34.雨の中で
8日目から10日目
凄いなぁ、と思っていたら村に着いた。ジルが先行していたらしく、すぐに船着場へ向かうと、船は用意されていた。
すぐに分乗して船が出る。
船頭さんに
「食料とか足りてないものある?」
船頭さんは、私をなぜか二度見してから
「野菜も肉も、行商が来なくてな…」
「ガルー、支払いは食料でもいい?」
あちらの船頭さんが
「その方が有り難え!」
かなり水位が高くて流れも早い中、見事な捌きで対岸に渡れた。
私は降りる前に船にオークの肉10体分とこの間、商人から安く仕入れた野菜を乗せる。
もう一つの船には牛乳と卵とやはりオークの肉。
調味料も塩とコショウを付けた。
こんな危険な中、船を出してくれたんだ。出せるだけ出そう。そうだ、アレも!
「これね、凄い石けんなの。後こっちは携帯食。おじさんたちありがとう!気を付けて帰ってね!」
おじさんたちは石けんとビーフジャーキーを見て泣き笑いでありがとよ!と言うと華麗な船捌きで去って行った。
私は彼らが無事に対岸に戻れるよう結界をして送り出した。
「進むぞ!」
川からなるべく離れるように進んで行った。
あの後、川は決壊した。近くの村は被害を受けた。ただ、ある村だけは野菜や肉などが豊富にあったお陰で食料に困らず、犠牲者はゼロだった。
さらに泥に塗れた服をみどり色の石けんで洗うと新品みたいにきれいになったとかならなかったとか。
なんとか対岸まで渡れたが、雨が酷くなってきた。ひとまず野営場まで進んでテントを張って休憩。
なかなか止まないな。
ん?ガヤガヤと音がする。別の人たち?
ガルの話し声が聞こえる。何やら話をしていたけど
「ダメだ!俺は別の任務中だ」
ガルの怒鳴り声が聞こえた。ひとまず雨を避けるためにテントに入ったから、パーティーのみんなで集まっていた。
「何だろうな?」
「誰か他の人が来たみたいだけど」
「あの感じだと、同行して欲しいって言われたのでは?」
「あーかもな。自分たちの護衛はいるんだろ?」
「この雨だし、高ランクの護衛が良かったとか?」
「さあな…」
「おい、いいか?雨はしばらく続く。先に進むぞ!」
なんだかぷりぷりしてる?まぁ別に構わない。ローブはゴアテックス仕様にレイキが変えてくれたから。雨は避けるけど湿度は抜ける。最高の雨具だ。ブーツにも雨除けの仕様を付けてくれてる。
従魔たちは魔力で雨を弾くことが出来るらしい。だからリリも姫も王子も全く濡れてない。
あーちゃん?私が抱っこだよ。ラビ?私のフードの中だよ?だってね…うるうるした目で見られたから。
タフが近づいて来た。
「さっきの何?ガルが怒鳴ってたけど」
「あぁ、王都でも有名な商店の息子だな。王都からノースナリスに向かう途中で魔獣の横断に当たったらしい。小規模だったが、護衛が1人負傷。で、続く大雨と雷に合って、護衛がさらに負傷。急いでたからCランクに依頼を出したらしい。ガルたちがBランクパーティーと知って同行しようとしたんだ。金は払うからってな。倍払うから乗り換えてくれって。それは無いよな」
「酷いね、良くあるの?」
「なくはない。しかも、その提案に乗る冒険者パーティーも残念ながらいる」
「そんな」
「残念ながら、な」
「断ったんだよね?」
「もちろんだ!俺の時とは訳が違う」
「何も無いといいけど」
それにはタフは答えなかった。多分、その商人の行く末はあまり良く無いんだろう。安全はプライスレスだよ…焦っちゃダメだ。
雨の中進み、何とか野営場に辿り着いた。
そこでテントを張って休む。今日は料理が出来ないからね。ガルたちには堅パンとハムやレタス、トマトを乗せたサンドイッチとカップにコンソメの顆粒とベーコン、トマトとキャベツを入れた簡単スープを渡してお湯を注ぐよう伝えた。
私たち?もちろん、エオンでお取り寄せー!
お惣菜にしたよ。
私とサナエはお寿司、タツキとレイキはハンバーグだ。汁物はお味噌汁や溶かして飲むスープ。
サラダや煮物なども買ってみんなで摘む。美味しい!たまに作らないのも楽だね。
食後は緑茶にお団子。みたらし餡が美味しいね!緑茶をズズズーっとね。はぁぁ。
「なんとか明日にはノースナリスだな」
「うん、思いの外野営が多くなったね」
「でもよ、テントも寝袋も食事も快適だろ?野営の過酷さはどこ行ったよ?」
「それな、シエルがいればな…野営すら快適だ」
「うんうん。それにね、ほらトイレ事情が解決したから。女子でも苦じゃないわ。もちろんシャワー浴びたいけど、洗浄や洗い流さないシャンプーとかのお陰でそれなりに快適」
「あぁ、トイレとお風呂事情はな…臭いのは嫌だからな」
「うん、でもやっぱりお布団で寝たい!」
「明日の夜には宿に泊まれるぞ」
「あ、ノースナリスでも商業ギルドと農業ギルドに行こうよ!現金が欲しい」
「その前に冒険者ギルドだろ?オークの皮とか牙?売って現金化したい。ガルたちにも分けないとだからな」
「そうだったね…いくらになるかな?」
「オークは1体で5000ガロンだったな」
「討伐依頼が出てたらね。皮や牙がいくらかだね」
「魔法通信で分かるだろ?相場」
「あ、そうか…。ふむふむ、皮は状態次第だけど最高は1万ガロン。で牙は最高で5000ガロン」
「スプラッタの皮は売れないか…」
「うん、38体だったから。平均で8000ガロンとしても皮と牙で30万4千ガロン」
「高いのが安いのか…死ぬ思いをしたのにな」
「仕方ないよ」
「さてと、寝るか」
「うんおやすみ」
何も起きないといいなって思ったけどね、フラグだからね、言わないよ?
思っただけなのに…やっぱりフラグが立った件。私のせいではない、筈。
テントに戻ってサナエと寝袋イン!の前にあーちゃんとラビとのまふまふタイム!なんでこんなに柔らかいんだろうね?あーちゃんは。お腹もお耳もお尻も全部柔らかい。もふもふ撫で撫で。はぁ満足ー。
さて、寝ますかね。サナエのぽよんにダイブして、ふふふっと笑うサナエとえへへッと笑い合って目を瞑った。すやぁ…。
ぷもん…ん…何、眠いよ…。ぷもん…ラビ、えっラビ?
何?飛び起きた。サナエも目を覚ます。
「どうしたの?」
「ラビが…鳴いた」
魔力を伸ばす。何だこれ?誰かが追われてる。
私が外に出ようとするとサナエが止める。
「ダメ!危ないよ」
ラビを見る。ぷもん…(大丈夫…助けて)
「サナエ、ラビが大丈夫だって。サナエは待ってて。ルー、サナエを頼むよ!」
(お任せ下さい)
テントから滑り出る。レイキが出て来た。頷いてそっとテントから離れる。
誰かが走ってくる。あれは、メッシとタフだ。
タフが走ってメッシが簡易結界を展開した。
ザシュ
タフが何かを切ったな。そしてドドドーーーン。大きな音がした。
そこには倒れた馬車と馬たちがいた。御者台から飛ばされたのは例の商人か?
他には?魔力を伸ばす…いない?
タフは背後を睨んで動かない。あ、複数の魔獣と人の気配を感じた。トレインか、迷惑な。
その頃にはガル、ジルにグレイもテントから出てきた。
「トレインか?」
「そうみたいね、まぁ強い魔力は無いけど。まだ夜中なのに」
私は魔獣は無視して馬に近づく。倒れてるのは脚が折れてるからだ。起きあがろうと必死に脚をかくが、空をきる。このままだと内臓が圧迫されて死んでしまう。
でも、またこの商人に使われるならいっそ。いや、それはやっぱり。
えっ…?
私は風魔法で体勢を整えさせて、馬たちを立ち上がらせる。その前に馬車からは外しておく。
立ち上がれても歩けないから逃げないだろう。2頭とも後ろ脚1本が折れている。ひとまず立ち上がらせて、脚に添木を当てる。
お水を球にして飲ませると、乾燥した薬草と人参を出して食べさせる。
鬣を撫でると頭を擦り付けて来た。真っ黒なその目は覚悟を決めた目だ。
私はそこを離れた。もう私に出来ることは無い。後ろでは魔獣を討伐出来たようだ。魔獣の後から逃げたであろう護衛が怪我をしてやって来た。でも誰も大丈夫かと声を掛けない。
「どう言うことだ?おい、トレインか!なんか言え!!」
ガルの怒鳴り声がする。
「あ、アイツらが…寝てたら魔獣が襲撃して来て、逃げた。お、俺のせいじゃ無い!」
これは商人かな?無責任な…。
はぁぁ、もう寝ていいかな?ふわぁ…眠いよ。目を擦っているとタフが
「寝ていいぞ?」
うん、頷いてふらふらしながらサナエが待つテントに戻る。まだ眠いヨォ。サナエにもう大丈夫と伝えるとあーちゃんを抱きしめて、その匂いに安心して眠った。
※読んでくださる皆さんにお願い※
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