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魔道具とその使い道

「ん? おお……ちょっとエストライア帝国に用事があってな」

「て……っ!? ん、んんっ! そうなんですね!」


 まさかカルロの口から帝国の名前が出てくるとは思ってもみなかったヨナは、思わず声を上げそうになったが慌てて口を塞いで咳払いをすると、誤魔化すように大仰(おおぎょう)に笑顔で頷いた。


(カルロさん、帝国に一体何を買い付けに行っていたんだろう……)


 大国であるエストライア帝国の産業は主に林業と農業、それに鉄鉱石の採掘などである。

 それらを買い付けに行ったのだとしても、馬車に大量に積まれていた荷物がそれらとは考えつかないし、それだったらわざわざカルロが行く必要もない。


 交渉のためだったとしても、他国の王族を呼びつける無礼な商人がいるとも到底思えないし、それだと馬車の荷物についての説明がつかない。


 つまり……王太子であるカルロが行かなければならないほど重要な品物の取引であり、かつ、かなり身分の高い者がその取引相手だったということ。


 カルロが供を連れていなかったのは、おそらく彼の性格だろう。

 もしくは、一人のほうが動きやすかったから、というのもある。


 いずれにせよカルロはエストライア帝国へ、知られては(・・・・・)いけない(・・・・)もの(・・)を秘密裏に買い付けに行ったということだ。


「それよりもっと食え! まだまだあるんだからな!」

「は、はい!」


 ヨナもそれ以上尋ねるようなことはせず、食事を楽しんだ。


 ◇


「うう……もう食べられないよ……」


 その日の深夜、ヨナはベッドの上で大きくなったお腹を押さえる。

 さすがに食べ過ぎたようで、今夜は寝つけそうにない。


 しばらく寝返りを打ってごろごろとしていたヨナだったが、腹ごなしのために少し動くことにし、ベッドから降りて部屋を出た。


 ベネディアの王城は小島にあることもあってか、それほど大きな建物ではない。

 ヨナはちょっとした好奇心から、探検しようと思い立ち廊下を歩いていると。


「…………………………のか」


 廊下の奥の部屋から、男の声が聞こえた。

 ちょっと怖かったものの、ヨナはおそるおそるその部屋へと近づく。


 すると。


「これらの武器を量産、ですか……」

「そうだ。できそうか?」

「何とも言えません……やはり帝国だけあって、相当な技術が使われています。うちの国の職人達に、ここまでのものが作れるかどうか……」

「むう……」

「それに、仮に量産が可能だったとしても、最低でも一年以上かかります」

「そんなには待てない……ここにある分だけで挑むほかないか……」


 声の主は、一つはカルロ。もう一つは知らない男のものだった。

 おそらく男のほうはベネディア王国の技術者で、会話の内容から察するにカルロが買い付けたのは帝国の武器だろう。


(これ……結構大変なことなんじゃ……)


 エストライア帝国が西方諸国で大国としての地位を築いているのは、その領土の大きさや優れた人材が豊富ということもあるが、何よりも戦争での強さによるもの。

 それを支えているのは、戦術と高度な技術力。


 そう……帝国の主力武器は、魔導具である。


 魔導具がどのような構造になっていてどれだけの威力があるのか、現物を見たことがないヨナは分からないが、いずれにせよかなりの技術を要するのだろう。

 そうでなければ、他国も追随して魔導具の生産を行っているはずだ。


 そしてカルロは、その帝国から魔導具を買い付けた。

 魔導具の研究と大量生産を行うために。


 ただし、それよりも優先順位の高い目的があるようだが。


 そのことを考えたら、カルロが単独で帝国に平民を装って交渉に赴いたことも頷ける。

 帝国の誰がカルロと取引をしたのかは分からないが、やっていることは機密情報の漏洩……売国行為だ。


 あまりの事態の大きさに、ヨナはどうしたものかと頭を抱える……のだが。


「っ!?」

「ヨナ様。このようなところで、どうなさったのでしょうか」


 背後から肩を叩き、ヨナに声をかけてきたのは、侍女のアウロラとプリシラだった。

 二人の瞳は、一切笑っていない。


「あ……あの……」


 ヨナはカルロの会話を盗み聞きし、ベネディア王国の秘密を知ってしまった。

 その現場を押さえられ、言い逃れもできない。


 この後のヨナの処遇は、よくて投獄。最悪は処刑だろう。

 会話を聞いてしまったことを後悔しつつも、ヨナはこの場を切り抜けるために考えを巡らせる。


 その時。


「ヨナ?」

「あ……」


 部屋から顔を(のぞ)かせたのはカルロだった。

 ヨナと侍女二人のやり取りで、彼にも気づかれてしまったようだ。


「あー……聞いちまったか」


 カルロは頭を掻き、バツの悪そうな表情を浮かべる。

 だが、あまり悲壮感のようなものはなく、むしろ悪戯(いたずら)が見つかってしまった少年のような印象を受けた。


「まあいいさ。別に悪いこと(・・・・)をするわけじゃねーからな」


 そう言うと、カルロがヨナを手招きする。

 どうしたものかと思うが、ここは従うしかないだろう。ヨナは部屋に入った。


 中には数々の武器……魔導具が積まれており、先程カルロと会話をしていたであろう男が、ヨナを(いぶか)しげに見つめる。


「そ、その、これ……」

「帝国で買い付けた、『魔導具』と呼ばれる武器だ」


 魔導具に指を差すヨナに、カルロは隠す様子もなく答えた。


「……カルロさんは……いえ、ベネディア王国は、これを使って戦争するんですか……?」

「違う」


 ヨナの問いかけを、カルロは真剣な表情できっぱりと否定する。

 戦争に使わないのなら、この魔導具で一体何をするつもりなのか。目的や理由が分からないヨナは、カルロの顔を(うかが)うと。


「俺達はこの魔導具で、『中央(メディウス)海の守り神』を討伐するのさ」

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