110.次の町へ4
はい、やっちまいました。
フラグが立った件…。
今まさに大雨。風はないからまだマシだけどザァザァとね。荷馬車には幌を被せた。実はスライムたち、プリーストなる魔法が使える子がいる。
その子たちがコーティングすると、布は魔力を帯びる。で、水魔法が得意(スライムは水、治癒魔法が得意で火魔法はそもそも使えない)だから、防水布になった。
スライムコーティング、優秀過ぎる。
で、幌はその防水布を使ってレイキが作った。荷物は殆ど濡れない。
シェリルたちも幌を被せてるけど、やっぱり幌自体が雨に濡れていない。膜を張ってるみたいに水を弾く。あれは…付与魔法かな。物自体に魔法を付与するのは普通だけど、人が使うことを前提とした付与が一般的。
例えば剣、斬れ味上昇とかね。それが布自体に役割を与えるのはとても珍しい。
「さすがは魔女」
とはタフだ。私みたいに普通の人間にはハードルが高いし、不自然になりそうだから真似はしない。
(普通の人間はマンティコアと契約しないし、鳥を頭に乗せないぞ!)
レイキ、それは言っちゃあかんよ?
(普通…って何だっけ?)
ぐっ…サナエさん。正論ですね。
で、大雨の中を進む馬車2台。
姫、王子、リリは荷馬車に避難、マンティは雨を弾くのか濡れていない。
黒馬たちも濡れない不思議。
御者台にはタフと私。私のローブは雨を弾く。「超強力ウルトラ雨を弾く君」という名のエマゾンお勧め撥水剤を塗布したから。完璧に雨を弾く。
タフは何か自分の周りに魔力を展開しているみたいで、やっぱり濡れていない。不思議だ。
タツキとサナエ、レイキにバーキンは馬車の中。馬車を引くのはチョコとカーリス、ブルワとメープルは馬車の近くを優雅に歩く。
ちなみにメープルは普通に濡れてる。でも嫌じゃないのか、平気な顔でカポカポ歩いている。
マウリは御者台でやっぱり雨を弾いている。被っている布や服は魔力布だ。どういう効果があるのかは見えなかったけど、シェリルの魔力を感じる。
やっぱり魔女の力は凄い。
そも、魔女とは?
魔法に長けた人で、それを生業としている人の総称らしい。いわば職業名。蔑称でもなければ嫌われてもいない。寧ろ慕われている。
ここヤールカや帝国では。ハイランダーはそういう人たちを排斥する風潮があり、魔女はあまりあの国には行かないらしい。
で、シェリルはその美しい容姿とパオ族であること。もちろん、魔女としての能力も高くて人気があるんだって。
魔女は職業名だから性別関係なく魔女。同じく神聖魔法が使える上位職である聖女も職業名。神官もしかり。
聖女でも男性だったり、神官でも女性だったり。
不思議だ。
シェリルの力は強いみたいで、私の守護の腕輪も買えば何百万とするらしい。聞かなきゃ良かった。
「そんな効果の高いものをさ、嵌めてるんだから。驚いたよ!」
だって、タフが。
守護の腕輪にもランクがあって、だから私が攫われても気持ち的には許せなかったけど、私が傷付くとは思ってなかったって。むしろ、私に手を出されたら全員が消滅する可能性すらあったとか。
なにそれ、怖い!
「私の女神に不埒なことなど…許さないよ?」
「…ありがとう?」
「どういたしまして…」
話は逸れたけど、ってな事がでマウリは濡れずに馬車は進む。
流石に休憩しながらご飯は無理って事で、馬たちを休めながら私たちは馬車から降りずに休憩し、ご飯を食べて進んだ。
それから湖のそばの町シビル・レイに着くまでの3日間はずっと大雨だった。
とはいえ、我々の速度は落ちる事なく進んだ。
雨といえば辛いのはテント。本来はね。今は人も増えたからベットは封印。代わりにエアーベットを使っている。だから寝心地はそんなに悪くない。
寝具も夏用にクール仕様だからね!
で、雨のテントは辛いって話。
ところが、ここでシェリルが大活躍した。なんと、土魔法で土壁と屋根を作ったのだ。
この字型に壁、屋根は全面。地面は雨仕舞いを考慮して周りから20センチほど高く、さらに水勾配を取って。
壁のない側が向かい合うように3つ。
シェリルとマウリ、タフとバーキン、そして私たち蒼の氷柱用に。その中にテントを張れば雨がかからない。
真ん中のスペースにはタープのように防水布を掛けてあるから、ここも雨に濡れない。かなり大規模な魔法なのに、まるで片手間という風に作ってしまった。
私たちが唖然としたもの仕方ない。
シェリルは物憂気にそれらを成し遂げ、ゆっくりと私に向かって来て目を合わせた。
砂漠の民は感情表現が大きい。感動したらその気持ちを最大限で伝えるとか。なので期待されてるのが分かる。分かるけど無邪気なのは苦手だ。
でも静かに私を見るその目は、確かに期待している。
だから
「うわー凄い!立派なお家だー!!ありがとう、シェリル。大好きだよー」
(ぐほっ…どんだけ棒読みなんだよ…)
(無邪気…どこ?)
ぐふっ、酷いぞ。私のメンタルはボロボロだ。
「そうかそうか…私も大好きさ!」
嬉しそうなシェリルだ。優しくふにゃりと笑うその顔はとても素敵で、思わず抱き付いた。驚いた顔のシェリルはほんのりと笑うと優しく緩く抱きしめ返してくれた。
ふふふっ予想通り平ら仲間だね!細い腰にぎゅっと抱き付いた。
シェリルは少しだけ真面目な顔で
「シエルは、女の子だよね?」
「ごふっ…けほっけほ」
レイキ、私に失礼だよ?
「どういう意味?」
するっと胸と股を撫でられた。付いてないよ?そして何故ホッとしてるの?平ら仲間だからかな。
なんて事があり、雨なのに快適な野営だった。
そして、まだ大雨の中やっとシビル・レイに着いた。流石に太陽が恋しい。タフの天候感知スキルによると、やっと明日には雨が上がりそうだ。
町では商業ギルドで一棟貸しの家を探す。湖を臨む場所は別荘地らしく、湖に向かって大きな庭のある家が借りられた。
荷物を下ろして一息つく。
「いる間に少しだけ仕事をする。食事は気にしなくていい」
シェリルに言われた。改めてその有能さに気がつく。仕事なんていくらでもあるだろう。
私はレイノルドからまたもや追加納品の依頼が来たので、アクセサリー作り。サーラヤの商業ギルドに納品したら、追加で依頼された。レイノルドがノースナリスのギルド経由で依頼して来たらしい。
リップバームとハンドクリームは詰め替えだけだからみんなで分担。
詰め替え用に木の容器に入れた物も提案する予定だ。貝がね?手に入りにくいから。
その日は手抜きでオークステーキを焼いて、ゆっくりとお風呂に入って寝た。
翌朝、やっぱり早く目が覚める。あーちゃんの匂いを嗅いでお尻に顔からダイブして腹毛と胸毛を撫でて起き上がる。
着替えて居間に行くと珍しくバーキンが起きていた。
完全な夜型らしく、朝は1番最後まで寝ているのに。
「おはよ!」
「おはよう、早いね」
「うん、ワクワクしちゃって」
「散歩に行くからタフを起こしてくる」
「あーそれは。寝させてあげて」
チラッと見ると意味あり気にウインクされた。なるほど。
「散歩に行ってくる!」
「俺も…」
爽やかさと無縁なのにね?
マンティを連れて外に出るとバーキンが手を握って来た。警戒は必要だって。
今日はマンティとあーちゃん、ラビと師匠、バーキンだ。頭がほかほかする。庭に出ると目の前は湖だ。大きい!対岸が見えないよ。
「うわぁ…」
湖は少し低いから、落ちないように設置された手すりから身を乗り出す。マンティとあーちゃんは庭を走り回って背中をころんころん。
ラビも草の上を感触を楽しみながらぴょんぴょんしてる。
「くすっ本当にシエルは面倒見がいいね」
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