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婚約ではありません。これは契約です。

わたしの名前はセイ。前世は日本人だったけど今は異世界にいる。

だけど残念なことに親からも嫌われて、村からも邪険に扱われている。なぜ? それは容姿が『おかしい』それに尽きる。


どんな姿か気になる? 単なる黒髪。たったそれだけ。


日本人としての、わたしの存在証明のようなものだけど、『魔女』とよく言われる。日本でも、黒猫は不吉とか言われるから分かるけど流石に嫌われすぎだと常々思う。

例えば、サンドバック扱いなんて日常茶飯事。そのせいで露出の激しい服なんて異世界に来てから着たことなんてない。

あとは、家が燃やされかけたりなんてこともあったり。


代々黒髪が生まれる家系でもないし、両親は魔女でもない。本当に不幸なのは『両親』だと感じるね。


「どうしてこうなったのかな……」

独り言が漏れる。と言っても聞いているものはいない。

んだけどね。

両親は毎日のようにわたしのことで言い争いをしている。心に来たのは奴隷商人に向けて『わたしを売る』という手紙があったこと。なんだかんだ売られることはなかったけど、ご飯はろくに食べられない日常が続いている。

成人(15歳)したのち、とある貴族にわたしは売られてしまった。その貴族は毎月のように婚約をしているが、妻は必ず死んでしまうから困っているらしい。そこで無価値なわたしはそこへ売り飛ばされた。

正直どうでもよかった。このまま死んでもいいと思っていた。そんな時に現れたのが彼だ。

「君を愛すことはない」

彼はそう言った。意味が分からなかった。

「それはどういうことですか?」

思わず聞いてしまった。

「ボクが愛したものは『必ず死ぬんだよ』だからキミをぜったいに愛さない」

それを聞いて理解した。この人は死神なんだと。

死神は寿命が来る前に亡くなる人の前に現れるという。でもきっとわたしは愛されなくても死ぬんだろうなと。


「はい。わたしはそれでいいです。どうせ死ぬ運命でしょうし」

「…….本当にそれでいいのか?」

彼はわたしを見つめながら言う。

「えぇ。どうせ死ぬならあなたみたいな優しい人と死にたいもの」

それは皮肉のつもりだった。でも珍しく優しいような存在だから言葉に出てしまった。「そうか……。じゃあ契約しよう」

「けいやく……ですか?」

こんやくとけっこん、何文字か違うだけで冷たさが全く違う。そしてこの場に似つかわしくない言葉だった。

「そうだ。君は今からボクの妻になる。ボクは君を愛しはしないが大切にするよ。どうだい?」

「ええ。それがいいわ。契約完了ね」


前世でも結婚式を行ったのか覚えていないけど、こんなに簡素なつまらないものとしか思えないなんて、やはりわたしは『魔女』なのか。



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