15商売もしとく?
2日目夜から3日目
「じゃあ私はルーの織った布とか糸を販売するかもしれないし、商業ギルドに登録するよ」
という事で、方針を決めた。
「石けんは何がいいかな?やっぱり牛さん石けん?あ、ウタマル石けんもある」
「ウタマル石けん?」
「洗濯の補助で使ってた。襟とか袖の汚れが良く落ちる」
「へーさすが主婦」
ちょっとドヤってみた、ふふふっ。伊達に長年、主婦をしていないぜよ。
「なら普通の牛さん石けんとウタマル石けんにすればいいな」
「プラスチックの袋はダメだろうから何か…あ、これは?」
ラッピング用のカラバリ豊富なオーガンジーの袋だ。サイズもちょうどいい。
「シエル、石けんてこんなに安かった?」
「分からない、しばらく買ってない。ウタマル石けんは明らかに安い。だって一つ50ガロンだし。倍以上したはず」
「どれ?えっ、牛さん石けんは10個で300ガロン?安いな」
タツキが横から覗き込む。
「だよね?こっちの世界の石けんは油っぽくて、でも高いんだって(魔法通信調べ)」
「なら収入にはなるか」
「ひとまず20個?10個?」
「20個用意しといて、まずは10個出せばいいんじゃないか?」
レイキの意見を採用。
「ウタマル石けんは?」
「同じだけ用意しとくか」
こっちは麻っぽい袋に入れる。手分けしてやったよ。
「ビーフジャーキーは?」
「そのお得用を2つ買って、大きな袋に入れたら」
「小分けじゃなく、あちらで量り売りしてもらうのか」
「うんうん」
こちらも大きめの麻袋に詰めた。
「あ、あちらの試食用に少し取っておこう」
「ついでに試食したい!」
レイキの目がキラキラしている、仕方ないな。みんなに一切れずつ渡す。ハムッおぉ、ジャーキーだね!うまうまー。
「やべー美味い」
「止まらんな」
「お酒飲みたくなるね」
みんな飲める口かね?私は残念ながら下戸なんだよね。もしかして飲める様になったりしてないかなー?
「えっ?シエル飲めないのか?飲めそうな顔なのにな」
「それ良く言われる。顔で飲むなら飲めるのにねー」
「ぶはっ、そうだな」
「俺はザルだ」
タツキはザルと。
「俺もだ」
レイキもか、羨ましい。
「私は枠なの」
まさかの枠来た!しかもサナエだ。にこにこしてるよ。私は異世界転移特典で飲めるようになってないかね?
「ねぇもしかして私って未成年?」
「あー本当だな。成人は16だってさ」
レイキが鑑定で確認する。
「残念だー、もしかして飲めるようになってないかと思ったのに」
「まぁ、なんだ、機会があれば試したらいい」
そうだね。
「ふわぁそろそろ寝ようぜ」
「そうだね、疲れたし」
「おやすみ」
「おやすみ」
サナエと部屋に戻る。
シャワーを浴びて着替えて。私はTシャツにスエット。サナエはパジャマだ。
サナエがそっと私のTシャツの裾を引く。
「シエル、その…」
やっぱりまだ不安だよね?
「一緒に寝る?」
「うん」
まだこっちに来て2日。不安だよね。私は子供はいなかったけどサナエは子供くらいの年齢だ。
不安に思って当たり前だよね、しばらく一緒に寝よう。1人でも平気になるまで。
おかんを頼ってね!
一緒のベッドに入る。サナエのぽよんに抱きしめられて目を閉じた。すぐに睡魔がやって来た。すやぁ。
隣で眠るシエルを見る。シエル、あなたがいてくれて本当に良かった。女が1人だと凄く不安。同性がいてくれて凄く良かった。それにシエルはおかん気質。そのくせ泣き虫。なぜかそれが見ていて安心できる。代わりに泣いてくれてるみたいで。
自分を認めてくれて受け止めてくれる。ありがとう、シエル。これからもよろしくね、お母さん。
私はそっと呟いて目を瞑った。
目が覚めた。いや、息苦しくて目を覚ました、かな。ぽよよんから抜け出す。ぷはー危険だった。
ぽよんで命の危険とかね、笑えないよ。
そっと抜け出そうとするけど背中をがっしりホールドされている。しばらくそのまま待っていた。
うーん、と呟いてサナエが寝返りを打った隙に抜け出る。
ふぅ、スーハ―と深呼吸。
さて、ラビちゃんに会いに行こう。
ローブにフードを被って部屋をそっと抜け出す。宿の裏口から小屋に入ると、おわぁびっくりした。
だってさ、床にフードと毛布をかぶったレイキが寝転がっていたから。
腕に王子と姫を抱きしめている。姫の耳が毛布から覗いているよ。
そして近くにはタツキもいた。やっぱりフードと毛布をかぶって多分、リリを抱きしめて。隣に丸っこいふくらみがある。
ラビちゃん?あれ、いない。ラビちゃん…?
するとタツキの毛布から顔が出てきた。ラビちゃん!良かった。タツキが一緒に抱いて寝てくれたようだ。
「おはようラビ、寂しかった?」
(うん、でもタツキもリリもいたから)
「そうか良かった」
(うんご主人様おはよー)
ふわふわのぽかぽかだね?その頭を指で撫でるとすりすりと寄ってくる。可愛い。
「ラビ、お散歩行こうか?」
(行きたい!)
私はラビを抱えて小屋の外に出て、裏から通りに出た。季節は春くらいか、寒くない。
少しだけひんやりとした空気が心地良い。
そのまま、まだ人通りがすくない通りを歩いて行く。公園に着いた。ベンチに座ってラビを撫でる。
お鼻がぷもぷもしてて可愛い。
(人がこっちに来るよ)
(怪しい人?)
(ギルドの人)
顔を上げると登録窓口の目つきが鋭いお兄さんが私に向かって歩いてきた。
少し手前で止まると
「おはよう、シエルだな?」
「うん、おはよう」
「みんなは?」
「まだ寝てるよ」
「人が少ない時間に1人で出歩くのは危ないぞ」
「そうなの?」
「あぁ、宿まで送って行こう」
「ありがとう」
ベンチから立ち上がる。お兄さんはいつも座っていて分からなかったけど背が高い。レイキと同じくらいかな?そして意外に体付きがしっかりとしている。
「冒険者ギルドは特に荒くれものが多いからな、職員もそれなりに強くないとダメなんだ」
へー?
「女の人も?インクリスとか」
「あー女性は別だな」
「そうなんだね、強いの?」
「冒険者ランクだとBだな」
え…それってかなり強いよね?驚いて見上げるとふふっと笑って手を差し出してきた。ごく自然にその手を握る。大きな手だった。
「おっきな手」
「そうか?ふふっシエルは小さくて可愛いからな、特に気を付けろよ?」
「そんなに小さい?」
「あぁ小柄な女の子は特に狙われやすい。その髪の色もな」
私は自分の銀髪を見る。
「高く売れるんだよ、銀髪の女の子は」
「売れるって?」
ゾワリとして聞く。やっぱり奴隷とか?
「公式には奴隷は禁止だ。でも密かに家で飼っている。見るだけってのもあるし、そのな、いやらしいことをするためってのもある」
えぇ。怖い。思わずしっかりと手を握りしめた。
「君のところのリーダーはきっとよく分かっているだろ?手をこうして繋いでいた」
だからなのか?分かってて。ダンサーのチートな危険予知なのかな。気を付けよう。
宿に着く手前で多分、私を探そうとしていたタツキと会った。私を見ると慌てて走って来る。
「シエル!良かった。サナエが探してた」
「あ、ごめん。まだ朝早かったし散歩に」
「危ないだろ!1人で出るな」
「ほら、彼はちゃんと分かってる。心配かけちゃダメだよ」
「はい、あの…」
「ジアンだよ、シエル」
「ジアンさん、ここまで送ってくれてありがとう。ギルドは大丈夫?」
「あぁ大丈夫だ。いつも早めに行ってるだけだから。ちゃんと見てろよ?こんないい子が攫われたりしたら大変だ」
「あぁ、気を付ける。ありがとなジアン」
ジアンさんは手を挙げて去って行った。その前にさりげなく私の頭を撫でて。いい人やね。
「こら、心配するだろ?中身はともかくお前は一番攫いやすいんだから」
「ごめん。いつもの癖で。ラビもいるし簡単には攫われないけどね」
「だとしても、だ。心配させるな。サナエが泣きそうな顔で小屋に来たぞ?起きたらシエルがいないって」
あちゃーそうなるのか。やっぱりまだ不安定なんだな。
「急いで戻るよ」
タツキと手を繋いで宿に戻った。入り口付近でサナエがレイキに付き添われて立っていた。私を見ると泣きながら飛びついてきた。
「シエル、良かった。もう、起きたらいないから心配したんだよ!勝手にいなくならないで。シエルまでいなくならないで…」
サナエ、むこうで何かあったのかな?こんなに反応するとは思わなかった。でもごめんね。
迂闊だったよ。だから泣かないで?ごめんね…。
「ぐすぅ、ごめん。シエルは悪くないの。私が、私の…ぐすっ」
「いいよ、言わなくて。気持ちの整理がついて話したくなったら聞くから、ね」
ありがとう。消えそうな小さな声でサナエが言った。
某落語家さんは関係ありません…
ロをルに変えただけ
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