20.市場で買い出し
食料、食材、衣類に布や糸など、色々と売っている。
魔獣の皮とか素材も売ってたよ。値段を見ながらそぞろ歩く。
あ、この辺りだな。
まずは調味料。塩は買う。砂糖も少し高いけど買おう。入れ物は陶器の壺だった。詰め替えたらいい。コショウとか唐辛子も売ってた。バジルが欲しかったけどやっぱり無い。探すかね、
塩は岩塩で、一塊拳大で1000ガロン。高いな。砂糖は手のひらサイズの壺入りで2000ガロン。高い!詰め替えて使おう。
次は食材。お肉は猪もオークもあるから間に合ってる。魚は…売ってないな。残念。野菜は買おう。
ジャガイモに人参、玉ねぎにキャベツ、レタスや大根もあった。お、蕪発見。あーやっぱり芋はジャガイモだけか。里芋とか山芋は山で探そう。
チーズ発見。それは欲しい。カマンベール風のチーズとハード系のチーズが売ってたので、買う。
これは両手に乗るくらいで2000ガロン。安いんじゃ無い?
ベーコンやハムも売ってる!これも買いだね。
一塊で1000ガロン。安いね。あとは味かな。鑑定で見る限りは美味しいみたい。
そして、パン。硬めのボソボソしたパンは喉を通らないから柔らかいパンが欲しい。でもやっぱり無い。
「柔らかいパンが無いね?」
小さな声でタツキに言う。そう、相変わらず手繋ぎ中。
「だな、小麦粉から焼けないのか?」
「焼けるけど、あっちの材料を使うのはマズイから」
「あーそうか」
「トルティーヤみたいな薄いパンなら焼けるよ」
「それでいいんじゃ無いか?一応、硬いパンも買ってパンがゆとかパングラタンにしたらどうだ?」
「あれ?タツキは料理が出来る系の男性だったの?」
「単身赴任も長かったしな、ある程度は」
「パンが無いのも不自然だし買おうか」
と言う事で、硬いパンもお買い上げ。フランスパンみたいにカットして何かを上に載せて食べてもいいかな。薄く切れば食べられるでしょ。難しいならラスクにしたらいいか。
そして、粉だ。小麦粉だね。どうやらいわゆる薄力粉も中力粉も強力粉も小麦粉としか表示されていない。
中身の違いは鑑定さんが教えてくれる。
強力粉と薄力粉だけ買った。片栗粉はエオンで買おう。
こんなもんかな?
「何か欲しいものある?」
「今の所大丈夫だな」
「私も」「俺も」
「なら帰って石けんの詰め替え手伝ってー」
「「「うん」」」
と言うことで市場を出て宿に向かう。
少し歩くと肩のラビが耳をピクピクさせてぷもん、と鳴いた。ん?周りを見回すとなにやら少年たちがボロ切れを蹴っている。あれ?ボロ切れが動いた?あ、あれは…無意識に走り出していた。
「何してるの?!」
少年たちはボロ切れから顔を上げて私を見る。
「んだよ、お前。コイツを可愛がってんだよ!」
「そーだぞ?」
「汚いから躾けてんだ」
よろよろと逃げようとするボロ切れを捕まえて首を掴んだ。
私は頭に血が昇ってその少年の鳩尾に膝蹴りを喰らわした。
ぐえっ…
ボロ切れが少年の手を離れる。すかさず風魔法で私の方に引き寄せて、胸に抱える。
きゅぅぅ…ボロ切れが鳴く。
私は両手でそれを抱きしめると少年たちを睨んだ。
「あぁ何すんだよ!」
残りの少年たちが襲いかかってくる。
(手出しは無用!)
背後で短剣を構えたタツキに向かって言う。いや、レイキのそばで姫が前脚を蹴って飛び出そうとしていたし、サナエは魔力をねっていた。死なすからやめて?過剰な戦力だよ。
それに私の獲物だ。弱肉強食なら私が強者だと教えてやる!
腕にボロ切れを抱きながら、大ぶりな拳を簡単に避ける。すれ違い様に足を引っ掛けて脛を蹴る。
倒れた少年の股下を蹴り上げた。金的だ。
うぐっ…
後ろから振りかぶった少年を避けて膝を鳩尾に入れて、倒れ掛けた少年の顎を蹴り上げる。
ごはっ…
横から遂に剣を抜いた少年の前にタツキが割り込んで短剣で剣を飛ばすと、柄で顔を殴打した。
ぐはっ…
「ありがと」
「おう」
私がこれ以上、目立たないようにしてくれたタツキ。流石だな。
少年たちはなんとか助け合いながらヨロヨロと逃げて行った。ザマァ見ろ!
私は腕の中のボロ切れならぬ生き物を見る。多分、犬だ。可哀想に。垂れた耳に短い足、長いしっぽ…既視感…えっ…えっ?
気がつくと、薄暗い路地でタツキのローブの中に包まれていた。
顔を上げる。
「はぁ、急に泣き出すから焦ったぞ?」
えっ…泣いて?頬を触ると濡れている。私は腕の中を見る。そこにはボロ切れはいなくて艶やかな金色の犬がいた。
…ちゃん、あーちゃん…、あーちゃん?
(ママ!)
あーちゃん?
(うん、ママ。会えて良かった。ずっと探してたの。助けてくれてありがとう)
あーちゃん?本当にあーちゃん?
(そうだよ、ママ。追いかけて来たの)
あーちゃん、あーちゃん…あーちゃん、会いたかったよぉ。うううっあーちゃん、生きて、生きて…あーちゃん…うぐっあーちゃん。
(ママ、ママ、そうだよ、探しに来たんだよ!ママ、ママ泣かないで、ママ)
きゅーんきゅーん。あーちゃんのその柔らかな毛に頬ずりする。するとふわふわな毛を感じた。
ラビ、見つけてくれてありがとう。
(ご主人様の匂いがしたから)
肩の上でラビが頬にすりすりして来た。
あーちゃんはボロ切れみたいな状態からいつの間にかきれいになって、引き摺っていた足も腫れていた目も治ってる、良かった。
(覚えてないのか?お前が治したんだぞ?あんな人目のある所で魔法を使おうとするから、気が付いたレイキがお前を抱えてここまで走ったんだ。それから俺がローブに隠した)
(そうだったの?レイキもタツキもありがとう…なんかかなり頭に来てさ、生き物だって気が付いたから。でもまさかあーちゃんだとは思わなかったんだけど)
(あー、お前が本気で怒ってるのを感じてな。お前って時々、感情のタガが外れるからな)
(ごめん…無意識だ)
(まあなんだ、良かったな)
チラッとレイキを見る。戸惑った顔だけど優しい目付きだ。
サナエは心配そうに見ていて、手を上げたり下げたりしている。私はタツキのローブから抜け出るとサナエにダイブした。
サナエはぽよんと抱き止めてくれる。ぽよよん…に頬ずりして少し力を抜いた。
「石けんの詰め替えてしないと」
「その前にその子の登録だな」
また冒険者ギルドに戻った。手分けしようって言ったけど、結局石けんは私がいないと買えないからとみんなでね。
いや有り難い。
で、別れの挨拶をしたジアンさんにペット登録をお願いしたのだった。
今度こそ宿へ戻る。どうやらあーちゃんは犬ではなくて魔犬らしい。だからペット登録と思ったら従魔登録になった。名前はアイカ。あーちゃんって呼んでるけど、アイカだ。
また仲間が増えたね!私はアイカを腕に抱えて宿に戻った。ローブに隠して部屋に連れて行く。
男性陣の部屋に集まって、石けんの注文をしてもらう。その場にいて私がスマホを起動させれば、他の人でも操作は可能だ。
私はあーちゃんを撫でりなでり。柔らかくて温かい。あちらではもうおばあちゃんだったけど、若返っていた。まだ6ヶ月だって。まだたくさん一緒にいられるね?嬉しいよ。
石けんと袋とビーフジャーキーが買えたので詰め替え作業だ。膝にあーちゃんを載せてせっせと詰め替える。
すぐに終わった。後はギルドに届けたら今日の予定は終わりだ。
またみんなで商業ギルドを訪ねて、予定の数を納品した。明日、この王都を離れると話をすると
「次はどこに行かれるのですか?」
と聞かれた。しばらくはサウナリスかな。
「サウナリスの予定」
「でしたらぜひ、サウナリスでも納品をお願いします。担当にも伝えておきますから。ぜひお忘れ無く!」
必死だったよ。こちらも現金が得られるので願ったり叶ったりだ。
「間違いなく」
また深々と頭を下げられた。
牛さん石けん 180×250=45000
ウタマル石けん 180×400=72000
ビーフジャーキー 18×5000=90000
現金が増えたよ!
意気揚々と宿に戻る。今日はラビは部屋に連れて来た。
まだ午後3時。夕食まで休む事にした。私はアイカとラビを抱えてベットに横になる。腕に抱えてその匂いを嗅ぐ。懐かしいアイカの匂い。私はその匂いに安心して、少しだけ切なくなって目を閉じた。
サナエとシエルは部屋に戻って行った。どちらからともなく、顔を見合わせる。
「はぁぁ、焦った…」
「本当にな、シエルは突然だからな」
「無自覚だろうが、自分がやらなきゃとか思ってんだろうな」
「それはタツキもだろ?」
「まぁな、分かるんだよ。年齢的にな」
「でもな、その感情を持て余してるのか…意識飛んでるだろ?」
「まぁいい傾向なんだろ。1人なら、ああはならん」
「頼られてるってことだよな?」
「それも無意識だろ」
「あいつの能力もたいがいチートだからな」
「いつか壊れそうでな」
「それは大丈夫だろ。タツキにはかなり頼ってるし」
「レイキのことは信頼してるよな」
「あー能力的には近いからな」
「まぁみんなでフォローすればいい。シエルには本当に助けられてる」
「だな、しかしな…あーちゃんが追いかけて来たとかな?」
「それな?でも可愛いよな…」
そんな会話がされている事など知らずに私はうたた寝をしていたのだった。
※読んでくださる皆さんにお願い※
面白い、続きが読みたいと思って貰えましたらいいね、やブックマーク、↓の☆から評価ををよろしくお願いします♪




