12.仲間が自然と増えた
タツキとサナエは目を白黒させている。
「何だかよく分からんが、良かったんだよな?」
「子牛可愛いね?」
「子牛の名前は王子だからな、よろしく」
2人は良かったんだよねと呟いて頷いている。1mくらいならそこまで大きくないからね。
(私たちはいざとなれば大きくなってご主人たちを乗せるよ!)
姫に乗れるんだ?私たちってことは王子にも?
(僕も大きくなれるよー、シエルなら小さいから乗せられる)
まず、何で私は呼び捨て?
(シエルだから?)
「ぶはっ」
吹き出すレイキ、解せぬ。
(ご主人、まだいるのー。鳥さん、出て来てー)
ぐわっぐわっ。
鳥さん、だね?確かに。飛べないけどね、大きいけどね?
「うわ、何てキュートな」
現れたのは飛べない鳥、ダチョウだ。ダチョウをみてキュートって言えるタツキが凄いよ。大物だね?
目がキラキラしている。タツキのツボもなかなかだね…?
ぐわっぐわっ(助けて欲しいーの)
「もちろんだ!あぁなんて可愛い。ふわふわな羽。凛々しい顔。細くて長い脚、丸くてかわいいお尻。すべてが理想を体現しているようだ」
…タツキの理想はダチョウだったんだ?まぁいろいろな性癖があるよね?
ぐふっ…「性癖…」
レイキが吹き出して
「性癖なのね…」
サナエまで唖然として呟いていた。
「名前、名前だな、こんなに可愛いんだ、そうリリだ、リリちゃんだ!」
ダチョウの名前がリリ…あり、ありなのか?
ぐわっぐわっ(嬉しいーの)
喜んでるね?タツキがとろけそうな顔でダチョウの首を撫でる。するとふわんと光った。
そしてやっぱりダチョウの目が青くなった。
「うわ、魔鳥に進化してる」
「してるね、2日に1個卵を産んでくれるって。しかも風と土魔法が使える」
「ふふはは、俺のリリは凄いんだぞ!」
ドや顔だね?タツキ。するとリリはふわんと光りながら小さくなった。鶏くらいの大きさ。
「ふおーーー、俺のリリたんはなんてきゃわゆい!」
君はキモいな?リリたんとかきゃわゆいってね…もう死語だね。うん。
私のつぶやきにも反応せずに腕にリリを抱えて頬ずりしているタツキ。完全に顔がトリップ状態だよ。
うん、君子危うきに近寄らずっとな。
(ご主人様ーまだいるの。くーちゃん出て来てー)
サナエのすぐ横にある木。その木から張り出した枝からスススーと何かが降りて来た。えっ、何?怖い。
「キャー可愛いーーー!」
いつになくテンションの高いサナエ。
そこには灰色でふわふわな10㎝はある大きな蜘蛛が木の枝から吊り下がっていた。
「もう、なんてふわふわで可愛いのぉ」
サナエがくねくねする。マジで?
「あれ、可愛いか?」
小さな声でレイキが私に聞く。
「いや、だってあれ毒蜘蛛にそっくりだよね?タランチュラとかあれ系の」
「だよな?サイズ感といい、足の毛といい…」
今まさにサナエは蜘蛛に頬ずりしていた。チャレンジャーだね?
「名前ね?こんなに可愛いんだから、そうねルーよ!」
毒蜘蛛の名前…そんなに可愛いのでいいの?もっと尖った名前の方が良くない?
「毒蜘蛛にルーとか攻めるな?」
牛に姫と王子って付けたレイキが言うの?思わずジトっとした目でレイキを見てしまったよ。
(ありがとう)
蜘蛛はぽわわんと光ると、白くなっていた。そして複眼は青。これもか?
「種族進化してるな。魔蜘蛛だってさ」
「絹糸を出してくれるって、それは凄いね。しかも糸で周囲に結界を構築。野営で夜の見張り要らずだね?」
「ふふっ私のルーは凄いのよ!」
サナエさん、何かのスイッチ入ったね?
サナエがルーを両手に包んで指で撫でるとまたほわわんと光って小さくなった。5㎝くらいの大きさ。
そしてサナエの肩に止まっている。
(ご主人ーありがとう。仲間から追い出されたみんなで助け合って暮らしてたの。またみんなといられて良かったー。私は戦闘は苦手だけど、気配には敏感だから、任せてね!)
「ラビは気にしなくていいんだよ!このパーティーには強い人がたくさんいるからね」
(うん、でも穴掘りも得意だからね!)
私のラビちゃん可愛い。
「よし、そろそろ帰るか」
トリップから帰還したタツキが言う。
「だな、大切な仲間も増えたしな」
優しい目で姫と王子を見てレイキが言う。
「そうね、大切にするわ」
サナエは肩の上のルーを撫でてる。
「ねぇ登録とかいるのかな?」
ふと疑問に思った事を聞いた。ほら、ラノベで良くある従魔?登録とかね。
「「「あー」」」
「帰りにギルドに寄るか?」
「うん、それに宿に連れて行けるか分からないし」
「あーそうか」
「まずは帰ろう」
ということで帰ることに。かなり奥の方に来てたんだけど、ラビの探索能力は広範囲だ。私よりもかなり早く気配を察知する。
そして姫と王子、リリは戦闘能力も高かった。
どちらも蹴りがね?姫と王子は前脚で、リリはキックで。元から戦力過剰気味だったんだけどね?さらに戦力が上乗せされたよ。
「もう護衛とか要らないよな?」
「確かにな」
「そうよね」
「戦力だけならね。でも野営とかこちらのルールとか。知らないことが多いから聞けるなら聞きたい。調べたら分かるんだけどね」
「それもそうか」
「一応、戦えないって言ってあるし」
「この世界の事や旅の仕方を教わればいいな」
ってことで、予定通り護衛はお願いすることに。でもこのメンバーならもう戦力は十分だよね。
門にたどり着いて門番にカードを見せる。
「従魔か?」
「うん!登録いる?」
「いるぞ、ギルドに行けばいい」
「分かった、お兄さんありがとう」
門番さんはにこにこと笑って、なぜか私は頭を撫でられた。解せぬ。
隣でレイキは爆笑してるし、失礼な。
そのまま冒険者ギルドを目指す。
そして町中ではまたタツキと手を繋いでいる。ほんと何で?
憮然としながらギルドに着いた。まぁ肩をいからせて前から来る冒険者にメンチきって堂々と進むタツキは確かに頼れるよ?でも私と手を繋いで鳥を抱えている何とも言えない絵面だ。
扉を開けて入る。登録窓口かな?と思ってカウンターを見ると、昨日の目線の鋭いお兄さんと目が会った。頷かれたのでタツキの手を引いて登録窓口に向かう。
「よう、なんか色々と増えたな?」
「なんかね、どうしたらいいの?」
「登録だな。カード出してな」
みんながカードを出す。
「まずはお嬢ちゃんからだな、白うさぎ。名前は?」
「ラビ」
「よし、いいぞ。首に何か巻くように。後はこれ」
渡されたのは小さな札。監察札みたいな物かな。
「それがあればペットだと分かる」
頷いた。それぞれ同じ手続きをする。姫と王子、リリとルーの名前を見てコワモテのお兄さんの顔が耐える顔になったのは見逃してないよ?
牛に姫とか王子とか、ダチョウにリリとか毒蜘蛛にルーとかね、センスを疑うよね?
(((誰かのうさ子も大概)でしょ)だろ)
解せない。
憮然としていたらまたお兄さんに頭を撫で撫でされた。
「可愛いお嬢ちゃんに似合うな!」
鋭い目を緩ませて褒められた。素直に受け取っとくよ!可愛いのところね。
「ぐはぁっ」
レイキ、ほんと失礼な。崩れ落ちるほど笑わなくても…腹筋きたえられたよね?確認してやるぅ。ツンツンしてみた、あっ硬いな。
するとおでこをペシッとされる。今度は脇腹だ。ツンツン、おでこをペシペシッ。
「お前らじゃれてないで掲示板見ようぜ」
タツキに言われた。
じゃれてないけどさ。
掲示板は入り口付近から奥に向かってランクが上がっていく。登録したばかりの私たちはEランク。1番上がAランク。で、その上にはSがある。
依頼は自分のランクの一つ上まで受けられる。
そうそう、パーティー登録もした方がいいのかな?
タツキを見る。
「ん?あぁ、どうするパーティー登録。報酬は均等割になるが?」
もちろんそれでいいよ。役割分担だし。
「そうだな、しとくか?」
「うん、憧れだったの」
サナエが可愛い。肩に毒蜘蛛載せてるけど。
会話が聞こえたのか登録窓口の鋭い目付きのお兄さんが声を掛けてくれた。
「もうパーティー登録するか?」
「出来るならしたい」
またカウンターに戻る。
「冒険者の活動はまだ先かと思ったから言ってなかったが」
と簡単に説明してくれた。
報酬はカードに付随する口座に均等割で振込。冒険者ものに良くある荷物持ちは報酬なし、とかは出来ない。
1番高いランクと低いランクの差は2つまで、これは初心者が高ランクに寄生しない為と、高ランクが低ランクを搾取しない為。良く出来た制度だ。
その他に注意事項を聞いた。少なくとも私たちは同じランクだし、今後は討伐数で明らかに差が出るけど、それは仕方ない。
「俺はもちろん、パーティーを組みたい」
「私も…」
「俺もだな」
「私もだよ、戦闘力無いし…じゃあ決まり」
(お前が戦闘力無いとかないだろ?チートが)
知らなーい。だって魔法禁止だしさ、レイキの発言は丸っと無視だ。
またおでこをペチリとされた。お腹ツンツンの刑だ!
タツキに引き剥がされた。
「だから戯れるな!パーティー登録するぞ?」
戯れてないけど…。
「「はーい」」
※読んでくださる皆さんにお願い※
面白い、続きが読みたいと思って貰えましたらいいね、やブックマーク、↓の☆から評価ををよろしくお願いします♪




