!」
「あぁ、腹減ったー」
「すぐ用意するから、体拭いてきて」
埃っぽいからね!
さてと、きょうは時間があったからね。ふふふっガツンと行くよ!
仕込みは終わってるからね。深めのフライパンに油を投入。温めて…いいかな?投入ージュワーっといい音がする。
タツキがそばでソワソワ。レイキも近くを行ったり来たり。サナエは伸び上がって私の手元を覗き込む。
背後から視線が…振り返らないぞ!
ドンドン揚げていく。よし、揚がった。
お皿に盛り付けて、ソース(エオンで購入)をかける。米が食べたい!誘惑に勝てず、エオンで購入。
今日はトンカツだー!
「出来たよー」
「「おぉ!」」
「待ってたぞー!」
「うおー」
野太い声が響く。
テーブルに置いて手を合わせて
「いただきます!」
「「「いただきます!」」」
サクッと、おぉー。
「美味しい!」
「うおー来たー!」
「カツうめー」
「美味しい…衣がサクサク」
ふふふっ大好評だね、オークカツ。うまかろう。あー肉汁が染み出してきて堪らないな!
はふっ、あつっ…ふうふう。はぁー美味しかった。
みんなも満足かな?
ガルなんかまだ食べ足りないのか、お皿を悲しそうに眺めてるよ、ふふっ。気に入って貰えて良かった。
「「ご馳走様様でしたー」」
ちなみに白ご飯はみんなお初だろうからナイフとフォークで。私たちはもちろんお箸。
「変わった食感だが、この肉に合うな」
「あぁ噛んでると甘味がでてくるな。不思議だ」
好評だったよ。
こっちのメンバーは涙ぐんでた。こっちに来て、少し食べてたけど炊き立てのお米はまた格別だからね。
みんなで片付けをして食事は終わり。
各自テントへ。夜番の彼らは順番に焚き火をたいて警戒に当たる。
そして私たちは恒例のスイーツタイム。
いそいそとお茶を入れると、取り出したのはアイス最中。丸いやつね!
そしてもちろんお供は緑茶。
はふっん…もぐもぐ。うん、美味しいなぁ。懐かしい味にほろっとしそうになった。
みんなも無言で食べてる。
「はぁー美味かった」
「冷たい最中とお茶の組み合わせが最高だな」
「うん美味しかった」
「お米、食べられたね」
「「あぁ…」」
「…寝るか?今日はまったりだったけどな、もう習慣だな」
「そうだね、おやすみ!」
「おやすみ」
こうして平和な移動のない1日が終わった。明日はいよいよノースナリスだ!
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