29.順調な旅だね
6日目から7日目
目が覚めた。あーちゃんが口元を舐めだからだ。どうしたの?お腹空いたの?
あーちゃんは必死に私の口元を舐め頬を舐める。そこで気が付いた。泣いてたみたい。
涙の気配にあーちゃんが気が付いて慰めてくれてるんだね。
ありがとう、無意識だったのかな?夢でも見た?覚えてない。でも気分はスッキリしてる。
こうやって少しずつ馴染んでいけばいいね。
サナエはまだ寝ている。目が覚めてしまった。体は若返っても意識がまだ52才。早寝早起きが身に付いている。サナエを起こさないようにそっと寝袋を抜け出すとテントを出た。
ちょうど隣のテントからタツキが出て来る。顔を見合わせて苦笑した。
「おはよう」
「おはよう、クセは抜けないな」
「ねー」
うーんと体を伸ばす。
夜晩のグレイとメッシが焚き火を囲んでいた。寒くは無いけど火に当たりたい。
タツキと並んでそちらに向かう。
「おはよう、良く寝れたかい?」
「おはよう、ぐっすり」「おはよう、あぁ」
「おはよう…なら良かった」
グレイが座っている木に腰掛ける。隣にタツキも座る。
「夜は大丈夫だったの?」
「あぁ静かなもんさ」
「その分眠くなる…」
そういうもんか。
「紅茶飲む?」
「「頼む」」
タツキの分も入れてカップを渡す。ふーふーコクン。美味しい。起き抜けの温かい飲み物って最高だね。
「美味しいな…」
「沁みる…」
それからはみんなが起きてきたので朝食。昨日の夜、多めに作って貰った薄いパンにベーコンと卵を挟んだものとサラダとスープ。手抜きだ。
「朝から温かい食事、幸せだな」
「あぁ」
なんて会話を聞きながら、素早く食べる。
お昼は堅パンを薄くカットしたものに厚切りのベーコンとトマトにレタス、チーズのBLTサンドと厚焼き卵のサンドを作った。
朝食をささっと食べ終えて、テントを畳んで出発だ。
「今日も野営だな、工程がズレたからな。しばらくは見通しのいい街道だから安全な筈だ」
ガルの話しによると、本当は途中の村に泊めてもらう予定が、約半日ズレたから辿り着かない。なので今日も野営だそうだ。
見通しがいいと安全、逃げ場があるから逆かと思ってたけど視認できるのが早いから襲いにくいらしい。
なので安全なんだとか。隠れる場所がないのは本能的に怖いけど。
その日は何事もなく、一度だけ商隊とすれ違っただけで進んだ。ちなみにその商隊も、魔獣の横断に当たって被害が出たそうだ。戻るにも中途半端な距離だったから進むことにした、と言っていた。
日用品から食料品までを運ぶ商隊で、生鮮品もあって困ってると言う。時間遅延の空間拡張カバンはあるものの、予定がかなり遅れたので廃棄を検討していると。良ければ安くするから少しでも買って欲しいと言われ、牛乳と卵に肉、そしてなんと魚、鮮魚だよ?と野菜を格安で売って貰った。もちろん、全部買ったよ!
こちらがオークをたくさん討伐したと聞いて、支払いをオークの皮でとお願いされた。
ガルが食材費だからそれで払えと言ったので、物物交換した。
そんな事はあったものの、ごくごく平和に1日を終えた。今日は野営場で夜を過ごす。
他には誰もいない。その方が気楽でいいけどね。
テントを張って体を拭いて、夕食の用意だ。明日のお昼ご飯に使えるから、今日はあれにしよう。
だってお魚だよ?うふふっ、楽しみだ。
小麦粉に卵と牛乳を少し、塩も入れて混ぜる。レイキが風魔法の練習で混ぜてくれる。
混ぜ終わったらサナエに氷を出して貰って冷やす。はい、ここ重要。
で、お魚だよ。白身の魚と鑑定さん。ヒラメみたいな味らしい。すでに開かれた状態なので、小骨を取って塩を振っておく。水気が出て身が締まるからね。
水分が出て来たらレイキが水分を魔法で飛ばし、表面を軽く乾かしてバジルを振りかける。
冷やした生地にくぐらせて、フライパンにひたひたの油を入れて熱しておいたそこに投入ー。
ジュワーっといい音がする。
本当は野菜を先に揚げるんだけど、私が我慢できなかった。ドンドン揚げてくよー。
魚が揚げ終わったら野菜だ。ナス、玉ねぎ、山芋、ジャガイモ。皮剥きとかカットはサナエがやってくれた。こちらもドンドン揚げる。途中からタツキが変わってくれた。
私はソース作り。トマトベースと塩ベース。トマトは炒めて塩コショウ、塩はごま油と混ぜ混ぜ。
そして背後にまた気配が。振り向くとヤツらがいた。
既視感…そろそろ慣れようよ?
見なかったことにしてお皿に盛り付ける。各自のお皿に盛った残りは大皿でドン。明日のお昼の分は取り分け済み。
「ヤローども飯だー!」
「「「おう!」」」
こぶしを突き上げる翼の面々。相変わらずノリがいいね。
では手を合わせて
「いただきます!」
「「「いただきます!」」」
バクバクッうまー!っとなったよ。うん、おさかな美味しいね。
「魚とかちょっとって思った自分を殴りたい」
「肉こそ至上だって思ってた俺、さようなら」
「魚の革命だ!」
「魚うまっ」
そんなにかね?
こちらのメンバーはまた少し違って密かに涙ぐんでいる。あー分かる、天ぷらはね…日本人の心だよね。でもなー海老天やイカ天がないのがね…。
こうして満足な夕食が終わった。使い終わった油はメッシが地中に埋めてくれた。
食べ終わって解散し、いつも通りに男性陣のテントに集まる。
「不意打ちだな」
「あぁ、まさかの天ぷらとは」
「突然来るよね」
「海老天、イカ天が食べたい」
「「「感想がそれか!」」」
「だってね?天ぷらと言えば海老天でしょ」
「まぁな…いかんな、なんかお前たちといると油断する」
「それな…特にシエル、お前がな。おかんの味なんだよ」
「うんうん、ざ、家庭料理なのよ。思い出すわ」
「やめた方がいい?」
全員が高速で首を振る。
「むしろ頼む。忘れられない味だからな。再現してくれたら嬉しい」
「私も、幸子お母さんの味を食べたい」
「幸子言うな?くすっ」
「俺も幸子おかんの味がいい」
「レイキ君はおかんに甘えたいのかな?ん?」
「ち、違うわ!」
真っ赤になるレイキ。うん、可愛いのぉ。
「だからババアかよ!」
違いないぞ?ふふふん。
さてお茶飲むかね?緑茶を入れてみんなに渡す。
ズズズーってぷはっ、美味しいね。
みんなで笑い合って…しばらく話をしてから寝ることにした。
今日も今日とてサナエと寝袋にイン!あーぬくぬくだぁ。
女性陣が帰った。
「シエルはほんとに52才だったんだなぁ」
「あーな、料理もおふくろの味だよな」
「不意打ちでヤバかった」
「それな…まぁ徐々に慣れるだろう」
「タツキ、その…」
「今日も一緒に寝るか?」
「いいか?」
「あぁ、息子が小さな頃に一緒に寝てたことを思い出したよ…いいもんだな。人がそばにいるのは」
「あぁ、なんか悪いな」
「気にするな!」
こうしてまた寝袋に隣同士で寝転んだ。やがてレイキの規則正しい寝息が聞こえて来た。助かってるのは俺もだ。隣のレイキの熱に心地よさを感じながら目を瞑る。
目が覚めた。今日は泣いてない。でもあーちゃんが口元をペロペロして目が覚めた。ちなみにラビもあーちゃんも、ルー以外の従魔も人と同じものが食べられる。だから食事の時は別のお皿に取り分けて食べさせている。
お腹が空いてる訳では無さそう。そっと寝袋を抜け出してテントを出る。
隣のテントからはやっぱりタツキが出て来た。
「おはよう」
「おはよう」
伸びをする。ふぅ良く寝れるなぁ。この野営場では比較的安全とは言え、何があるかわからないので不寝番をしている。ただ、1人ずつだ。比較的安全だからこそだろう。
メッシが最後の番だったらしく、挨拶をしてから紅茶を淹れる。3人で焚き火を囲んで飲んだ。うん、美味しい。
それから朝食の用意。そろそろとテントから起き出して来る。
今日は昨日仕入れた牛乳と卵、砂糖でフレンチトースト。これだけでも美味しいけど、ハムを乗せると塩味が甘さと絡んで美味しい。
私はハム無し、他の人にはハムを別皿に入れて渡した。
焼くのはレイキが手伝ってくれたよ。
「いただきます!」
はむはむ、甘くて美味しい。メープルシロップ欲しいなぁ。
「おっ柔らかくて美味い」
「甘くて美味しい」
「ふわふわ…」
「はむっもぐっ」
怒涛の勢いで消えたよ?フレンチトーストは飲み物かな?
食後は紅茶。ストレートがサッパリとして口の中の甘
さを緩和してくれる。
ふいー、さぁ今日も1日歩きますか!
※読んでくださる皆さんにお願い※
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