103.そしてサーラヤへ
朝の散歩を終えてコテージに帰るとタフがテラスに座っていた。
「タフーおはよーただいまー」
手を振れば振替してくれて…固まった。どったの?
走って来た
「シーちゃん、それ」
腕輪?
「貰った」
目をまん丸にして
「はぁだから俺がいない時に…マンティは?」
「何も」
黙ってしまった。
「シーちゃん、外に出る時は必ず俺を連れてくこと!」
過保護じゃない。
「シーちゃんのためだよ。引き寄せ体質なんだから」
「タフ、言い方…」
「事実だよ」
ぐふっ。それは言わないで。
それ以上は何も言われなかったから、スクランブルエッグにベーコン、オニオンスープで簡単に朝食を食べて、お昼用に肉サンドと魚バーガーを作って出発した。
その日は何事もなく、荷馬車が魚(川でマンティと師匠が大暴れした)で満杯になったりはしたけど。何も引き寄せずに次の町に到着。また1棟貸しの宿を借りて一息。
タフを見てドヤる。
私だって平穏無事な日があるんだぞ。
「魚売るぞ!」
そう、荷馬車にこんもり。いつ売るの?今でしょ!
(くはっ…)
レイキはノリノリだね。
広場に着くと賑わっている。まだ午後3時、いい頃合いだ。空いてる場所に机を出して布を敷く。その上にお魚さんたちの入った木箱(レイキ作)に氷とお魚さんたちを盛る。
箱売りだ。
箱をチョコから降ろすと人が群がってきた。沢山あるからブルワとカーリスの背中にも木箱がある。
「魚か!凍ってるぞ」
「いくらだ」
「新鮮だな」
「買うぞ!」
対応はサナエとバーキン、タツキにお任せだ。私は後ろでちんまりと座っている。筈が…売れるのでドンドン追加するためにチョコと何度も往復した。荷馬車から箱を降ろして広場に。もっとも私はチョコを引くだけ。
力仕事はレイキとタフがしてくれたから。
「魔法で浮かせ…」
「ダメ!」
はい、すみません。
で、自分たちとマンティたちの分をかなり多めに残しても完売した。多分、20箱は売れたんじゃなかろうか。
マンティと師匠様様だね
だって一箱で2万ガロンだよ?
それでも激安だって大好評。マンティなんてもうしっぽがご機嫌に揺れてた。
珍しく師匠も羽をばたつかせて喜んでたしね。
で、夕食はマンティと師匠を労ってお魚祭り。マンティにはお肉も献上だ。
川魚だし、内臓を出してそのまま塩焼き。新鮮だからなめろうとお刺身。表面を炙ってご飯に乗せて丼。後は素焼き。お野菜も焼いてスープはコンソメにカリコリーやジャガイモ、人参にパンチェッタ(レイキ作)。
お魚はふわふわで赤みと白みがあって、どっちもすごく美味しかった。
作ってる時からマンティは背後をうろうろ、タフまでうろうろ、師匠はマンティの頭の上で羽をバタバタ。
マンティの涎で水溜りが出来る少し前に完成。
「食べるよー!」
「「「「「おう!」」」」」
ノリノリだね?
マンティと師匠はバクバク、タフとあーちゃんも。
バーキンは一口塩焼きを食べて
「うわぁ、美味い!」
なめろうを食べて
「ヤバい!」
丼を食べて
「最高!」
素焼きを食べて
「一生着いていく!!」
間に合ってます?
(ぐほっ…)
レイキは相変わらずだね?
食後に酢飯を作って昆布(海藻)で締めたお魚を押し寿司にした。マス寿司みたいにね?小さくカットしたらお手軽行動食になる。
お魚を締める工程は魔法で時短だよ!
試食をしたら、あまりに感動して4人全員が涙目だったのは仕方ないよね。
「故郷の味なんだ…」
ポツリと呟いたタツキの言葉が胸に沁みた。
食べ終わって片付けると解散…の前にタフに呼ばれた。
タフの部屋で話をする。
そして何故かタフのお膝抱っこだ。
胸元を見る。
タフを見れば
「シーちゃんには敵わないなぁ」
手に取って見せてくれる。
魔力が揺らいだ。やっぱり魔石か、紫がゆらゆらと揺れる。
「お母さんの?」
「そう…俺に残してくれた」
「触っても?」
「もちろん…」
手を触れる…これは…まさかっ。手を離す。私はその魔石を見つめて、考えた。なるほど…凄い。
「シーちゃん?」
「アンナさんの想いがこもってる。高度な隠蔽…守護の魔石」
本来ならもっと大きな魔石に込められている筈の桁違いの魔力を、この魔石を出口にして。
彼女の亜空間に眠ってるんだろう元の魔石。守られてるんだね、タフは。
突然ぎゅうぎゅうと抱きしめられた。
「やっぱりシーちゃんは凄い!僕の欲しい言葉を、知りたいことを教えてくれる」
気が付いてたんだね、でも誰かに認めて欲しかった。きっとそう言うこと。
「たくさんの想いがこもってる。タフはとても愛されてたんだね…。同郷の人が短くても幸せに生きた、それを知れて良かったよ」
タフは涙目で私を見るとおでこにキスをした。
帰り際
「守護の腕輪…森の魔女のものだよ」
「良い魔女?」
「間違いなく」
なら良かった。タフにおやすみなさいして部屋に戻って寝た。あーちゃんを抱っこして。アイカの匂いは癒しだ。大好きだよ…。小さな頭にキスをして耳を撫でて眠った。
翌朝も早く目が覚めた。はぁやっぱり幸子の年齢は引き摺ってるなぁ。
今日もお散歩しよう!タフを起こしてゴーだ。
居間に行くとタツキは起きていた。苦笑する。
「おはよう」
「おはよう、目が覚めるな」
「うん、まぁ早起きは三文の徳だし?」
「だな!」
「散歩行く?」
「おう、タフを起こさんとな」
タツキも釘をさされたらしい。
タフの部屋に突撃して、なかなか目覚めないその体を強制的に起こした。
「タフ、お散歩!」
「うむ…」
大欠伸をしてやっと起きてくれた。
外に出て馬房に向かうと、マンティがそわそわと待っていた。
「おはよー散歩だよー!」
『待っておったぞ!』
みんなで町の外に出て走る。楽しい!風を切って走る。私を抱えたタフが。
走りたいのにね?
そこは見渡す限り草原。タフから降りて走って転んで、そのまま仰向けに寝転んだ。
草の香り、朝の匂い。気持ちいい…髪の毛を撫でる風を感じてしばしば目を瞑った。
陰ったので目を開けるとタツキが覗き込んでいた。
「気持ちいいよ!」
「なら俺も!」
タツキも寝転んだ。
リリがタツキを探しにやってきて、私とタツキの間にねじ込んだ。ふふっふかふかの羽、気持ちいい。
お尻を撫でればやわやわだ。
ドスンッ
「ぐえっ」
待ってあーちゃん、お腹はダメだよ。
もう、お腹まふまふの刑だ!仰向けにしたアイカにお腹に顔面ダイブ!
立ち上がって服を叩くと
「戻るぞー」
タフから声が掛かった。あーちゃんを抱えてタツキと手を繋いで町に戻った。
ほっ、今日は何も引き寄せてないぞ!
朝ごはんはパングラタン。堅パンにスープを注いで姫チーズを乗せて火魔法で炙る。グツグツしたら完成。
熱いけど美味しいんだよね!サラダも添えたよ。お野菜は大事。
朝食を終えると出発、いよいよサーラヤだ!
だからなんでこうなった…?
もうすぐサーラヤだよ、って時にまさかの魔獣の群れに遭遇。周りには他の商人や冒険者たちもいる。
出発が早かった私たちは抜かされることなくほぼ先頭を独走。だから商人や冒険者はサーラヤから近場に向かっていた人たちが町に帰る途中。
町までおよそ1時間の距離でまさかの、だ。
その日の夕方、ヘロヘロになってサーラヤに到着した。着いたら着いたで冒険者ギルドで聴取。
お腹空いた…眠い、疲れた。
疲労困憊で目を瞑るとうとうとする、ダメだ。眠い。
「もう明日でいいだろう?小さい子が寝てしまう」
タフのキツイ言葉でようやく解放されて…そこから記憶がない。
タフのペンダントは出口。対になる魔力は亜空間にある大きな魔石にこめてある設定
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