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星なし転移者と仲間たち〜逃亡中〜  作者: 綾瀬 律
異世界転移?

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26.白うさぎのフォル

やっと5日目

 スナンに村を出発した。

 歩き始めてすぐ、ガルが

「ごめんな…メッシに聞いた。グレイがその…どうやって回転したんだか、はぁぁ」

 頭と足が逆転してたアレね。

「あぁ斬新な技だね?まさか太ももに上半身がホールドされてるとは」

 私は苦笑いだ。

 グレイが背後でピシリと固まっている。

「だよな…謎現象だが、不思議と男にはしない」

 無意識に選別してるのかね?ってか前科何犯よ?

「まぁ大丈夫だよ」

「悪いな、依頼主をハメルとはな、はぁ。しばらく野営だし、宿を取る時は部屋を分けるからな」

「そうだね」

 確かにね?男子なら喜ぶかもだけど。


 とそんな話をしていたら、ぷもん…とラビが鳴いて耳をぴるぴるさせる。今日は足元を歩いていたあーちゃんも反応する。

「ん、来たな…俺とグレイが出る!」

 この反応は魔獣か?私はラビが反応するから何か来るってのは分かる。でも何か、がもっと近くに来ないと分からない。これは訓練しないとだな。

 街道脇から出て来たのはコボルト?の群れだ。2足歩行の犬と言えばいいのかな。群れの数は10くらい。弱い部類だから追い返すだけで大丈夫みたいだ。

 ガルとグレイが先頭の2匹を首ちょんぱすると、後ろのは慌てて戻って行った。

 倒した2匹を土に埋めようとしたからコッソリと魔石と毛を回収した。表面の毛だけね。集めて何かに使おう。

 土に埋めたら出発だ。


 今の所、魔獣の横断には当たっていない。ここままノースナリスまで行けたらいいな。

(シエル、それってフラグだぞ)

 レイキが突っ込んで来る。いやいや、心の声だからセーフでしょ?

(怪しいな、お前の呟きは)

 大丈夫だよ、もう。レイキは心配性だなぁ。





「くそっ、だから言ったんだ!」

「ほんとにな、言霊か、言霊なのか?あれは」

「知るかよ!あーうぜぇー」

「ほら、ごちゃごちゃ言ってないで手を動かすー」

「「誰のせいだよ!」」

 少なくとも私じゃ無い。多分、きっと。



 そう、私たちは今、魔獣に囲まれている。なぜこんなことになったか、と言うと。



 レイキにフラグだ、と言われてまさかーと笑った後の事。ラビとフォルが何かに反応、アイカも警戒して鼻をヒクヒク。何だろ?気持ちがザワリとする。レイキを見ればやはり警戒した顔だ。

(何だこれ。気味が悪い…)

 同感だ。空かける翼の面々はすでに臨戦体勢だ。私たちは守られる側だから、今は静観してる。

 けど、鳥肌が立つ。私は足元のアイカを抱き上げて肩に乗せる。

 ザワリッ…。魔力を薄く遠くに伸ばす。

 これか、えっ…何これ?これが魔獣の横断?

(みんな、抜けてくるのはヤルよ!ルー、背後に糸を展開して!)

 これはマジでヤバいかも。


 腰から剣を抜く。タツキも剣を両手に持っていた。レイキとサナエは杖だ。

 王都を出る前、武器も最低限は必要となって、エマゾンで素材を買ってレイキに作って貰った。創造で魔剣をね?

 杖は樫の木で作った短いものだ。魔力を外力に変換する効率が良くなる様に作られている。

 先端にはオークの魔石をいくつか繋げた物を組み込んである。そこは私が作った。

 タツキと私の武器にも魔石を組み込み、魔力をのせて魔法に変換しながら斬る。岩もシュパンってね。

 だから大丈夫な筈。それでも集団で来られるとやっぱり怖い。


「怖くて当たり前だ。やりたい放題とかって言われるより余程いい。でも、やらなきゃ死ぬぞ」

 タツキが前を見据えて言う。

 そうだ、これは生き残りを掛けた戦いなんだ。怯むな、私。剣を握る手を緩める。力を入れるのは直前でいい。ふうと息を吐く。

 もう魔獣の集団は視界に入った。

「チッ数が多いな、おい、抜けるやつや回り込むヤツはどうしてもいる、躊躇なくやれ!お嬢ちゃんたちを守れよ、リーダー」

 ガルが声を張り上げる。

「あぁもちろんだ!」


 そして瞬く間に闘いが始まった。これが馬車が出なかった理由の魔獣の横断か…それにしても規模が大きい。ザッと100ほどの魔獣が集団でやって来る。

 先頭はコボルト、次がオーク、最後がマッドベアだ。

 コボルトは群れの討伐ランクはD、オークは群れだと討伐ランクは確かCだ。マッドベアは魔法通信でサッと調べると単独でBランク、それが2頭以上だとAランクになるそうだ。

 今回はマッドベアが2頭に他の魔獣がいる。コボルトが60ほどでオークが32。マッドベア2匹でも討伐ランクはA、これだけの魔獣がいると討伐ランクはすでにAを超えている。


 手が震えた。すると横からレイキがその手を握る。

「調べろ!集団戦の効率的な戦い方を」

 レイキを見る。そうだ、私には知識がある。そして調べた内容をパーティーで共有した。




「くそっ、だから言ったんだ!」

「ほんとにな、言霊か、言霊なのか?あれは」

「知るかよ!あーうぜぇー」

「ほら、ごちゃごちゃ言ってないで手を動かすー」

「「誰のせいだよ!」」

 少なくとも私じゃ無い。多分、きっと。



 正面は空かける翼の面々が撃破するから、私たちは邪魔をせずに周囲と念の為に後方をカバーする。

 と見せかけて、レイキとサナエがコボルトとオークの数をさり気なく減らす。

 やり方?それはね、まぁあれだよ。

 ガルの一振りで3匹のコボルトが倒れる。その後ろのコボルトをレイキがそっと2匹ほど倒す。倒れたコボルトに躓いた風を装って。きっと血管に石とか詰めてるんだろうな…。

 グレイが斧を振り回して倒れたコボルトの後ろにもサナエが同じことをする。多分、心臓に氷とか生やしてるんだろうな…?

 そうやってとにかく数を減らした。なんせ数がね、多いから。

 回り込んできたコボルトはタツキが流れる様に双剣で、反対側は私が剣でザシュってね。


 ガルとグレイがマッドベアに接敵する。

「後は気にせずパーティーで当たってくれ!」

 タツキの声にジルが手を挙げる。そして、後方をカバーしていたジルとメッシが前を向き、パーティーでマッドベアに対峙する。

 私はさり気なくオークやコボルトの残りが彼らの方に行かない様に結界で誘導した。

 チラッと横を見るとリリも姫と王子も小さなまま。それなら余裕で勝てるって事かな。

 緊張もほぐれたし、やりますか!


(程々にな!)

 タツキに言われたく無いよ、足元にどんだけ魔獣が転がってるのさ。

 剣を振ってコボルトを斬る、斬る、斬る…。減らないな。かなり殺ったんだけどな。

 そして遠くを見てため息をついた。増援なの?魔獣に増援とかあるの?

 はぁぁ…いなくならない訳だ。後から後からコボルトとゴブリンがやって来る。

 でもゴブリンは近づく前に首から氷柱を生やして倒れていた。サナエだね、目が怖いです。

(だって、遠くからでもニタァって笑ったのが見えて…)

 それは嫌だな、うん、どんどん殺ろう!


 タツキは相変わらず踊る様に魔獣を切り刻む。私は正統派だからね、構えて一匹ずつ。合間に魔法でザシュっとね。こうなったら誰が1番大漁か勝負だ!

 魔力を貯めて放出ー。風よ、斬り刻めー!!


 あれ…?なんだか凄く光ったような…。気のせいかな、うん。

 タツキに睨まれた。そして頭を叩かれた。

(おい、残り全部お前か?)

 さ、さぁ…?遠くで魔獣が死屍累々だ。

 はぁぁと深いため息をつかれた。なぜだ?殺ったんだからいいよね?


 気を取り直して、剣についた汚れを魔法で落として鞘に収める。

 あーこれどうするよ。たくさんの肉が細切れに…。

「お前なぁ、この状況で肉って言うなよ!」

「ミンチになるかな?」

「ぐほっ…ミンチ」

 レイキが吹き出す。

「くすっほんとにシエルはお肉にしか見えないのね」

 和やかな会話だけど目の前にはホラーもびっくりな凄惨な光景。

「お前ら、肉が欲しけりゃ回収しろ。魔石はコボルトやゴブリンは俺らはいらない。オークの魔石は後で分配だ。手分けして皮と魔石を取るぞ!」


(コボルトとゴブリンの魔石は私が回収するからオークの方よろしく!)

(分かった)

 みんなはあちらのパーティーと一緒に回収、私はサクッと小さな魔石を遠隔移動で回収すると、肉を回収し始めた。

 皮はその場にいくつか残していく。後でみんなが回収するだろう。

 ミンチなお肉はカバンに収納してお肉とそれ以外に分けた。これでミンチ肉を大量にゲット。

 素材になるオークの皮と牙と爪は原型を留めているものは回収している。


 マッドベアは任せることにした。下手に触ってもね?皮も爪も目や内臓までいい素材になるらしい。

 怖い!

 で、討伐から2時間掛けて剥ぎ取りが完了。流石に疲れた。

 そこら中に漂う血の匂いはメッシが魔法で散らし、汚れた土は埋めていたよ。

 それで証拠隠滅だね。はぁぁ疲れた。


「疲れてるだろうが早くここを抜けるぞ!」

 ガルの一言でみんなが歩き出す。




「もうすぐだから、頑張れな」

 あれ、何を…?それにガルの顔が近い。痛ましそうに私を見るガル。そしてやっと理解した。

 私はいつの間にかタツキに抱えられていたのだ。

 えっ、いつ…そして自覚した。体の震えを。

 今頃なの?…震えが止まらない。

 サナエを見るとグレイに付き添われて真っ青な顔でヨロケながら歩いている。

 レイキは自分の足で歩いてるけど、魔法を使っていないし顔が真っ青だ。

 タツキを見る。やっぱり青ざめている。

(タツキ、ごめん…私)

 不覚にも泣きそうになる。

(言うな、お前がいるから俺は歩けてる)

 あ…タツキも震えていた。そうだよね、いくら多少の練習はしてても。平和な国で育った私たち。

 しかもここはゲームでは無い現実。分かっている様で、やっぱり分かってなかったんだ。




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