救われた想い
とても大切なお願いがあります!
どうか、あとがきまでご覧くださいませ!
「ヨナ!」
「わぷっ!?」
馬から飛び降り、ヨナに飛びついて思いきり抱きしめるランベルク公爵。
彼女の大きな胸に顔を挟まれ息ができないヨナは、思わず手足をばたつかせた。
「ふふ……ランベルク卿、それではヨナが窒息してしまいますよ」
「あ……そ、そうね」
「ぷはっ! はあ……はあ……」
パトリシアの一言でようやく解放されたヨナは、大きく息を吸う。
「もう……酷いですよ」
「あ、あら、ごめんなさい」
口を尖らせるヨナにランベルク公爵は謝罪するが、表情は全然反省している様子がない。
そんなことよりも、ヨナが無事でいてくれたことが何よりも嬉しいのだ。
「それで、国境は無事だったんですか?」
「ええ、おかげさまで。かなりの数の魔族を倒したから、少なくとも当分の間は何もできないはずよ」
「ん、いっぱいやっつけた」
ランベルク公爵の言葉に合わせ、ティタンシアが胸を張る。
その表情は、どこか誇らしげだ。
「ヨナ達はどうだったの? 何か変わったことはない?」
「その……お嬢様、実は……」
ヨナの傍に控えていたペトラが、ランベルク公爵不在時の経緯について説明した。
長年仕えていた執事長が魔王軍の手先だったこと、自分や兵士達を含めたグラッツの人間全員が執事長(正しくはタローマティ)に操られていたことを。
「そ、それで、みんなは無事なの!?」
「はい、執事長はまだ見つかってはおりませんが、おかげさまで全員無事です。その後も魔王軍による襲撃は一度もありませんでした」
「そう……」
ペトラの言葉に、ランベルク公爵は胸を撫で下ろす。
だが、ここでペトラの説明がおかしいことに気づく。
どうしてペトラ達は、操られていたはずなのに意識を取り戻したのか。
なぜペトラは、犯人が執事長であることに気づいたのかを。
「……私にも詳しいことは分かりませんが、最初に起こしてくださったのはヨナさまでした。ですので、きっとヨナ様が私達を助けてくださったのだと思います」
そう言って、ペトラはヨナを見る。
「なるほど……つまり私達がグラッツに帰還するまでに、ヨナが全て片づけてくれたということだな」
「え、えへへ」
顎に手を当て、笑みを浮かべて顔を覗き込むパトリシアに、ヨナは照れ笑いをした。
そう……もはやこのグラッツに、ランベルク公爵に仇なす輩はいない。
ダニエルを死に追いやった『背教』のタローマティは、もうどこにもいないのだから。
「ん、やっぱりヨナはすごい。『渇望』のザリチュと同じように、今回もやっつけてくれた」
「わわわわわ!?」
ティタンシアに抱きしめられるばかりかさらに頬ずりまでされてしまい、ヨナは顔を真っ赤にさせる。
いくらまだ十一歳の子供であるとはいえ、男の子なのだ。ティタンシアのような綺麗な少女にこんなことをされたら、恥ずかしさや緊張でこうなってしまうのも無理はない。
「ヨナ……本当、なの……?」
「……ティタンシアさんとパトリシアさんは知っていますが、僕は古代魔法が使えます。『背教』のタローマティも、僕が倒しました」
国境へと向かう途中でパトリシアやティタンシアから聞いていたため、ランベルク公爵もヨナが本当はただの子供ではないことを知っている。
それでも目の前の可愛い小さな少年が、五百年もこの地を苦しめ続けてきた『背教』のタローマティを打ち倒したなどと、ランベルク公爵は到底信じられなかった。
だが、ヨナははっきりと肯定する。
自分こそが、『背教』のタローマティを倒したのだと。
「ありがとう、ヨナ……これであの子も……ダニエルも浮かばれる……っ」
涙を零し、ヨナを抱きしめるランベルク公爵。
『女傑』と呼ばれ、辣腕を振るってきた彼女の心は今、救われた。
この、小さな少年の強さと優しさによって。
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