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第12話 夕暮れの河川公園

 ヘイゼルさんと夕暮れの川沿いの遊歩道を歩く。俺が木刀を抱えているせいか、すれ違う人には奇異の目で見られているようだ。しかし、今抱えている木刀は松下村塾の銘が刻んである名刀である。松下村塾を知らない人もいるかもしれないが、かつて日本の革命である明治維新を推進した英雄を育てた私塾である。その、新しい日本を創造した魂を刻み込んだ剣であり、自分としては世界最強の剣なのだ。


「ところで壮太。覚悟はいいか?」

「バッチ来いですよ」

「その意気だ」


 ヘイゼルさんに褒められたようで気分がいい。俺たちが歩いている遊歩道が河川敷の公園へと繋がっている。ヘイゼルさんは堂々とその公園の中央へと向かう。俺も彼の後を追うのだが、何故か違和感が半端なくある。この公園は、夕方にはジョギングする人や犬の散歩で訪れる人が多いはずなのだが、今は誰もいない。


「誰もいない……ヘイゼルさん。これ、おかしいです」

「だろうな。先程から魔力を敢えて大量に放出し、私たちを誘っている。それは同時に他者を寄せ付けない結界でもある」

「なるほど。じゃあ昼間ショッピングモールで出会ったアイツがいるんですね」

「そうかもな。そこを見ろ」


 ヘイゼルさんが指さす方向は公園の中央付近。そこに突然、淡く輝く光球が現れた。


 それはぼんやりと輝きながら次第に人の姿へと変化していく。


 ヘイゼルさんと目が合う。彼は黙って頷いた。

 俺は名刀松下村塾を構えてその淡く輝く人型の何かに向かって松下村塾を振り下ろした


「てえええ! 至誠剣!」

 

 技名は適当だ。しかし、俺は高校時代、体育の授業で少しだけ剣道を習ったのだ。その時は剣道三段の教官に褒めて貰った記憶がある。そんな俺の自分的には鋭い木刀の軌跡は、その人型の何かに吸い込まれた。


 木刀からはガツンと強い衝撃が伝わる。

 その人型の何かの右腕が木刀を掴んでいたのだ。


 そいつは思い切り木刀を引く。俺は前のめりになって躓きそうになった。体勢を崩した俺に対し、そいつは木刀を突き出した。


 その木刀の柄が俺のみぞおちにヒットした。思わず木刀を手放した俺は、その場で尻もちをついてしまった。


 ぼんやりと光る人型の何かは木刀を持ち替え、俺に向けて振り降ろしてきた。俺は咄嗟に体を捻ってやり過ごすのだが、そいつは俺の腹の上に乗っかり、いわゆるマウントポジションを取った。そいつは松下村塾をポンと放り投げて腕を組んだ。その、ぼんやりと光る顔がにやりと笑ったような気がした。


「よく来た。ウルファ」

「はい、ヘイゼル様」


 え? これ……何?

 ウルファって……誰?

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