101.ヤールカへの旅2
お昼はBBQだよー!
商材を用意して、タフが土魔法で作ったかまどにレイキ作の網を乗せて枯れ枝に火をつけて焼く。
実は炭を作って保管してある。だから枯れ枝の下に炭。炭火焼きだね。
贅沢だ。そして、私作の長い鉄製(と見せかけたミスリル)の串。
串焼きの猪とオーク肉。
レイキがスキレット風に作ったものにお魚と貝、エビにオリーブオイルを回し掛けてガーリックと鷹の爪、塩、バジルを振る。
アヒージョ風だよ。ラビが見つけたブラウンマッシュルーム風のきのこも添えて。
私もワクワクしてる。タフと並んでスキレットの前に陣取る。オリーブオイルが沸々するのに合わせ、何とも言えないいい香りが漂う。
ゴクリ
誰かの喉が鳴る。
いい匂いだよね?堪らないよね…?ふふふっ。さぁブラウンマッシュちゃんや、待っておいで。美味しく食べてあげるよ!
タフが肘で突く。
「シーちゃん、我慢できない…」
『まだか…!』
マンティまで。そろそろかなぁ?
レイキを見つめると頷く。じっと見つめてから頷いた。鑑定で確認、オッケーだね。
スキレットを網から外してテーブルに置いた。
「熱いから気をつけて…」
パクリッ
一気に口に入れたよ…熱くないの?
「あふっ、もぐっ…はふいっ…」
だから言わんこっちゃない。
お水を渡す。
ゴクゴク飲んで
「うまぁいい!」
響いたね?
マンティには低いテーブルに取り分けて置く。
「熱いから…」
ペロリッ
聞いてないし、一舐めだね。
『美味いぞ!』
前脚でお皿をトントンする。
足りないな、確実に。
マンティのお皿に足すと、新しいスキレットにまたアヒージョ風を作り始める。今度はバジル無しでエビの代わりにイカだ。
タフの横から残り少ないアヒージョ風を食べる。こんな時に猫舌だと出遅れるんだよね。
うん、まだ熱い。彼らの舌はどうなってるんだろうな。
はふほふっ美味しい。
エビはぷりぷり、貝も噛めば噛むほど味が出る。そしてお勧めブラウンちゃん。
ほろりとするこの食感、堪らないよね。オリーブオイルとの相性は抜群だ。
フランスパンが欲しい。ここは堅パンで代用するか。
ポーチから取り出すと、薄くカット。
スキレットに残ったオリーブオイルに漬けて食べる。美味しい!
「タフ、近いよ!」
顔の真横で見るのやめて?仕方ないのでその口に堅パンを放り込む。だって口開けて待ってるんだもん。
「美味しいぞ!」
だよね?
レイキと目があった。スキレットと堅パンを渡せば嬉々として同じようにして食べた。目が開いたね?
「美味いな」
「追加を作ってるよ!」
タフとマンティでほぼ食べちゃったから。
「いい匂いだなぁ」
声が掛かる。振り返れば馬車が止まっていた。
御者台にはナイスミドル、馬車の周りには5人の多分、護衛。荷馬車だから商人の馬車だ。それにこの紋章は…。
商業ギルドに登録している商人は荷馬車にギルドの紋章である天秤と、商会の紋章に名前を描いた旗を付ける決まりがある。
ゴクリと誰かの喉がなった。聞こえないフリをして前を向く。
あげないよーだ。
例えあの商会の人でもね。
こんな時は頼れる我がリーダー、タツキの出番だ。
「どうも」
当たり障りのない挨拶。
「こんにちは。ついいい匂いに馬車を止めてしまった。ふふっ海の食材かな?」
「あぁ、南から旅をしてきたんだ」
「あぁそれで」
馬車から降りる気配がする。
「食材を分けては貰えないか?」
そう、何を隠そう私たちも商業ギルドに登録しているので、行商扱いで商業ギルドの紋章を掲げている。
行商の場合は商会の旗が無い。だから行商だと分かる。
マイヤーまでは普通に旅をしてたけど、ここからは行商だと見せた方が良さそうと判断した。
冒険者はね、信用が無いから。
そうそう、冒険者と言えば、私たちはランクが上がった。依頼はそこそこなんだけど、リバイアサンの討伐によるポイントが高くて。
マンティが取ったから私たちパーティーの成果。それが決めてとなって。
珍しいことにDを飛ばしてCランクまで上がったのだ。貴族案件をこなしたのもポイントが高かったみたいだ。
タフ曰く、実力的にはBでもありとか。ただ、経験が余りにもなさすぎるから、ちょうどいいだろうって。
で、話を戻すと冒険者よりは商人の方が良さそうってことで商業ギルドの旗を掲げている。
だから話を持ちかけられたんだよね。
タツキを見ると目が輝いていた。そうなるか…はぁ。
「何か希望が?」
受けちゃうのね…。
「魚介類が希望だ!」
ですよね。私は聞こえないふりをしてアヒージョ風を作る。
ゴクリ
また誰かの喉が鳴る。
「その、食事は…」
タツキに首を振った。
(売り物じゃ無いからね!)
釘を刺しておかないと。
「それはその…」
(タツキ!)
(タツキ、ダメだ。シエルの負担が増えるだけだぞ)
(タツキ、メッだよ)
援護射撃だ。全く鼻の下伸ばしてからに。
「食事は売りもんじゃないよ」
バーキンが断ってくれた。
(こんな美味しんもん、人には渡さないよ)
バーキンからも念話がきた。使えるんだね?
頼れるはずのリーダーは少し惚れっぽいらしい。だってね、御者台に座っていたお姉さんは大柄で浅黒い肌のグラマラスさんだったから。
守備範囲広く無い?メリルさんとは違うタイプだけど。年上だし。
(ぶはっ…)
安定のレイキの吹き出しだな。
(守備範囲…)
サナエの呟きも健在だ。
頼りにならないリーダーを無視してサナエが売れる魚や貝などを見繕って、適正価格で(タフに聞いて)販売した。
その人たちは
「邪魔したね、お嬢ちゃん」
何故か私の頭を撫で、ようとして鳥さんが邪魔で頬を撫でてそのままマイヤーに向けて進んで行った。
お姉さんはとてもいい匂いがした。
みんなが食べ終わるとまた進む。
私が御者だ。御さなくていいから楽ちんだ。
その後は平穏に…荷馬車の荷台に魔獣がお山に(小山がお山に)なろうとも、平穏に進んだ。
マイヤーからサーラヤまでの街道は町が点在している。いわゆる宿場町だ。だから商人や冒険者の為の宿が充実している。
私たちみたいに従魔が沢山いる場合、宿ではなくコテージみたいな一棟貸しの宿に泊まれる。
お値段も1人に換算すると5000ガロンとそこまで高く無い。
旅のお金は都度徴収だ。もっともタフは正式な護衛だからこちら持ち。バーキンは同行者なので、お金を払ってもらう。
ただ、リバイアサンの素材で余り手持ちがないらしく、ほぼ出来ていた私の杖を仕上げた分のお金を先行して払った。
ワイバーンの爪と魔石もワイバーン。赤く揺らめく魔石はとても綺麗だ。
これでお値段は5万ガロン。安い!
「魔力を魔石に込めて」
と言われたので沢山こめた。もりもり込めた。
あれれ?魔石の色が紫になった…何故?
バーキンもタフも目をまん丸にして驚いている。
「シーちゃん、何したの?」
ん?
「魔力をもりもりこめた?」
「モリモリ?」
「もりもり」
バーキンとタフは顔を見合わせて
「「何故そうなる!」」
さぁ?
ワイバーンは火魔法が得意だから赤い魔石。リバイアサンは海の魔物で水魔法が得意だから青い魔石。
それぞれの魔法の色である魔石は属性魔石と呼ばれる。
無色の魔石は無属性と言われ、属性魔法以外の色付き魔石はとても貴重。
火は赤、水は青、土は茶、風は水色、氷は白、雷は黄色。空間魔法はいわゆる闇魔法の一種で、黒、治癒魔法は光魔法の一種で桃色。植物魔法は緑。
お分かりだろうか?紫という属性の色は無い。
知らないよ?だってね、魔力をこめただけだし。私はオークの比較的大きな魔石を取り出してレイキに渡す。頷くともりもりと魔力を込めた。
そしてやっぱり紫になった。
これは星6の魔力を込めたらなる色?
タフが大切にしているペンダントには小さな紫の石。紫水晶と言われたらそう見えるけどもしかして?
タフを見れば
(後でね?)
さて、色をどうするか?隠蔽出来る?
(青に変えることをお勧め)
魔法通信さん、その心は?
(見え方によって誤魔化しやすい)
まぁね、青に赤を足せば紫だしね。
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