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星なし転移者と仲間たち〜逃亡中〜  作者: 綾瀬 律
獣人の国ヤールカ

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107.次の町へ

 俺たちはサーラやを出発した。ヤールカの最初の町は大外れだった。


 俺は自信の強いスキルのせいで色々と引き寄せる。世界は秩序と均衡を図ろうとし、自然強いものは色々と引き寄せてしまう。

 シーちゃんとレイキも色々と引き寄せるが、俺と違って有益なものが多い。

 でもあれだけ引き寄せるんだからやっぱり強いんだろう。


 で、サーラヤまであと少しって時に魔獣の群れに当たった。緑に緑に灰色、ゴブリンとサイクロプス。

 こんなところでサイクロプスの群れに当たるとは…不運にもほどがある。硬い皮に強靭な体、長い角で刺されたら即致命傷。

 基本は群れだから、討伐難易度はA。しかも後ろからマッドベア2体。

 こちらは1体で討伐ランクはA、2体ならSだ。まぁ引き寄せてる俺が言うのも何だが、群れすぎだろ。


 もっともこちらには戦える魔獣がたくさんいる。

 マンティはもちろん、本来だとおまけ程度にしか使えないはずの魔法をガンガン使える黒馬たち。

 しかも雷魔法なんて普通は使えない。特殊な個体たちだ。たからこそ群れから弾かれてしまったんだろうが。


 1m以上もある魔魚を雷で仮死状態にできるほどの威力。その気なら瞬殺出来るのに、新鮮に保管できるよう仮死状態にする繊細な魔力操作。

 そしてダチョウや牛は言わずもがな。蜘蛛は積極的に攻撃はしないが糸を張って簡易結界を施す。

 控えめに言って負ける要素はない。


 俺はマンティに跨り先陣を切った。ゴブリンはサナエがガンガン凍らせている。任せていいだろう。

 タツキは双剣を抜き放った。バーキンが加工したから切れ味は抜群だろう。なんたってミスリルコーティング。

 火魔法を剣に纏わせて、硬いサイクロプスの皮もあっさりと切り裂く。


 レイキは杖(魔石は青紫の)で逃走しようとする魔獣に何かをしている。糸が切れたように倒れる魔獣たち。

 バーキンはその細見に似合わず、バルバード?のような武器を振り回す。振り回して投函。回転したそれらは容易くゴブリンとその後ろのサイクロプスを蹂躙する。

 そして不思議なことにちゃんと手元に戻ってくる。

 近接では斧の反対側の槍の刃で串刺し。

 流石鍛冶師だ。切れ味は抜群。


 シーちゃんはチョコに乗って商人や冒険者に向かう魔獣を蹴散らしている。その手には青紫の魔石が嵌った杖…ではなく剣。

 斜め下に構えてる。振り上げもしなければ切りつけもしない。ただ斜め下に両手で構えている。

 そう、馬に乗ってるのに両手で。それはタツキも同じ。


 黒馬たちは賢い。手綱がなくとも意志を感じて走る。必要な場所へ乗っている人の意図を汲んで。

 だからシーちゃんはただ剣を構えるだけで魔獣たちが斬られる。シーちゃんたちが通り抜けた後には魔獣たちが倒れていた。


 本当に期待を裏切らない、僕のシーちゃんだ。

 そんなこんなで時間はかかったものの、討伐完了。

 冒険者は商人たちに向かってきた少ない魔獣は討伐していた。

 全て終わると歓声が上がった。ひとまず魔獣たちは討伐証明部位だけを取って焼いた。


 マッドベア?俺とタツキで討伐したぞ!タツキ1人ではさすがに厳しかったから手伝って。

 ゴブリンは食えないしサイクロプスも同じだ。討伐証明の角はいい素材になるし、その皮も。だからバーキンが荷馬車にのせられるだけ乗せていた。


 マッドべアはそのままお持ち帰り。

 近くにいた冒険者や商人たちにも持ち帰れない分の素材は好きにしていいと言ったので、サイクロプスを解体していたぞ。

 彼らは先に町に帰還し、俺たちは彼らがいなくなったのを確認してサクっとカバンに収納した。


 そんなことがあった後、やっとたどり着いた町ではギルマスの執拗な聴取という名の嫌がらせ。

 お陰でシーちゃんが寝込んでしまった。一度死なすか!


 その後もシーちゃんとサナエが攫われた。師匠がシーちゃんの居場所を教えてくれたから向かったが、ちょうど訪ねて来たシェリルが付いてきた。

 当たり前みたいな顔で同行する。


 シャナリ


 腕輪が鳴る。攫った奴らは生きて捕獲したい。シーちゃんが本気で怒ったら痕跡すら消えてしまいそうだからな。


 辿り着いた廃墟で見たのは…。

 ほんの少し襲撃者に同情したが、俺のシーちゃんに手を出したやつには制裁が必要だ。

 しっかりと不要なものは潰しておいたぞ!

 もっともその前にサナエが凍らせていたからすでに機能は失っていたと思われるが。

 サナエのジョブも恐ろしい。スキルかと思ったがあれはちょっとヤバい。


 シェリルは俺が襲撃者を縛っている間にシーちゃんを抱きあげていた。まったく森の魔女まで引き寄せるか。

 まぁ彼は悪しきものではないから、味方なら心強い。

 この町は人間を排せつしよとしているみたいだ、ならばとっとと出よう。

 その前に冒険者ギルドは潰しておかないとな。

「その意見に私も賛成…」

 シェリルとギルマス以下幹部たちをぶちのめして色々と奴らが言い訳出来ない証拠の書類を握ってギルドを後にした。


 そして翌日、街を出た。

 当然みたいな顔で昨日の夜からシェリルが一行に加わった。居座る気だな、シーちゃんのそばは心地良いからな。

 で、サーラヤから進路を北東に取り、湖に当たったらさらに北へ進む。ぐるっと迂回してバーキンがしばらく滞在したいと言った鍛冶の町、ローゼンを目指す。


 目の前で揺れる俺と同じ色の髪を撫でる。振り向いてほんのり笑う。

 俺の大切な者は決して傷つけさせないよ!

 もっとも強力な守護者たちは今日も健在だ。頭の上でシーちゃんに簡易な結界を施す師匠。肩の上で警戒をするラビ。腕の中であーちゃんは…

 癒し担当かな?

 まぁ本気を出したら結構強いんだろうけど、守られる立場でいたいんだろう。

 シーちゃんは特にアイカを可愛がってるからな。それも良しだ。


 シェリルは普通に荷馬車を引いている。

 魔女だけあって空間拡張のもろもろを持っている。いや、荷馬車自体がそれか。

 サーラヤの店はたたんだらしい。商会は維持したままだからどこかで店を開くんだろう。

 森の魔女の弟子が一人付き添っている。線の細い少年だ。浅黒い肌に大きな青い目、黒い髪。

 魔女の同族かな。


 ヤールカの旅は始まったばかり。




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