31.Aランクの冒険者
7日目
お昼に投稿するのを忘れました…
ギクシャクした雰囲気のまま、雨が小降りになるのを待った。でもさ、グスタフさんの言葉だけでもう少ししたら小降りになるって信じたのは何でだろう?
私は基本、人には鑑定を使用しない。それはやっぱり人としてしちゃいけないと思ってたから。
今まではそこまで切実にランクとかを気にする必要が無かったし。でも、グスタフさんは少し気になる。だから鑑定をしようとしたら
(もうしたぞ!あの人はAランクじゃ無い、Sランクだ。しかも天候感知ってスキルを持ってる)
レイキ、情報ありがとう。だから小降りになるって分かったのか。
あっちのパーティーは全て知ってたのかな?
(多分な…にしてもなぁ、相談してくらいして欲しかったよな)
(うん…事情を知らなければ護衛任務に過失がつくくらいの話だよね?)
ほんとそれ。結局、舐められてるんだろうなぁ。所詮はEランクだし。ちょっと憂鬱。
(シエル、お前は真面目に考え過ぎだ!決まったことは仕方ない。ペナルティだって認識してたのなら、今後はこちらに有利になるようにすればいい)
(そうだね…ごめん。ちょっと仕事モードだった)
(分かるがな、部下がこんな事したら説教2時間コースだ)
(うぇー、2人ともおっかねぇな)
(責任を伴うんだから当然だ)
(確かにな、まぁこの話はもう納めようぜ!)
(そうね、この先ずっとギクシャクするのは困るし)
(あーうん、気を付ける)
少ししたらまだ空はダダ曇りだけど、雨は小降りになった。
「よし、進むか!」
ガルの声に無言で頷いた。待避していた森から出て街道に戻る。
実際にロスした時間は30分ほど。こうして徐々に遅れるんだろうなぁ。憂鬱だ。
グスタフさんを気遣ってか、ガルたちのスピードも上がらない。今日の予定の野営場まで辿り着けるのかな、これ。
黙々と歩いているとグスタフさんが近づいて来た。咄嗟にタツキの服を握る。それに気が付いたタツキが私を庇うように寄り添う。
声が聞こえる距離で止まると
「なぁ、その悪かったよ…巻き込んで」
「…」
「ガルを利用したこともな、謝る」
「…」
「なあ、せめて声くらい聞かせてくれないか?」
「…」
(はぁ、こっちなら応えてくれるか?お嬢ちゃん)
(えっ…)
(やっぱり使えるんだな…このスキルは使える人間が少ないんだ。君たちは使ってたよな)
(どうして?)
(声に出さないのに、完璧に意思疎通が出来てたから。呼んでくれたろ?名前を)
(このスキルって?)
(無意識か?心音ってスキルだ。一般的には念話と言われてるがな)
(無意識かも)
(2人以上が使える環境じゃ無いとなかなか生えないスキルだ)
(そうなんだね…)
(でだ、悪かったよ…小さい子に嫌われるのは堪える。巻き込んだのは申し訳ない)
(どこまで噛んでるの?それと、小さい子じゃない)
(あー全部?雷に撃たれたのもな。充分、小さいだろ?)
(庇ったのはほんと?年は小さくない!)
(それは本当だ。マジか?10才くらいかと…)
(…人が悪いわ、嫌われて当然よ!それと14さいだから!!)
(はぁぁだよな。でも言い訳させてくれ。えっとサバ読んでない?)
(却下!サバ読む意味ないでしょ?)
(お嬢ちゃん、頼むよ…。いや、年の割に小さいな)
(シエル勘弁してやれ。それと大きさは10才並だぞ)
(タツキがそう言うことも想定済みなんだよ?ムカつくー。それと、普通よりほんの少し小さいだけだよ!)
(だとしても、だ。お前に嫌われたら俺だって泣くぞ?手繋ぎて親子に見える程度には小さいぞ)
(むぅタツキはズルい!おとんだからそう思うんでしょ。)
(仕方ないだろ?むくれてるより笑ってて欲しいんだから。俺はお前のおとんじゃないぞ。全く、小さいのは認めろ)
むう、タツキを睨む。
(おー怖!いや、怖くはないか、むしろ可愛いぞ)
(はぁぁ分かったよ、もう。私だけ駄々っ子みたいじゃ無い。可愛いのはまぁ当然だけど?)
(アイツらさDランクだけど、酷かったんだ。臨時とはいえパーティーだろ?なのによ、雑用もしないし荷物も持たないし。準備すらしてなかったんだ。うん、シーちゃんは可愛いよ!)
(それは酷いな。シエルは見た目だけは儚気なんだ)
(確認しないのが悪い。見た目だけってひどくない?)
(お嬢ちゃん、その通りだ。面目ない。雷がなったから平原で待機って言ったら反発されて…で、あの様だ。いいや、なかなかどうして。逞しいぞ?)
(救いようがないね、で、ガルにはいつ気が付いたの?逞しくないもん!)
(雷がなる前だな。もんって…可愛い)
(だから安心して雷に打たれたのね。可愛いで誤魔化されないよ!)
(いやー、まぁ…お見通しか。でもな、護衛任務中だとは思わなかったんだ。ほんとに申し訳ない。う、ダメか…可愛いと思ってるのはほんとなんだがな)
(シエル、どういうこと?シエルは可愛いよ!)
(要するに、アイツらとはもう進むのは無理って思った時に懐かしい魔力を感知して、なら円満にパーティーから抜けてついでに介抱して貰って、一緒に戻ろうと思ったってこと。まぁ護衛任務までは分からなかった、という言い訳だよ。サナエありがとうー)
(お前は身も蓋もない言い方するな…。そして、サナエと態度が違いすぎだろ…)
(感情は入れてないよ、単なる事実。サナエはぽよよんだからね!)
(まぁ確かにな、事実だな。こら、だからどこのエロ親父だよ!)
(いやお嬢ちゃんは鋭いな…思ったよりガルが情けなくって、お嬢ちゃんがいてくれて助かったよ。後は後ろの君かな?鑑定持ちなんだね。ぽよよん…)
名前呼んだからな…流石にバレるか。
(緊急だったからな。後、さっきも鑑定したぞ?悪いがシエルに近づくヤツは用心しないとだから。見た目だけは儚気だから)
(そうなのか、いや構わない。ランクもバレたか?見た目だけな…)
(Sか?バレてるぞ。でも大切な仲間だからな)
(ハハハッ情けないなぁこんな若者にしてやられるとは。うん、いい仲間だな)
私は肩の力を抜いた。本当に悪気は無かったみたいだ。にしても、この会話が続くのが地味に凄い。
こんな若者ってオジサンみたいな事言うな。だって見た目は20代半ばくらいだ。
あ、思い出した!
(グスタフさん、ガルが師匠って。ガルの事をガル坊って。でも見た感じ、師匠の方が若いよ?)
(あー俺も気になってた。年齢見てびっくりだぜ)
(何才なの?)
(人に言われるのは恥ずかしいからな、35才だ)
えっ…どう見ても20代だよ?
私と同じ銀色の髪、緑の目、長い銀色まつ毛の美男子さんだ。色白の頬は僅かに色付いていて、美少女と言われても頷けるご尊顔だ。
(美魔女…)
タツキに頭を叩かれた。ついね?
(僕はね、エルフの血が少し入ってるんだ。クォーターなんだよ。だから老けにくい)
思わず顔を覗き込むとまたタツキに頭を叩かれた。
(失礼だろ!)
(だって、耳が…)
笑って髪の毛を耳にかける。尖ってない。
(クォーターまで血が薄まると身体的な特徴は出ないんだよ。緑の目はエルフ由来だけどね)
そうなんだ、でも美形さんだよね?それはエルフの血じゃないの。
(ははっありがとう。それはエルフの血ではなくて単なる遺伝だから)
美男美女から生まれたと。ふーん。
(もう仕方ないなぁ、許してあげる!しょぼくれたオジサンを前にいつまでも怒ってるのは大人げないからね!)
(いや、お前が一番子供だろ!)
レイキの突っ込みは相変わらずキレッキレだね。
「あー、シエルちゃん?俺のことはタフって呼んでくれるか?言いにくいだろ?」
「タフね、分かったよ。私のことは呼び捨てで!」
「シエルね。あーと、他のみんなもよろしくな!」
「おう!」
タツキは拳を付き合わせる。サナエは軽く会釈してレイキはなぜかラジャーと手を上げた。厨ニか?
(違うわ!)
はい、キレッキレです。
森から出て2時間ほど歩いたところでお昼ご飯だ。ガルたちには上げない、ツーンだ。
勝手なことした罰だよー。タフは病み上がり?だから仕方ない。分けてしんぜよう。すっかり調子は戻ったのか、バクバク食べてた。
対照的にガルたちはボソボソと干し肉を齧ってたよ。
食べ終わって紅茶タイム。今日も姫ミルク入りのロイヤルミルクティー風だ。
ふーふー、コクリ。甘くて美味しい。
チラチラと目線は感じるけど知らないよーだ。
時間も押してるからそこそこの休憩で出発した。
タフの調子が戻ったので、ガルと並んで先頭で進む。
(もう少し早くしてもいけるか?)
タフだ。タツキを見上げて頷く。後ろも確認してる。
(構わない)
(なら少し速度を上げる)
進む速度はグンと上がった。私たちは問題ない。リリはもちろん、姫も王子も軽々と着いてくる。あーちゃん?何故か私が抱っこしてる。だってね?足に前脚をかけて潤んだ目で見てくるんだよ?即抱き上げたよ!あーちゃんのためならえんやこーらってね。
(ぐふぅ…んだそれ)
レイキはいつも変わらないな…安心の吹き出しです。
そこからは時々、休憩を挟みつつも順調に進んだ。なんせタフがね?ラビが反応した時には獲物を手に戻って来てるの。早!全く見えなかったよ。
そんなこんなで遅れを取り戻せて、予定の野営場には夕方に辿り着いた。
つくやいなや、タフが遠くに微かに見える森に走って行った。なんだろ?
私たちはテントを張って夕食の準備だ。お昼ご飯を食べたタフからぜひお金を払うから作って欲しいと言われてね。
なんか今日も変に疲れたからな…手抜きしたい。
お米があれば丼ものなんだけど、無いんだよね。 あ、あれにするか!
二重会話…LINEあるある
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