111.シビル・レイ
面倒見がいいわけじゃない。好きなものは好き、それだけ。
「バーキンは?」
「俺?んーどうかなぁ。あまり意識したことはないかも」
「まだ若いからね…」
変な顔をされた。見た目は若い私だ。
あーちゃんを追いかけて私も走る。捕まえたっ!一緒に芝生に転んだ。まだ雨を含んでいて湿っていたけど気にしない。
あーちゃんが口元をペロリと舐めた。ふふっ可愛い。垂れ耳を撫でて首元の匂いを嗅ぐ。もふもふ素敵だよ。
シャナリ
顔を上げると風に揺れる髪の毛を手で押さえたシェリルがいた。服の裾が風ではためいて、細い足首が見える。
うん、絵になるな。
私を見ると
「おはよう」
と声をかけて近くに座った。優しく髪の毛を撫でる手が心地良い。
「ねぇ、この腕輪。どうして私にくれたの?」
「女神への供物…」
分かるようで分からない。聞き方を変えよう。
「何か対価が必要?」
驚いて
「まさか…単なる好意だよ」
「頼んだら凄くお高いって聞いて」
「勝手にしたことだから」
寝転んだ状態で見上げる。エキゾチックな美女はどんな角度でも絵になる。
「ねぇ、シェリルは何才なの?答えたくなかったら答えなくていいけど」
「ふふっ別に気にしない。興味を持ってくれたなら嬉しいから。26才だよ」
若いなぁ。今の見た目だと違和感しかないけど、前の年齢だとダブルスコアだよ。今は逆のダブルスコアだ。
「若いんだね」
「ふふっ、私より随分年下だよね…」
「約半分だね」
「そうか」
と呟いて笑った。髪の毛が肩から滑り落ちる。目の前に来た髪の毛を掴む。しっとりしたきれいな髪の毛だった。
「えー2人の世界に入っちゃうの?俺も混ぜてー!」
バーキンが私の横に寝転んだ。
「俺はどっちもイケるよ!」
爽やかな朝、今言うことなの?唇が弧を描く。指を当てると
「ふふっ間に合ってる」
だって…大人の余裕だね。バーキンはまだ若いから。
体を起こそうとしたらシェリルの腕が背中に回ってふわりと抱きしめられる。頭をなでなですると体を離した。
「残念、時間切れ…」
「えっ?」
遠くからタフが爆速で走って来て私を掬うと家に戻った。なんで?
凄い速度で走って私を運んだのに、息も切らさずに
「だから俺がいない時に外でちゃダメだよ」
だってね。
「バーキンが寝かせてあげてって言うから」
あっと詰まるタフ。
「昨日はお楽しみだったんでしょ?だから…」
タフは頭をかき乱すと
「はぁぁ、言わなくても…」
言われなくても魔力で分かるから。それにある意味安心安全だよね?
「シーちゃんに嫌われたくないんだ」
嫌わないよ、別に。タフもバーキンも守ってくれようとしてるし。
「だからもう…ほんといい子。大好き!」
頭にチュッチュされた。今は師匠がいないからね。
3日後にシビル・レイを発つまでは自由時間。私は外に出ないでせっせとアクセサリー作り。
実はね、魔魚の鱗が凄くきれいだった。透明な中にオーロラみたいな感じで偏光する。角度によって色が変わるんだよ。
鱗取りでザリザリ取れるそれがきれいだなって思って保管してた。
(硬くて丈夫!七色に光る 僅かに魔力を帯びている)
でも普通は捨てられるでしょ?
(その価値に気が付いていないだけ お守りとしても価値が高い)
それだ!女性特化みたいなアクセサリーばかりだから、カップルでお揃いの何かって考えたらいいかも。
彼女はピアス、彼氏は剣帯に付けるアクセサリーとか?フラワーホールに飾るピンバッチでもいいかな。
ピンバッチの素材は持ってない。
ここはやっぱり楽店かな、魔法通信で調べたらあったけどなんか違う。プローチの方がいいか。ランドリーピンみたいなので、服に留める。スカーフを留めるみたいに。
これにしよう。お金を写真に撮ってチャージ。さあ買うぞ。亜空間に着いたダンボールを取り出して開ける。
なかなか良いね。
まずは透明な鱗に穴を開ける。丈夫ならどうやって開けるか。一穴パンチで開けたら割れるかね。
バチン
おっきれいに穴が開いた。後は強度。工具で引っ掛けても割れたり穴が広がったりしない。なら補強なしでこのまま使おう。
星とかハートのミニチャームをつけて、シャラシャラするように作る。チェーンをぶら下げてもいいかな。ダイヤレーンを使えば華やかだ。大きな鱗と小さな鱗を組み合わせたら…おぉ、可愛いのでは?
チャームの組み合わせを変えて色々作る。やっぱりものづくりは楽しい。夢中で作っていた。
「ぷもん…」
あ、今何時?もうお昼を過ぎてた。そういえばお腹空いたな。面倒だし、鱒寿司風を食べよう。いそいそとポーチから取り出して食べる。
葉っぱをめくってあーちゃんとラビにも。マンティと師匠はお庭でくつろいでるからここには私たちだけ。
静かなのも良きだね。
あーちゃんもラビも鱒寿司を食べてコロンとベットに転んだ。ふふっ可愛い。
私はどんどん作るよ!
魔魚の鱗のピアスも、後は剣帯とかポーチ、カバンに付けるドックタグ風のアクセサリーも。
あ、そうだ。
スライムコーティングの布を作ろう。
「マーブルー?」
『ぴちょん(はぁい)』
「冷たい布が欲しいよ!」
『ぴっちょん!(任せて)』
2×1メートルの布をむぐむぐ食べる。いや、口は無いんだけどね?触手を出して手繰り寄せて食べている。可愛い。全部取り込むともにょもにょ。それが終わるとゆっくりと布を吐き出した。
『ぴっちょーん(完璧!)』
触れると冷んやりする。気持ちいい。心なしか手触りもいいね。
(冷感魔力布)
ぐほっ…げほっげほ。…はい?冷感、まではいいとして魔力布?
そう言えばマーブルもプリーストだったか。ま、いいか。
なめらかなそれを加工して、で魔魚の鱗を止め付けて。元々薄い布だったからいい感じだ。気に入ってくれるかな?
部屋を出て居間に向かう。ここにいるみたいだ。
顔を出すとソファに寝転んでいた。マウリが扇で煽っている。優雅だ。私を見ると体を起こす。
「何をしてた?」
「うん、作業をね」
私は後手に隠したそれを見せる。小さな袋に入ったそれはリボンで結んである。
「これ、腕輪のお礼…」
ドキドキしながら渡す。シェリルみたいなものは作れないから、こんな素人の作品は嫌かな?緊張する。
驚いたシェリルは受け取ってから
「見ても?」
頷く。そっとリボンを解いて袋を開けて、中身を取り出す。それを触って驚いて、広げた。
「これは…」
やっぱりダメかな、腕輪みたいには出来なかった。俯きそうになるとふわりと抱きしめられた。
「ありがとう…どうしよう。嬉しすぎて、言葉が出ない。ありがとう…」
体を離すと頭に被る。うわぁ、似合う。美人さんだからなんでも似合うけどね。
シェリルは目に涙を溜めて、また私を抱きしめた。
「どうしよう、嬉しすぎて使えない…」
「使って?その為に作ったんだから」
「でも、汚したく無いし」
あーそれは多分、大丈夫かな。なんか状態保存がかかってたから。
布の先端に等間隔についている魔魚の鱗を見て
「これは?」
「魔魚の鱗…」
ピシリと固まった。そして
「そんな貴重な素材…」
マジで?なんなら大量に捨てたけど。だってね?有り余ってたから。
「えっと、沢山あるよ?」
ガバッと体を起こすと
「欲しい!」
「いくらでもどうぞ?」
「シエル、この布。売って欲しい。後、色を変えて沢山欲しい。売って?」
「いいよ!」
お客さんゲットだぜ!
「後ね、これも」
箱を渡す。やっぱりとても丁寧に箱を開けると固まった。
「どうしよう…嬉しすぎて」
口に手を当ててしばらく放心していた。だからスカーフ留めを取り出して、頭から被った布の裾を留める。
「こうやって使うの」
もう一つ箱から取り出したのはピアス。魔魚のウロコ。アシンメトリーで片方は長く、片方は短く。
付けているピアスを外すと私を見つめる。その柔らかな耳に触れてピアスを留める。
ほうとため息を吐くと
「あぁ…もう、シエルは私を喜ばす天才だね…」
愛おしそうに頬を撫でるとそこにキスをした。柔らかな感触は心地よくて、喜んでくれたのがわかって嬉しかった。
「罪な子…」
ん?
ふふっと笑うと膝に抱えられた。そのままソファに横になったシェリルの温もりに、安心して眠ってしまった。
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