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星なし転移者と仲間たち〜逃亡中〜  作者: 綾瀬 律
異世界転移?

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21.またお鍋だよ

異世界3日目の夜

 目を覚ました。あーちゃんが腕の中にいる…いつもの休みの光景だ。休日はいつもこうしてあーちゃんを抱いてお昼寝してたなぁ。

 はぁ、明日から仕事だ。嫌だなぁ、もっとこうしてあーちゃんとゴロゴロしたい。目の前のあーちゃんの頭に顔を埋める。ふふふっあーちゃんの匂い、慣れ親しんだ柔らかなその毛を堪能する。

 この日を楽しみに仕事してるようなもんだよなー。

 はぁ、明日は朝からメールチェックと決済かぁ。少し残して金曜日は帰って来たからな。朝からバリバリ働かなくちゃ。

 うとうと…あーちゃん…。



 あれ?あーちゃんこんなにもふもふだった?腕の中のあーちゃんと指さきにもふもふが?それに背中にぽよんとした柔らかな感触。

 ん…?目を開ける。瞬きした視界にいつものあーちゃんのゴールドな毛。その先に白いのが見える。白、白…白?


 あ、そうか…。ここは自宅じゃ無い。確かにいつものお布団じゃ無い。はぁ、そうか.異世界だったよ。

 あーちゃんの感触で完全に元の世界に感覚が戻ってた。

 白はラビできっと背中のぽよんはね、サナエだよね。はぁ、思い出したくなかったのか、良く分からない。こうやってジワジワと戻れないことを身にしみて感じるんだろうな。

 戻りたいのか、自分でも分からないけど。こうやって油断してる時が危ない。


 胸元のあーちゃんと指先に感じるラビを撫でる。もう帰れないんだ。そう改めて思った。

 ぎゅう…背中にサナエが抱きついて来た。

「シエル…」

 何かを感じたのか、サナエの声が震えていた。そうだよ、私より帰りたいかもしれない若い2人。おかんが弱音を吐いてる場合じゃ無い。しかも、気を遣わせるなんておかん失格だ。


 お腹に回されたサナエの手に手を重ねる。

「大丈夫だよ、サナエ」

 僅かに震えながら背中から泣き声が聞こえた。私はくるりと反転するとサナエを正面から抱きしめた。というかぽよんにダイブした。

 むぎゅう…う、嬉しいけど少し息が苦しいかな?サナエはボリュームをね、自覚しようね?

 もぞもぞして口と鼻を開放する。サナエが泣き顔のまま私を見て、そしておでこにキスした。

「しばらくこのままいさせて」

「もちろん…好きなだけこうしてよう」


 サナエの息づかいが聞こえる。背中に手を回してさする。何を考えてるの?帰りたいの?

 こちらにいる間はサナエがもういいよって言うまでそばにいるからね。

(ありがとう…お母さん)



 どれくらいたったか、サナエが動いた。見上げると泣き止んで少し恥ずかしそうにしている。

 その頬に手を当てるとふわんと微笑んだ。

「大丈夫?起きようか?」

 頷いたので起き上がった。何時だ?

「あ、もう5時だ…うわぁめっちゃ寝てたね」

「うん、疲れてたんだね」

「夕食の用意しないと」

「もうお鍋でいいんじゃない?」

「許されるかな?」

「食べられるだけ有り難いから」

「よし、じゃあ今日はオーク味噌鍋にしよう」


 スマホでエオンのショップを開く。味噌鍋の素…面倒だから楽していいよね?スープタイプとキューブタイプがある。んーどうしよ。

 あちらではほとんどお鍋の素って使ってなかったからな。キューブにするか、普通のスープにも使えるし。

 後は長ネギとニラ、キムチも買っとこ。〆はアレがいいかな。

 お漬物も買って、穴あきお玉も欲しい。一応、これも買ってと。うん、こんなもんだね。


「サナエ、野菜の皮剥き手伝ってー」

「うん、ピーラーある?」

「風魔法の練習だよ」

 私はニヤリと笑う。サナエはえっと驚いてからふふっと笑った。

「やっぱりシエルは斜め上だね…やってみる」

 練習にいいと思うんだよね、皮剥き。もちろん、わたしもやるよ?

 サナエには人参、私はジャガイモ。風魔法かな?いや水魔法でやってみようよ。

 水圧を意識する。ミニガンでジャーっとね。おぉースルスル剥ける。ただ、威力を間違えると中身まで削れる。

 あ…2割ほど減った。難しい、けど練習にはなるね。

 隣を見ると人参バラバラ事件が起きていた。何でそうなるの?


 そんなこんなで仕込みが終わり。少し早いけど隣に移動するか。

(おーい、マイクマストマイクテストー、聞こえる?)

(聞こえるぞ?)

(聞こえてる)

(そっち行っていい?)

(大丈夫だ)

「移動しよう」

 隣に向かう。ノックするとタツキが扉を開けてくれた。

「おじゃま〜」

「おう」


 亜空間から椅子を出して座る。

 チラチラとタツキとレイキが私とあーちゃんを見ている。

「あ、えっとさっきはありがとう。この子は私の飼い犬でアイカ。あーちゃんて呼んでる。ミニチュアダックスの女の子で、向こうでは8才のおばあちゃんだったの」

「アイカなのか、あーちゃんって言ってたからそれが名前かと」

「可愛いな、撫でてもいいか?」

「うん、人見知りだから嫌がるかもだけど」

 レイキが手を出すと匂いをスンスン嗅いで、ペロンと指先を舐めた。大丈夫みたいだ。レイキがそっと首元を撫でるとすりすりと寄って行った。


 男の人は苦手なんだけどレイキは大丈夫そうだ。

 タツキも横から手を出す。匂いを嗅いでしっぽでその手を叩いた。あ、ダメかも。触ろうとしたら唸られている。

 ぶふっ…。

 タツキの憮然とした顔が面白かった。

「男性は特に苦手なの、レイキへの反応が珍しいだけだよ」

「くっ可愛いのに…」

 そっとタツキが手を伸ばしたのであーちゃんの頭を撫で撫でして私の方に向ける。タツキは無事に背中を撫でられたね、良かった。

「毛が柔らかいな…」

「でしょ?ふわふわなの」


 タツキが撫で終わると隣に来ていたレイキの膝に自ら乗っていた。気に入ったのかな。


「少し早いけど夕食の用意出来てるよ?」

「明日の朝も早いし、疲れてるだろうから早く食べて早く寝るか?」

 タツキが聞く。レイキが

「そうだな、しっかり寝ておきたい」

「2人はちゃんとベットで寝なよ?今日は」

「「あぁ」」


 ということで夕食の準備。と言ってもお鍋を出すだけ。

 テーブルにドンッ。

「オーク味噌鍋だよ!」

 ぐつぐつと煮えている。

「うまそう」

「これはそそるな」

「明日から野営だし、自炊出来るなら野菜を切るの手伝って!魔法の練習になるよ」

 そこで私とサナエの野菜切り刻み事件の話をするとと笑われた。ならばやってみるがいい!


「もう食べていいか?この匂いが堪らない」

「どうぞー」

 レイキが1番に取る。つぎがタツキ、サナエそして私。みんな盛り盛りに取ってるよ。ふぅふぅ…パクッ、美味しいー。オークの肉は脂の乗った極上のお肉。脂がしつこくなく甘い。

 味噌鍋だけど唐辛子を入れてるから後味がピリッとしてて美味しい。

「うおっ、美味い、ふうふう…止まらんな」

「はふっ美味いな…ゴクン、肉がうまいよな」

「ね、たくさん食べられる」

 好評だね?

 具が減って来たな、ではこれを投入。


「〆のラーメンだよ!」

「マジか!デカした」

「来たなラーメン」

「嬉しい」

 好評だね?私もラーメン大好きなのさ。ふふふっお鍋用の細くてノビないヤツだよ。

 ぐつぐつとしてる。かき混ぜて麺をチェック。お箸を持って待ち構えるレイキとタツキ。

 よし、オッケー。

 頷くと我先に、とお鍋に箸を突っ込む。

 みんなが取り終わってからラーメンを掬う。一口でいいかな?お肉を食べ過ぎだから。

 ツルンッ、あー美味しい。ヤバいね。お腹はいっぱいなのに…。やめとこ、お腹がはち切れそう。


 やがてみんなも食べ終える。いや、スープまで無くなってるよ?有り難いね、残さず食べてくれて。

「いや、マジで美味いわ。味付けが絶妙だ」

「あぁ家庭の味だな、こっちでこんなに美味い鍋が食べられるとはな」

「うんうん、でも一緒に食べて感想が言える仲間がいるから余計に美味しいよね」

「だな」「あぁ」

 良かった、わたしも嬉しいよ。


 片付けは男性陣がしてくれた。水魔法で鍋を洗い、汚れた水は水魔法で包んで外に捨てる。

 練習になるよね。

 緑茶を入れてマッタリする。はぁ落ち着く。


「いよいよ、ここを出るんだな」

「楽しみだけどやっぱり少し不安だな」

「…」

 そう、召喚されたここを出る。それはもう後戻りが出来ないということ。

「わ、私ね、話したいことがあるの」

「ん?何だ?無理に今、話さなくても」

「ううん。今だから話したいの」





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