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陰陽師と葬儀屋  作者: 樋口快晴
鈴の付喪神と葬儀屋
9/11

9話


 「なんというか……あっという間だったね」


 「そうね、結局時間も足りなかったし」


 私達はあの後、前の保管者に会って話をした。

 しかし、彼は今回は急に予定を入れたが、次の予定もあると言って一言二言話して直ぐに帰ってしまった。

 古類(こるい)鉄工所の社長とはトントン拍子で話が進み、実際に神葬儀式(しんそうぎしき)の日に来てくださるそうだ。


 また、時間が無いのは私も同じで、残念ながら鎌倉を離れていられる時間が終わってしまって、街を散策すること無くそのまま帰って来た。


 「それにしても、3ヶ月掛けて貯めた霊力が、たったの半日でなくなっちゃうのは効率が悪すぎないかな」


 「仕方ないでしょ、それにこの後は山狩りも待ってるんだから」


 私が何故鎌倉から離れられないのか、それはこの、今私達がいるこの墓地を守る結界が関わってくる。

 この墓地には、普段は低位の妖怪の侵入を防ぎ、更には妖力や霊力の働きを阻害する効果を持った結界が張られていて、これがあるお陰で私が24時間休みなく此処で守る必要が無くなっている。


 しかし、結界の特性上そのような強力な効果を持った結界を張るにはいくつもの条件がある。その辺りを説明すると長くなるので、簡単に言ってしまうと、私が結界の(かなめ)となって沢山の霊力を注ぐことで保たれているのだ。


 その所為で、私はこの地を離れることが出来ない。

 要を失った扇子の骨がバラバラになってしまうように、私が此処を離れてしまうと結界が崩れてしまう。


 それを防ぐ為には代わりと成る物を用意して、要の代わりに核を据えれば良い。霊力を貯めて結界に私だと誤認させ、それを一時的な核とする事でその霊力が持つ間は離れることが出来る。

 最も三か月も掛けて貯めて来たのに、たったの半日で効果が切れてしまう程度の効力しか持たないからそこまで便利な物でもないけれど。


 「山狩りするにも、たったの1日でこんなに入り込むのね……私でもウンザリするわよ」


 「この量なら、3日は掛かりそうかな」


 「手伝おうにも私は結局妖怪だから山には入れないのよね」


 丹沢山(たんざわさん)から鎌倉まで続く標高1000m前後の山岳地帯、見方によってはその終わりであり、鎌倉との境にある細祇山(ほそずみやま)氏神家(うじがみけ)の墓地はこの山に併設される形で作られており、この山を管理、維持しているのが氏神家である。

 細祇山(ほそずみやま)はそれなりに大きな霊山で、妖怪たちが好む場所となっていて墓地の結界が細祇山(ほそずみやま)も包み込んでいなければ今頃は妖怪が大量に住んでいただろう。


 ただ、残念ながら今回のように例外的な方法で結界を離れた場合は、低位の妖怪が結界をすり抜けることもある、と文献にはあったからそれなりには覚悟していたけれど……。


 「流石にこの量は想像してなかったよ」


 「ここまでくると、もはや作為的な何かを感じなくもないわね」


 ここから感知できるだけでも少なくとも100以上。数だけで言えばもはや百鬼夜行もかくやという数が集っている。

 死体喰らいに落葉狩り(おちばがり)、他にも人魂、腐乱死体(ゾンビ)骨死体(スケルトン)

 どれもこれも大した脅威でもないけれど、放置しておくのはあまり好ましくない妖怪達。出来る限り早く討伐しないと、この霊山の力を浴びて凶悪化するかもしれない。そういった理由から、一刻も早く山狩りを行うわけだ。


 私も術師の端くれとしてこんな低位の妖怪に敗れたりはしないが、それでもこの数となれば気を付けた方が良いのは間違いない。湖夏(こなつ)さんに手伝ってもらおうにも()()()()()湖夏さんを山に入れる訳にもいかず、私一人でどうにかするしかないという訳だ。


 「幸い私も道具屋とは縁があるからそっちの対応と陰陽連との橋渡しはやっておくから山狩りに専念しなさい。そんなに大した準備もないから、清めの儀に入れるように準備しておくわ」


 「わかった、それじゃあ準備して直ぐに山に入ることにするよ」


 こうして、私は久しぶりに妖怪退治に繰り出すことになった。

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