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星なし転移者と仲間たち〜逃亡中〜  作者: 綾瀬 律
異世界転移?

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25/127

25.順調な旅の面々

5日目

 ここは任せるか。

「護衛任務を受けた者としての質問か?」

 タツキだ。会話を聞いてたんだろう。私の思考は色々とダダ漏れだから。

 気配を感じていただろうメッシは驚く事なく

「違う、知りたいだけ」


 肩の上のラビが立ち上がって鼻をぷもぷもする。

(ご主人、仲間を助けて…)

「理由なら説明するよ、来て!」

 私は村から山に向かって走り出した。アイカも一緒だ。

(タツキも来て!)

(分かってるさ)

 後ろにタツキとメッシも来ている。

 肩の上でラビがぷもんを鳴くと次の瞬間、アイカの背中にいた。

 え?いつの間に…?

 アイカはラビを背中に乗せると走り去った。追いつけない。メッシさんがいるからあまり早く走ると不自然だ。

(アイカ、止まって…危険だよ)

(大丈夫ー ザシュ…)

 ザシュ?アイカ?焦って転びそうになる私をタツキが支えると、そのまま抱えて走る。


 アイカとその背中のラビが見えた。良かった、無事だ。ケガもしてないね。ふぅ焦った。

 タツキが私を地面に降ろし、屈む。そこにはキツネが横たわっていた。首から血を流している。

 ラビがアイカの背中から飛び降りると、キツネの口元で横たわる白うさぎに近づく。

 胸が動いていない。メッシはまだ来ない。なら、と軽く治癒魔法を飛ばす。

 テカンと光って、胸がゆっくりと上下した。命の危険はなくなったけど、お腹のケガは治していない。


 メッシが追いついてきた。

「これは…。あ、」

 屈んで白うさぎを両手に抱えるとピカンと白く光った。そして横たわっていたうさぎは耳をピクピクさせると鼻をスンスンとしてから起き上がった。

(助けてくれてありがとー)

 と声が聞こえた。

「良かった…」

(名前ー 欲しい)

「メッシ、名前欲しそうだよ」

「あ、名前?…うさみ」

(つーん)

 そっぽを向く。焦ったメッシはその後もうさえとかうさきちとか言ってついにうさぎが後ろを向いた。拗ねちゃったね?そりゃね、うさえとか無いよね?


(ぐふっ、うさこって言ったお前が言うか?)

(私はラビってすぐに付けたし?)

(大差ないだろ?何で上からなんだよ…)

 タツキにあきられた。おかしいな。

「…うさり…」

 無いわーメッシのセンス、無いわー。

 なぜか涙目で私を見るメッシ。森、山、フォレスト、マウンテン…フォルとかテンとか?

(フォルかな…)

 タツキの案でいくか。

「フォルは?私たちの故郷で森を意味する言葉の略だよ」

「フォル…」

 うさぎはピカンとまた光って

(僕はフォル…)


「うわぁ、声が聞こえた!」

 メッシが焦って声を上げる。あれ?もしかして結構若い?大人びた印象だったけど、焦ってる姿はまだ少年っぽさがある。

「うさぎの目の色、それが答えだよ」

「あぁいつの間に?青になってる…」

 さっきの間だね、ってか気が付いてなかったの?

 おかしいな、メッシも超天然君か。

(お前が言うか?くすっ)

(私は天然じゃ無いよ!)


 メッシは腕の中の子に頬ずりをして、可愛いと呟いた。

(ご主人のそばで守るよぅ)

 おぉ、健気だなぁ。良き良き。

「白うさぎは臆病で人の前に姿を現さない。この子は探索範囲が広いから、僕たちみたいに探索専門員がいないパーティーでは凄く重宝するんだ…ありがとう」

「ラビが仲間を助けてって言うから、たまたまだよ」

「ふふっそう言う事にしとくよ。戻ろうか」

「おう」

 私はタツキと並んで、後ろからメッシが付いてくる。なんか警戒心がメッシから消えた。

 女性2人がいるパーティーとはいえ、タツキもレイキもまだ若い。対してメッシは儚気男子だ。もしかすると今までも何かあったのかもしれない。

 私にすら警戒していたなら、年下女子に迫られたとかかな?

 残念ながら、おかん気質の私では子供にしか見えないんだよねーメッシだと。


 集会所の外には他のメンバーが勢揃いしてた。あれ?

 レイキに付き添われたサナエが私を見て飛びついて来た。サナエ、ギブギブ…ぽよん攻撃が私の顔面に炸裂。呼吸困難になるんだよ。ふぅ、危なかった。

「大丈夫?」

「サナエのボリュームに殺される所だった」

「…ごめんね、ちょうど顔だね」

 サナエさん、今頃気が付いたのかな?

 顔を赤くして俯いてる。肩を揺らしているサナエ、追随してぽよんがぽよよんだよ、眼福だね。

(おい、どこのオッサンだよ!聞こえてんだから自重しろ)

 レイキを見る。顔が赤い。そして目線はぽよよんに向いている。

(お前…仕方ないだろ!ってかそもそもぽよよんとか言うからだ!)

(そうだぞ?お前の発言が悪い)


 うん、ごめん。これは私が悪い。サナエがそっと胸を庇うようにした。だからぽよんにダイブしてみた。うん、柔らかいね。

((はぁ…お前、反省してないだろ))

 と私たちが念話でしょうも無いやりとりをしている中、空かける翼の面々はメッシを囲んでいた。

「良かったな…」

「可愛いな」

「今度こそ、な」

「うん」

 今度こそ?やっぱり涙目だったのには理由があるのか。ま、詮索する気は無いけどね。

 朝から美少年憂い顔を堪能出来たので、ヨシだろう。


「おはよう、メッシが世話になったな」

「ん?いや、何も…」

「おはよう、ラビが仲間を助けてって言ったからな。助けたのはメッシだ」

「いや、僕は…」

 チラッと私を見た。あ、やっぱり気が付いたか。時間がなくて魔力の痕跡を消せなかった。

 先に私がフォルに何かしらしたのがバレてる。

 まぁメッシなら、というか空かける翼なら大丈夫だろう。


「お腹空いた…」

 空気読もうよ?レイキ。まぁ確かにお腹が空いたな。

「レイキ、手伝って」

「おう」

 厨房に入って鍋とフライパンを取り出す。

 朝食は炙ったトルティーヤとベーコンとスクランブルエッグ、サラダにスープだ。

 お昼ご飯用にサンドイッチも作る。こっちは堅パンを薄めに切ってレタスとトマト、ハムとベーコンにチーズを挟む。BLTサンドだ。

 昨日の夕食を食べた彼らから提案があった。お金を払うから、出来る範囲で食事を作って欲しいって。


 食材の買い出しさえ出来れば、作るのはそこまで大変じゃ無い。1食は朝食が300、昼食が500、夜が1000ガロン出してくれると言われた。だから都度ではなくて1日、1000ガロン。作れる時だけで合意した。

 朝食は料理出来れば今日みたいな献立。

 お昼ご飯は流石に行動食だから作れない。なので携帯出来るサンドイッチにした。

 夜はその都度、状況によって変わる。それでもいっしょに食べられるなら、と言われた。


 朝食が出来るとお皿に載せて運ぶ。レイキはサラダを作ったりトマトのカットやサンドする工程を担当した。意外と手際がいい。

 机に並べて

「「「いただきます!」」」

「その挨拶はなんだ?」

「俺たちの故郷の風習だよ、命をいただきますって感謝の言葉だ」

「へーいいな、それ。んじゃ俺たちもいただきます!」

「「「いただきます!」」」

 パクリッ

「「「「んまーい!!」」」」

 それは良かった。スープを飲む。今日は姫のお乳を少し貰ったミルク風味だ。まろやかな味はベーコンの塩味と相まって美味しい。

 ベーコンは薄く切ってカリカリに、スクランブルエッグはとろとろにしてトマトを載せた。


 私はあまり量を食べないけど、私以外はもりもり食べてる。凄いな。

「「ご馳走様」」

「今日も美味かった」

 ふふふっ嬉しいな、結婚も長くなるとご飯を作っても当たり前、感謝すらされない。感謝して欲しい訳では無いけど、リスペクトって言うかね、気持ちの問題。

 こちらではみんなが美味しかったって言ってくれるから作り甲斐がある。

 片付けは各自でする。私は汚れを水魔法で包んで外にぽい。食器は洗浄の魔法でピカピカだ。


 それぞれ準備を整えて

「行けるか?」

「ガル、その前に挨拶と何か野菜が買えるか聞こう」

 グレイの提案で村長に挨拶にガルとグレイが言った。私たちはステイだ。

 タツキはリリと戯れ、レイキは姫と王子のブラッシング、サナエはルーを撫でて私はラビとあーちゃんを撫で撫でしていた。


 ガルとグレイが戻って来て

「この近くで取れるきのこと芋を買い取って欲しいってさ」

 きのこ!芋!はい、買います!シュタッと手を挙げる。タツキが笑いながら

「買うってさ」

 と言い、せっかくだからとみんなで村長の家に向かった。

 家の外に用意してくれていたそれらを見る。

 こ、これはしめじさんに舞茸さんに大きなきのこさん、更には来ました!山芋さんです!買います!

 シュタッ…手を挙げる。

「初めまして!おいくら万円?」

 後ろからタツキに頭を叩かれた。

「ぐふっ…ぷぷっ」

「すみません、まだ寝ぼけてるみたいで。いくらで売れる?」

 吹き出したレイキは酷いよ?だってね。欲しかったものだし。

 そしてフォローのタツキ、あざーっす。ついね、おばちゃんが出ちゃったよ。


「ここらで取れるもんだが、月に一度の行商まで持たないんだ。あるだけで300ガロンでいいぞ」

 あるだけって腕に抱えるほどあるよ、それはあかん!

 3000ガロン出す。キリッ。

 またタツキに頭を叩かれた。

(価格崩壊させる気か!)

「流石にそれは安いわ。こんなにあるんだし、1500ガロンでどうかな?」

 サナエが提案する。それでも安いけど、確かにタツキの言うことも大切か。残念…。

「助かりますじゃ…ならこちらの芋も付けましょう」

 山芋も一山こんもりとある。サナエを見ると微笑んで

「芋も含めて全部で2000ガロン出すわ」

「はぇー太っ腹だな…いや助かるがよ」

 交渉成立、だね。

 私はホクホクとしてきのこと山芋をカバンに収納した。村長さんは見ないフリをしてくれて

「ありがとーな。気を付けて行きなっせ」


 そう言って一度家に入ると何かを持って出て来た。

「妻が漬けたもんですが、良かったら。保存がきくでな」

 それは沢庵だった。おーどれどれ、なんと!すかさず私が確保ー!すぐに胸に抱いた。村長さんは驚いてからわっはっはと嬉しそうに笑った。

 こうして私たちはこのスナンの村を出たのだった。




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