大学生な視聴者が巷で人気のYoutuberと
~大学生な視聴者が巷で人気のYoutuberと~
「あ、ユミカさんっ」
鼓膜を揺らす、喜色に透き通る心地よい声。
その声が聞こえてくるとユミカはいつも胸が躍る。
振り向けばそこにいた彼女は、人目もはばからず胸に飛び込んできた。
「えへへ。おはようございます」
「おはよう。会いたかったよ、トウイ」
眼鏡越しに見上げる笑んだまなざしに、意識せずとも笑みがこぼれる。
普段から画面の向こうで見る笑みよりもずっときれいに見えるのは、優越感なんかのせいではないだろう。
その美しい声を活かして朗読系YouTuberをしている恋人のトウイは、ユミカと会うときはいつも眼鏡をしている。ふたりが初めて出会った高校生のときからで、YouTuberとして顔が売れた今では変装の意味合いもあった。
一日を目いっぱいデートで楽しむふたりは、朝ごはんのためにまずカフェに入った。
そこで軽食を取っても、なんとなく物足りなそうに顔色をうかがうトウイに、ユミカはいつものように笑みで応えた。
「デザート、なにがいい?」
「えへへ。実はこの生チョコパフェが食べたくて」
問いかければすぐにメニューをめくるトウイ。
いつものことだ。たくさん食べることを恥ずかしいと思っているらしい彼女は、ユミカに促されてからじゃないとデザートを頼まない。
やってきたパフェに瞳を輝かせたトウイは、それからふとなにか思いついたようないたずらめいた笑みを浮かべる。
「ユミカさん、今日はポッキーの日らしいですよ?」
「ふぅん。……したいの?」
「いけずですね。ほら、雑談のネタにもなりますし」
パフェに刺さっていた棒状のお菓子を咥える恋人の申し出を、ユミカはくすくすと笑いながらも受けて立つ。クリームのほうを自分に向けてくれるささいな気遣いさえも愛おしい。
最初は互いに迷いなくサクサクと食べ進めるが、近づくにつれてトウイの動きが止まる。
目を細めたユミカも、ちょうど半分ほど食べきったところで動きを止めた。残りはトウイが動かなければ近づかないようだ。
トウイはしばし恨みがましい視線をユミカに向けたが、やがて恐る恐るとまたお菓子をかじっていく。
―――そして。
くぃ、と、メガネがユミカの顔に当たる。
「あ」
声を上げたトウイは恥ずかし気に眼鏡をはずそうとして、その手をユミカに止められる。
トウイが口を離したことでゲームの勝者となった彼女は、ぺろりと唇をなめて笑う。
「続きは、メガネを取ったらね」
「あぅ……」