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第30話 ドラゴリオン家、新たな波乱?

 ルナクが作り笑顔で部下たちに下半身を露出している。

 あいつらのことはもうどうでもいい。


 ドラゴリオンたちが立ち上がる。

 ちょうど、視力も戻る頃だ。


「あれ? 僕たちはいったい……」


 キョロキョロと辺りを見渡し、状況を飲み込む。


「また……ムウに助けられてしまったね」


「気にしないで。それより」


 リナリオンの方を見る。

 彼女は申し訳なさそうに視線を落としながら、こちらへ近づいてきていた。


「あの……パパ……」


「リナ……」


 リナリオンの口がモゴモゴと動く。

 謝るべきだと理解しているが、まだ父への怒りが胸にあるのだろう。


 ずっと寂しかった、ずっと悲しかった。

 たとえワガママでも、事実なのだ。


 ドラゴリオンが娘を抱きしめる。


「ごめんよ、辛い思いばかりさせて」


「わ、わたし……」


「リナの言う通りだ。僕はいつもギルドを優先して、リナや妻を蔑ろにしていた」


「……わたし、わかってた。パパは街やギルドのためにたくさん頑張ってるって、ママも応援してるって。でも、でも、パパとご飯食べたり、遊びたくて」


 それが叶わず、ずっと叶わず、いつしか愛情が憎しみへと反転した。

 リナリオンの瞳から涙が溢れだす。


「ごめんなさい」


「いいんだ。もういいんだよ、リナ」


 無事に仲直り。

 どうにか丸く治ったな。


 それにしても、なんだからしくなかったな。

 あんなに頭にきたのは初めてだ。

 とにかくルナクを痛めつけたくて、尊厳をボコボコに破壊したくてたまらなかった。


 自分が、自分じゃないみたいだった。







 マーレと家に帰ると、叔父さんが先に夜食を食べていた。

 パンとスープだけの質素なものだ。


「遅かったな」


「まあ、いろいろあって」


 すぐにムウさんの分を用意します、とマーレがキッチンへ急ぐ。


「そういえば叔父さん」


「なんだ」


「叔父さんに誕生日、祝ってもらったことないけど」


「……お前、誕生日いつだ?」


 いやまあ、別にいいけどさ。

 意識したこともないけどさ。


 リナリオンみたく、家出してみようかな。

 なんつって。


------------------------------


 翌日、本を買うついでにギルド御用達の酒場に顔を出してみた。

 奥のテーブルにいつも通りの面子が揃っている。


 キューネ、ドラゴリオン、マーレ。

 それと……。


「あ〜ん♡ ムウ様来てくれたんですねぇ♡♡」


 リナリオンまでいた。


「え、なんでいるの?」


「ムウ様とお近づきになりたくてぇ、わたし、ギルドメンバーになっちゃいましたん♡♡」


「ましたん、って……君10歳でしょ?」


 気分が悪そうなドラゴリオンが口を開いた。


「スキルを所持していて、尚且つ同ギルドに保護者または身元引受人がいれば加入可能なんだよ。現に、マーレだって14歳だ」


「えぇ……」


「僕は止めたんだが……」


 リナリオンが腕に抱きついてきた。


「だってえ♡ 昨日のムウ様の戦い見てたらあ♡ ちゅきになっちゃったんだもん☆」


「なっちゃったんだ、ちゅきに」


「そ・れ・に、期間内にギルドメンバーを増やさないとなんでしょ? パ〜パ」


 ドラゴリオンがデッカいため息をついた。

 キューネがリナリオンを引き離す。


「ちょっと、ムウが困ってるでしょ」


「はあ? 邪魔しないでもらっていいですかあ? まさか、6つも年下の女の子に嫉妬してるのお? キャハハ!! ダサすぎてウケるんですけど〜」


「なーにーをー!!」


「なにさ」


「ふん、ムウの性別もわかってないくせに」


「べーつーに? 愛に性別とか関係ないですけどお? わたしはぁ、ムウ様が男でも女でも大丈夫ですよ♡♡」


 そうですか。


「ていうか、そんなことでしかマウント取れないの? 幼馴染なのに?」


「ムッカーッ!!」


 うーん、なにはともあれ、メンバーが増えたのは良いことなんじゃないかな。


 ちなみに、これまでドラゴリオンが一人で担っていた事務仕事は、今後キューネやマーレも分担していくらしい。

 これで負担は減るだろう。



 めでたしめでたし。

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