監禁中な元人間が所有者と
~監禁中な元人間が所有者と~
がちゃがちゃといくつもの音が聞こえる。
それだけでユミカは頬を熱く染めた。
待ちきれない衝動が鎖を揺らし、彼女の住処であるベッドがきしきしと軋む。焼け付いた声帯から焦げた鳴き声を喘がせ、真っ暗闇の向こうに生じた光に滂沱の雫を垂れ流した。それでもなお大きく見開かれた瞳の中にぼんやりと愛おしい人の形が生まれて、間近に迫ったにこやかな笑みにたまらず触れ合った。
犬のように舐め、恋人のように求め、おもちゃのようにもてあそばれて、それからご主人様であるキサラからの待ての合図に腰を沈める。
「ふふふ。ユミカ君は今日も元気だね」
「ぁ、っ、~♪♡」
「ボクも大好きだよ、ユミカ君」
ユミカの声にならない言の葉も、ご主人様はひとかけらさえ残さずに拾い上げる。
だから何度だって愛の言葉を肺から吐き出して、そのたびに愛おしむ指先の心地を堪能する。
「そうだ。今日は11月11日なんだって。だからユミカ君としようと思って買ってきたんだよ」
そういって見せられる箱も、日付のこともユミカにはもうよく分からない。
キサラのモノになってから何度か同じようなことを聞いたような気もするし、今日が初めてのような気もする。なんにせよ、いまから自分は愛されるのだろうという期待にユミカは唾液を滴らせて鳴いた。
「~っ、ぅ~♡」
「いいこいいこ。ほら。こっちの端を咥えてごらん」
キサラが咥えたポッキーのもう片方に噛みつく。
簡単に折れてしまったお菓子の甘さをご主人さまにも伝えたくて、さくさくと食べ進めると口の中のドロドロをくちづけで流し込んだ。
らんらんと輝く瞳と見つめあっていると、ユミカは脳髄がしびれるような多幸感に包まれて身体がとろけていく。
腰をゆさゆさと揺さぶりながら熱心に甘いくちづけを堪能するユミカに、顔を上げたキサラは笑う。
「ふふふ。これじゃあゲームにならなさそうだね」
「~♪っ、っっ、ぉ、ぁぅ~♡」
「もちろん。ほら、おかわりをあげよう」
「♡」
ご主人様の咥える愛のお菓子に、獣のごとくくらいつく。
ポッキーゲームという名の愛撫は一箱分も続かず、やがて暗闇の中に獣のような嬌声が響く―――