33.前途多難?
7から8日目
ここで解散。タフは1人用のテントで今日は夜番をせずに寝るみたいだ。
私たちはいつもの男性陣のテントへ。
食後のスイーツタイム。
今日はケーキの気分だったから苺のショートケーキ。エマゾンで小さなホールを買ったよ!
レイキが4等分してくれて、ストレートの紅茶でまったりね。
んー美味しい。この甘すぎない生クリームと苺の酸味がね。ふわふわなスポンジもいい仕事をしてる。プロの味だね!
食べ終わると
「何だかなぁ、なかなか穏やかに進まないな」
「ねーこんなもんなのかな?」
「基準が分からないからな」
「移動するのって大変なのねぇ」
私たちは知識が無いから比較のしようが無い。
「シエル、魔法通信でしらべたら?」
「いいけどさ、これが標準じゃ無いって分かるのは嫌だなぁ」
「知らないよりはいいんじゃない?」
「だな」
へいへい、調べますよーっと。
ん?何々?町から町への移動は大変だが、街道沿いはそこまで危険もなく、安全。魔獣の横断に当たったり、雷や大雨に合うのは運がない。今すぐ安全な町に戻りましょう。
えぇーそんなぁ。しょんぼり。
「なんかね、運悪いらしいよ…」
「マジか…」
「この先は何も無いといいな」
「あぁ、寝るか?」
「うん、おやすみ…」
テントに戻ってあーちゃんとラビともふもふタイムだ。ふわふわ最高だね!
そしていつも通り、サナエと寝袋に隣り合って目を瞑る。即落ちした。
翌朝、いつも通りに目が覚めた。サナエを起こさないように寝袋から出て、テントから這い出る。
うーん、良く寝た。タツキはまだ寝てるみたいだ。
焚き火のそばにいたメッシが気がついて隣とトントンする。隣にストンと座った。
「おはよう、紅茶飲む?」
「おはようお願い」
慣れた手つきで紅茶を淹れてカップを渡してくれる。
受け取って飲む、コクン。雑味がある渋めの紅茶だけど朝なので美味しく感じる。
メッシは私を見て
「もう怒ってない?」
「怒ってる訳じゃ無いよ」
困ったような顔をする。
「そうか…」
その話題はもう終わったことだし、今はしたく無い。
黙っていると
「シエル、おはよう」
タツキだ。
「おはよう」
手招きされる。お礼を言ってカップを返すとタツキの方に歩いて行った。
「何?」
タツキは無言で私を抱き上げるとメッシから離れた。
「またぐるぐる考えてただろ?」
えっ何で分かるの?
「そういう顔してた」
顔?
「タツキはエスパー?」
「んな訳あるかよ…全く。自分のことは見えて無いんだな」
「そうかも…」
「難しい顔してたから」
「やっぱりさ、私たちはこの世界の人間じゃ無いんだなって。考え方が違う。違和感がさ…」
「それな…分かるがどうする事も出来ない」
「ね…慣れるしか」
「俺たちは1人じゃないだろ?もっと頼れ!」
「ふふっありがと、そうだよね!1人じゃない。やっぱりタツキはおとんだな。で、レイキは大丈夫?一緒に寝てるんでしょ」
タツキが固まった。
「知ってたのか?」
「うん、魔力が馴染んでるっていうか、近い?上手く言えないけど」
「マジか…何もしてないぞ?」
「ふふっ分かってるよ!」
「俺な、23で結婚して24で上の子が産まれたんだ。レイキと同じ年なんだよ?しかもさ、名前がレイって言うんだ。もう息子と姿が被ってな」
「そっか…まぁレイキも1人がキツかっただけなのは分かるよ。あの子は寂しがりだからね」
「そうだなぁ、男なんてそんなもんだ。サナエの方がしっかりしてる」
「まぁね、女の子はね…。さて、朝ごはん作るか!タツキ、手伝ってー」
「おう、そう来なくっちゃ」
石窯のある所まで移動してタツキはパンを、私はハムと卵を作った。お昼のサンドイッチもつくったよ。スープとサラダも用意して出来た!
サナエとレイキも起きてきて、テーブルに運んでくれる。タフはこちらに参加して、
「いただきます!」
「「「いただきます!」」」
「いただきます…」
まずはスープ。今日はミルクチーズ味。トロリとした食感にしたよ。サラダは茹でカリコリーと山芋のサラダ。シンプルにお塩で。
ふわふわ卵のオムレツにハムをトッピング。パンはいつものトルティーヤ風。
「いや、しかし…シエルは小さいのに本当に料理が美味いな」
「簡単なのしか作れないけど」
「充分だ、美味いよ」
朝からイケメンの爽やか笑顔ですね、ご馳走様。
拝んでいたらタツキに頭を叩かれて、レイキは吹き出していた。サナエは優しくニコニコしてたよ。
食べ終わって各自片付け。
その後、2日は何事もなく順調に旅が進んだのだった。朝食を食べてテントを畳み、片付けをする。
「出発するぞ!」
「おう」
7日目の旅が始まった。
当初の予定では今日、ノースナリスに着く予定だった。でも半日は工程が遅れたからまだ無理だろうなぁ。
出発してすぐにガルが
「今日、ノースナリスまでは無理だ。途中、川を超えるが…昨日の雨でどうなってるか分からん。最悪、川の手前で野営になるかもしれん」
「仕方ない」
「ジルが先行して様子を確認する。師匠がいるから戦力は問題ない。構わないか?」
「任せるさ」
ガルはジルに指示を出し、ジルが1人で走って行った。
3日前のことがあるからか、ここしばらくグレイもガルも少し距離を置いている。空気が読めて何よりだ。
私達は歩きながらタフから剣の振り方を教わっている。サナエだけは剣を扱わないから見学だ。 ※私達でOK?
力の込め方とか振り方の軌道とか。ヒュンヒュンと軽々と振ってるけど、タフが扱うのは太い曲剣だ。とてもカッコいい。でも凄過ぎてタフの剣筋は参考にならない。だから基本の型を教わる。
「どんな体勢でも、同じ軌道で振れるように練習あるのみだ。魔法が使えても、それは補助でしかない。崩されない基本の型の会得は剣士なら必須だ」
そも剣士なのかって話なんだけどね?タツキはダンサーだし、私は魔法通信という非戦闘系ジョブだ。
考え込んだ私を見て
「ジョブやスキルは関係ない。剣は剣だ。スキルやジョブのゴリ押しでは天井がすぐに見える。愚直に振ることは大切なんだ」
そうなのか…頑張ろう。やるせない気持ちを剣に込めて…えいや、えいや、えいやー!
「おぉ、凄い気迫だ!」
ふふっ怒りをエネルギーにね!これぞエコだ。
よし、順調に進んでるねー!
俗に言うこれをフラグと言う。何だかなぁ。
お昼ご飯を食べて、天気もまずまず。順調だった。途中まではね。徐々に雲行きが怪しくなってきた。
立ちこめるような低い雲が空を覆う。
「一雨くるな」
タフが呟く。ちょうど先行していたジルが戻って来た。
「ダメだ、橋が落ちてる」
「そうか、迂回するか」
「雨が降り始めているぞ」
ガルたちが地図を見ながら相談している。
私は魔法通信で調べてみた。迂回路について、だ。
うん?何々…この街道から少し下流に村人が使う渡し船があると。それならまだ渡れる。
それ以外で橋となるとかなり上流か下流まで行かなきゃならない。
「タフ、少しいい?」
こちらに来てくれる。
「少し下流に村があるよね?そこに船とか無いかな?」
「ん、あ…あるぞ!漁師がいる筈だ。渡し船もあった気がするする」
ガルの方に走って行く。タフが話しかけるとガルが頷いた。
「走るが着いて来れるか?近くの村にある船を出してもらえるか確認する。時間がない。みんなで走るぞ!」
「構わない」
ガルはサナエを見て
「お嬢ちゃんは俺が運ぶ、いいな」
「うん」
「ならシエルは僕が運ぼう」
タフが言う。
「間に合ってるから」
即拒否した。ガーンって顔してるけど知らない。タツキならともかく、あんなイケメンを間近で見たら目が潰れる。
(おい、俺ならともかくとかって何だよ!)
(安心感のある顔?)
項垂れたタツキ。ほら、落ち込んでる場合じゃないから、走るよ!
ガルに続いて走る。雨が降り出した、急げ!
結局、途中でタフに拉致られた。遅かった訳じゃないよ?でも力をセーブしてるとね、リーチの差がね。
間近で見るタフは本当にきれいだ。走ってるのに息も上がってない。ん?走ってないな。ほぼ飛んでる?
魔法か…やっぱりエルフの血なんだろうか。
「ふふっそんなに見られたら恥ずかしいよ?」
全く恥ずかしげなく言われた。
「モテるよね?」
「まぁそれなりに、ね?相手には困らない。男も女も…」
キザな言い方だけど似合ってるわ。
「あ、ごめん。未成年に言う事じゃなかったか」
「そうだね…。結婚はしないの?」
「しないよ、冒険者なんて自由が好きだから。縛られたくない」
そんな会話を走りながら出来ちゃう。凄いなぁ、と思っていたら村に着いた。ジルが先行していたらしく、すぐに船着場へ向かうと、船は用意されていた。
すぐに分乗して船が出る。
※読んでくださる皆さんにお願い※
面白い、続きが読みたいと思って貰えましたらいいね、やブックマーク、↓の☆から評価ををよろしくお願いします♪




