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星なし転移者と仲間たち〜逃亡中〜  作者: 綾瀬 律
獣人の国ヤールカ

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108/127

104.やっと着いた

 サーラヤに着いた日、冒険者ギルドで足止めされたせいで宿が取れずに広場で野営となった。もう疲れてるのに…勘弁して欲しい。

 サナエと一緒のテントで寝た。久しぶりに背中にぽよん、良き。

 目が覚めてでもまだ怠くてサナエに向かってぽよよん…柔らかい。そのまままた眠った。


 みんなが起き出したのは分かるけど眠くて起きられない。サナエに抱き付いて寝ている私を見てタフが

「ギルドにケンカ売りに行く!」

 と言って出て行った。

 はぁ、怠いよぉ。

 サナエは途中で起きて、代わりにマンティがそばに来てくれた。その翼にくるまって眠る。


 テントが開く気配がした。マンティが体を起こす。

『起きられるか?』

 頑張ればなんとか。マンティが背中に入って体を起こしてくれる。ついでもフードまで被せてくれた。

 テントを覗き込んだのはタフともう1人。

 その人は私の様子を見て驚いて、気まずそうな顔をした。タフはその人を押し退けて私を縦抱っこして毛布ごとかかえた。


「だから言っただろ、ふざけるな!」

 珍しい、タフが怒ってる。

「どうした、の?」

 喉が痛いから声が上手く出ない。

「シーちゃんは何も気にしなくていい。俺にもたれて寝て?」

「うん」

 少し高いタフの体温は安心する。その肩に頭を預けて目を瞑った。



 *****



 俺は怒っていた。

 魔獣の群れを討伐して町に着くと、問答無用で冒険者ギルドに連行された。まるで犯罪者じゃないか。

 むしろ、町に魔獣が行かないように立ち回ったのに。酷い扱いだ。

 しかも、たくさんの魔獣の気に充てられてシーちゃんの体調が思わしくない。魔力に対する感受性が高いからか、ひしめき合う魔獣の魔力をモロに受けてしまった。


 マンティと契約したことも関係がある。マンティが受ける魔力圧をシーちゃんも感じてしまうのだ。同調性と呼ばれる現象だ。

 魔力酔いのような状態。早く休ませてあげたいのにのらりくらりと話は進まず、要は

「自作自演でしょ?」

 だと。ふざけてる。あんなに大規模な自作自演を誰がするんだ!

 周りで見てた冒険者もいる、そう言っても聞かず。

「彼らにも聴取したよ、あまりにも不自然だってさ」


 あれだけの数をAランクの俺とCランクの彼らでほぼ盗伐したのは確かに不自然かも知れない。でも事実だ。

 国を跨いだのが仇となって、まったく聞き入れてもらえなかった。

 流石にうとうとし始めたシーちゃんを見て声を荒げたらやっと解放された。

「この子に何かあったら、生きていられると思うなよ!」

 俺としては珍しくケンカ腰でギルドを出た。

「もう宿はないぞ!」

 最後までヘラヘラ笑ってたな、アイツら。ムカつく。


 解放されたのが夜で、アイツらの言うように宿もなく、広場で野営になった。シーちゃんはサナエとテントに入って行った。

 翌朝、やっぱりシーちゃんは起きられなかった。だから

「ギルドにケンカを売りに行く」

 宣言して冒険者ギルドに向かった。扉を蹴り開けて

「ギルマスいるか?」

 頷く受付を横目に奥に向かった。後ろで待て、と聞こえたが無視だ。


 ギルマスの部屋のドアを蹴り破ると

「おう、お前のせいであの子は体調が悪い中、テントで寝たぞ!今も起き上がれない。どう責任取るんだよ、お前」

 机に飛び乗って頭に足を乗せると顔が引き攣った。

「いや、その…」

「来い!」

 引き摺って広場に行くと、シーちゃんを様子を見せた。そして青ざめた。シーちゃんはマンティの翼に包まれて眠っていたから。マンティがソイツを威嚇する。


 抱き上げれば体が熱い。ギルマスを睨むと

「や、宿を…いやその、棟貸しの家を」

 押し退けてタツキたちに目配せすると、すぐにテントをたたんで付いてきた。ギルマスの腹に蹴りを入れるのも忘れないぞ?

「ぐはっ…」

 くたばれ、ギルマス!


 俺はバーキンと並んで商業ギルドに向かった。ギルドでは驚いた職員がシーちゃんの様子を見てさらに驚いた。

 サナエが金色のカードを出すと

「近くにあるすぐに案内できる家です。落ち着いたら変えることも出来ます」

 こちらの条件を聞いてすぐに家へと案内してくれた。金色のカードは伊達じゃないな。

「冒険者ギルドの奴が何か聞きにきても答えないでくれ」

「それは…」

「この子は体調が悪かったのに、何時間も止められて。昨日は広場で野営させられた」

「分かりました!治癒院の紹介はいりますか?」

「大丈夫だ、助かった」

「いえいえ、いつもありがとうございます」

 深々と頭を下げて、鍵を置いて出て行った。


 個室のベットにシーちゃんを横たえる。ゆっくり休めば大丈夫だろう。何か食べてくれたらいいけど。

 タツキが部屋に来て

「食べるものを買ってくる。農業ギルドにも寄りたいからな」

「シーちゃんが食べられそうなものを頼む」

「もちろんだ」


 赤く熱った頬を撫でる。

 俺の手を握りしめて離さないシーちゃんが愛おしくてたまらない。頭にキスをしてそばに寄り添った。

 ドアがノックされる。タツキが顔を出す。

「買ってきたぞ。シエルは?」

「寝てるから預かる」

「私が見てるからタフは先に食べて来て」

 サナエが横から顔を出した。

「客がいるんだ」

「誰の?」


「俺たち、かな」

 誰だ?

「分かった」

 タツキと居間に向かうと外から話し声が聞こえた。なるほどな。タツキと一緒に外に出た。やっぱりか。

 そこには昨日、魔獣の群れが襲って来た時に近くにいた冒険者と商人だった。

 彼らは一斉に頭を下げた。

「昨日は助かった」

「ありがとな」

「恩にきる」

 口々に言う。


「別に自分たちの為でもある」

「でも…あの小さな子はこちらに魔獣が来ないようにしてくれてたよな?」

「兄さんもガンガン攻めてたし」

「もう1人の姉さんも凄かった」

 あぁまぁな。サナエは緑の山を作ってたからな。

「双剣の兄さんも、杖の兄さんも、後あのバルバード?の兄さんもな」

「あぁみんな凄かった」

 双剣はタツキで杖はレイキ、バルバードもどきはバーキンだ。


「遅くならないようにって先に帰して貰って」

「なのになかなか町に来ないから」

「後で聞いたら冒険者ギルドに連行されたって」

「さっき、みんなで抗議して来た」

「俺たちも商業ギルドから正式に抗議をして貰ったぞ」

「「ふざけてる!」」

「ギルマスは人間嫌いなんだ」

「だからってな?」

「だからよ、ギルマスに代わって謝りに来た。後はお礼だな」

 シーちゃんに聞かせてあげたかったな。君が当たり前のようにした事は、彼らにとって嬉しい事なんだよ。

「謝罪は君たちから受け取った。ギルマスは許さんけどな。無事で良かった。この件はこれで終わりだ」

 彼らは振り返りながら帰って行った。


 家に戻って遅い朝食を食べるとシーちゃんの眠る部屋に戻った。サナエと交代してシーちゃんのそばに寄り添う。

 頭に付ける花を買わないとな。タツキたちは大丈夫だったかな。

 少しうとうとするとシーちゃんが目を開けて俺を見ていた。

「お腹空いた…」

 カバンにしまったスープを取り出す。体を起こしてあげて

「はい、あーん」

 と言えば素直に口を開ける。パクりと食べてまた口を開けた。可愛い。


「心配かけた?」

「それはもう、ね。元気でいて欲しいよ」




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