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第11話 ほのぼの日常回

※まえがき

今回はずっと三人称です。


マーレが主人公の特別編です。


------------------------------



 マーレがムウの家で居候するようになって二日。

 小さな丸太小屋だが余っていた押し入れがあり、そこがマーレの部屋となっていた。

 部屋というには狭すぎるが、眠るだけなら問題ない。


 それよりもマーレが気になるのは……。


「あ、おかえりなさいムウさん」


「ん。ふー、毎朝毎朝しんどい」


「朝からご苦労さまです。…………そんな小さな体で」


「え」


「な、なんでもないです。あ、朝ごはん用意しますね!!」


 ムウの華奢な体であった。

 自分より背は高い。当然腕も太い。

 が、他の男性よりも、何ならキューネよりも小さくて細いのだ。


 そもそも、ムウは男なのか、女なのか、それが最も気になる。

 男にしては可愛い顔をしているし、女にしては平らすぎるし、逞しさも感じる。


 同じ屋根の下で暮らしているのに、わからない。

 ムウは一切裸を見せないのだ。


 女なら、女同士なんだし気にしなくていいわけだし、男だとしても、自分ごときに恥ずかしがる理由がわからない。


 気になる。






 ムウがお昼寝をしているタイミングで、マーレは叔父の研究室に入った。

 中は様々な本やホルマリン漬けされたモンスターの一部が飾られていて、叔父は椅子に腰掛け資料を読んでいた。


「ん、どうした。お茶なら頼んでないぞ」


「あの、お聞きしたいことが」


「なんだ?」


「ムウさんって、男なんですか? 女なんですか?」


「なんだ藪から棒に。本人に直接聞けばいいじゃないか」


「聞けませんよ〜。そんな失礼なこと」


「ふーん。あいつはな」


「あいつは?」


「お」


「お?」


「お……」


「お……!?」


「む、いかん。村の寄り合いがあったんだ」


「ええ!?」


「じゃあな。晩飯はいらんから」


「ちょ、あの!!」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 叔父がどこかに行ってしまった以上、頼れるのは一人だけ。

 マーレは、気になったことは追求したい質なのだ。

 なので!!


「どうなんですか、キューネさん!!」


 キューネの家まで押しかけ、問いただすことにしたのだ。


「な、なによいきなり……」


「キューネさんなら知っているはずなので」


「本人に聞いてみればいいじゃない」


「だから無理なんですよ〜。そんな度胸ないです。それに、私はムウさんに助けられた身、そんな私がムウさんを怒らせるような真似、できっこないです!!」


「怒らないと思うけどなあ、そのくらいじゃ」


「殴られます!! 半殺しです!!」


 マーレは、好奇心旺盛なくせに人一倍ネガティブなのだった。

 迫害された元奴隷だからね、しょうがないね。


「ふーん」


「そもそも、どうしてムウさんって一切裸を見せないのでしょう。見たことありますか?」


「ないよ。暑くても、濡れても、人前じゃ絶対に脱がない。私も不思議に思っていたけど、最近になってようやく納得できた」


「?」


「私が知らないくらい幼い頃、手術したんだって。顔は綺麗だけど、きっと体は、いまでも痕が残っているんだよ」


「そうだったんですか……」


「でも、性別は知ってるよ」


 キューネがニコリと笑う。

 ちょっと含みのある、意地悪気な笑みであった。


「教えてほしい?」


「ぜ、ぜひ!!」


「ムウはね……」


「ムウさんは……?」


「お」


「お?」


「お〜」


「お〜?」


「やば!! 街までお使いしに行かなきゃだったんだ!!」


「ええ!?」


「じゃあね!! またギルドで」


「ちょ、キューネさ〜ん!!」


 結局、マーレはムウの性別を知ることはできないのであった。


 ちゃんちゃん。

 めでたしめでたし。

次回からまた新ストーリーです。

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