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星なし転移者と仲間たち〜逃亡中〜  作者: 綾瀬 律
獣人の国ヤールカ

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123/127

119.スイレン

 ラビラ・レイで過ごした後、今度はウルグ・レイに出発した。そして1週間で到着した。そこはヤールカの鍛治の町、別名はローゼンだ。ここは当面の目的地だった。

 バーキンが工房にこもりたいと言ったから。


 元々は私たちが頼んだ武器や装備品を仕上げる為。

 私の杖と私のローブは仕上がっている。わたしが眠っている間にローブを仕上げてくれていた。薄紫のローブは滑らかで軽くて、とても動きやすい。

 スイレンとお揃いの服は前合わせの着物みたいな白い服。腰には薄い紫のサッシュ、そしてサテンみたいなつるんとした足首がしまったパンツ。革のサンダル。


 スイレンとはいつも一緒で、シビル・レイからは特に問題もなくここまで辿り着いたからか。ようやくタフとシェリルの過保護が緩んだ。そして、やっとレイキと話が出来る。スイレンは当事者だからいても大丈夫。


 なので、3人で庭に出た。

 並んで芝生に座ると

「シエル、スイレンは…」

「うん、やっと話せる。スイ(そう呼んでと言われた)はあの水龍の生まれ変わり」

「そうか…。眠ってる間の記憶はあるのか?」

「うん」


 湖の中で起きたことを話す。

「精神体…?」

 そうなるよね?なのに実体がある不思議。触れることも出来たと言えばレイキも頷くしかない。

「そんな事が…」

 私もなんと言うか、どう反応すればいいのか迷う。まさか精神体で水龍と子を作ったとかね?しかも私は産んでないし。必要なのは魔力の器ってことかな。

「その、今の体は…?」

 どうなんだろう?検証する方法もないし、分からない。

「今のシエルは未開通だよ?」

 スイ、言い方。


 まぁ誰かに話したくて、でもタフやシェリルには無理だったからやっと話せて良かった。レイキなら受け止めてくれると思ったから。

「シエル…」

「何?」

「そのな、もっと年がいって大人になって…その、シエルが誰かを望むなら。俺に言ってくれ」

 真剣な目で私を見るレイキ。多分、分かっている。私たち⭐︎6同士は離れてはいけないと。あまり意識はしていなくても、やっぱりレイキのそばは心地良い。

 だとしたら、私たちが長生きする為にはそばにいる必要がある。でも、それではレイキは?


 迷っていると

「シエルなら構わない。それにお互い様だろ?」

 それはそうだ。この先、もしかしたら誰かに恋をするかもしれない。しないとは思うけど、絶対なんてない。

 1人で生きる為に森に入り、見染められて結婚したアンナさんのように。

 1人で生きようと決めても押し切られて納得して、結婚したマコトさんみたいに。

 この先も誰かを好きにならないと決めつけられない。ならば確かにお互い様だ。


「分かった。優しくしてね!」

「精神体で経験済みだろ?」

 確かに。2人で笑い合う。なんとなくこの話をしたらタフとシェリルはスイとギクシャクしそうでね。

 言えなかった。

「僕もいるよ!」

 だって。

「スイは人間?」

 前にも聞いたけど。

「体はね、この子は昔々に生贄として捧げられた子。まだ12才だったんだよ」

「えっ…?」


 その後聞いた話は衝撃的だった。

 湖が荒れると水龍様の怒りを鎮める為と言ってまだ幼い子を生贄として湖に捧げてたんだって。

 スイの体はその子のもの。魂は旅立ってしまって、スイが体だけを保管してたとか。

 この子は魔力が多くて、まだ幼いのに生贄にされた。だからいつか、その体に入れるように大切に保管していたと。で、昇天した時に私に記憶の籠った龍玉を託した。

 そしてハシュラル様に導かれて再会し、その記憶を体に取り込んだ。

 その際に水龍の能力も取り込んだから、人でもあり水龍でもあるらしい。


「だから僕はシエルと結婚する!」

 朗らかに爆弾発言。

「だってね、もう経験済みだし」

 それはそうだけど、違うよね。まぁ今すぐ決める事でもないし。

「レイキはバーキンと結婚すると思ってた」

「ぐふっ、げほげほっ」

 ここヤールカでも、帝国でも同性婚は可能だ。ハイランダーはダメらしいけどね。

「子供も作れんでしょ?」

「ああ、魔女の秘薬があればな」


 あぁ、それもあったな。

 シェリルに熱烈な子供が欲しいと言われていたんだ。私はまだ子供だから無理だよと言ったんだけど。

 魔女の相手も魔力が多くないとダメで、だから私やレイキ、タフじゃないとダメなんだと。ならばタフでいいと思うんだけどね?エルフの血とは相性が悪いんだって。


「レイキはシェリルのことは…?」

「シエルが無理なら俺なんだろうな」

 苦笑する。

「まぁあんな美人だし、タフが控えめに言って最高だとか言ってたし。まぁそれもアリだとは思うんだが」

「シェリルも満更でもなさそうだよね?」

「彼も血を残さないといけないからな…」


 どうやらパオ族の魔女はその血を残す事が宿命。シェリルは婚約者がいる。女性で、その人との間に子供がいるんだって。そばにいなくてもいいのかと思えば

「婚約はようは子を残すための言い訳さ」

 要するに夜を共にする為にそういう体裁をとっていると。だからぶっちゃけセフレみたいなもんだ。


(おい、言い方!)


 で、子供がいると。でもなるべく多くの子を残す必要があって相手を探していた。パオ族の婚約者とはもう10年近く会ってないって。別に好みでもなかったからと。

 魔力が釣り合うと言うだけで選ばれた相手は美人だけど性格がキツくて合わなかったって。

 シェリルの婚約者になったとマウントを取りまくった凄く嫌だったとか。

 体はなかなか良かったから夜だけ寝て、子が授かったのを確認して放浪の旅に出たんだって。

 やり逃げか…!


(おい、だから言い方!)


 って事で相手探しなのだよ。魔女の秘薬は貴重で(なんと魔魚の鱗から作る)だけら相手は女性がいいと。

 サナエは?と聞けばあの子はダメだって。魔力量が少ないから壊れちゃうんだとか。

 難しいんだね。


 そんなこんなで正式に

「子供を私と作って欲しい」

 と言われて、断った。まだ13だし。そう言えば

「あと3年、待つぞ」

 3年もまとわりつかれ…もとい待たれるのか?

 シェリルは誰もが認める美人さんだ。その肌はしめやかで艶があり、しなやかで柔らかい。確かにタフ曰く

 控えめに言って最高だった、も納得出来る。


 もう少し悩もう。




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