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ハガル・トッカータ  作者: 借屍還魂
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二人の接点

 一般的に、人間は動揺した際に瞳孔が開くと言われている。噂の出所を気にしたことからも、その三年生は黒い紐について何か知っていると考えて良いだろう。

「反応したのは候補のうちどちらですか?」

 取り敢えず、相手を特定しておこう、と思ってベルナール伯爵令嬢に確認する。すると、令嬢は少し困ったような顔をして答えた。

「それが、お二人共、そのような反応を……」

 この場合、考えられる可能性は、二人が直接情報を共有している可能性と、その噂が比較的広まっているものである可能性だ。しかし、出所を気にしたことと、三人中一人は知らなかったことから、三年生全体が知っている訳ではないだろう。

「……二人は交流が?」

「いえ、事前の調査では接点は殆どない筈です」

「領地も遠いですし、実家同士の関わりは確実にないですねぇ」

 話を聞きに行く令嬢たちに何かあってはいけないので、事前にある程度調査をしておいた。その結果、三人の候補に接点はない筈だったのだ。

「でも、一応、同学年で同じクラスですよねぇ」

「挨拶と世間話位はするだろうけれど……」

「ですが、基本的に貴族院では同学年同派閥の方と行動することが多いです」

 この国には三大派閥、と呼ばれる派閥がある。王権派、軍事派、国教派の三種類で、表立って対立はしていないものの小さな諍いはそれなりにある。なので、僕達側近・婚約者候補は各派閥からバランスを取れるように選ばれている。

「三人の派閥は……」

「一番可能性が低い方は国教派です。派閥のお茶会で見かけたことがあります」

「一人は軍事派ですね。武術大会で手合わせしました」

 令嬢とクインテット嬢の話から、二人はそれぞれ国教派と軍事派。そして、最後の一人は僕が見たことがあるので王権派だろう。派閥は別。学院内で一緒に行動している可能性は極めて低いといえる。

「……接点はないと仮定しましょう」

「と、なると、二人が噂を知っている理由ですよねぇ」

 二人がどの程度噂について知っているのか、何故知っているのか。噂の出所を気にしていたということは、後ろめたいことがあるのか。

「噂は何処で聞いたと答えたんですか?」

「放課後、廊下で聞いたと答えました」

 嘘ではない。ヴィヴィア先生から話を聞いた時は図書館前階段から部屋に移動しながら概要を説明されたので廊下で話を聞いている。

「そうしたら、どの辺りで聞いたのか、と聞かれて……」

「やけに気にしますねぇ」

「図書館前階段付近、と答えました」

 あまり人気は多くないものの、どの学年でも利用するので特定はできない答えだ。咄嗟に考えたとは思えない、良い回答だと思う。

「それで?」

「何か考えるような素振りの後、話は終わりだと言って何処かにいかれました……」

 噂を流したと思われる人物のところに聞きに行ったのか、もし黒魔術の儀式をしているのならその場所を確認に行ったのか。三年生があからさまな行動をするとは思えないので、前者だろうか。

「方角は?」

「話をしたのが三年生の教室付近で、向かっていったのは教職員棟の方かと」

 教職員棟には、名前の通り教室や職員の部屋がある。結婚していなかったり、王都内に屋敷を持っていない先生は教職員棟の部屋で暮らしている。

「ヴィヴィア先生に相談でしょうか?」

「魔法絡みの問題は全部先生ですから……」

「常にいますからね」

「独身らしいですけど、幾つなんでしょうねぇ」

 常に貴族院内にいる先生の一人が、ヴィヴィア先生である。何か不思議な事があったら取り敢えずヴィヴィア先生に相談すれば良い、という風潮があるので、話に行った可能性はある。

「話が逸れましたね」

「すみません、ベルナール嬢。続きをお伺いしても?」

 最後にミフネ嬢が余計な事を言ったので、少し話し難そうにしている令嬢に殿下が続き促す。

「はい。なので、一応、噂について知っていることや相談が有ればヴィヴィア先生に、と伝えましたが……」

「完璧な対応ですね」

「特に反応はなく、そのまま立ち去ってしまわれました」

「失礼な対応ですね」

 三年生の候補は三人共伯爵家だ。同じく伯爵家であるベルナール伯爵令嬢に雑な対応をするなんて、余程馬鹿にしていたのか、慌てていたのか。

「そういえば、教室から見れば、教職員棟と同じ方向に宿舎もありますよねぇ」

「ああ、躑躅の生垣のある」

 急に思い出した、と言った風にミフネ嬢が言い出した。初日の実戦魔法の授業で隠れた門の近くの小さな宿舎のことだろう。

「普段は使われていないはずですが……」

「基本的に伝令で来る文官や武官は王都に生活拠点がある事が殆どですからね」

「だから、です」

 貴族院への伝令の半分は王宮から。そうでなくても王都に別邸を持つ貴族の使いは利用しない。なので、あの宿舎が本来の用途で使用されるのは半年に一度くらいのものだ。

「普段人気がない所なら、密談や秘密の作業にもってこいでは?」

 いつ利用されるかわからないので黒魔術の儀式をしているとは言い切れないが、噂話を聞く位は出来るかもしれません。とミフネ嬢は笑った。

次回更新は9月5日17時予定です。

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