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ハガル・トッカータ  作者: 借屍還魂
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仮定と調査

 ひとまず、日常生活に支障があるようならヴィヴィア先生や他のメンバーを頼り、しばらく様子見をすることになった。黒い蛇が一過性のものならいいのだが、頻繁に現れるようなら対策を講じる必要があるだろう。

「……日常生活に支障が出るかもしれない、という割には誰も心配してませんよね」

 話し合いの結果、魔力を流しながらボタンを押せばいつでも先生に連絡が入る魔術道具を貸してもらう事は決定したものの、黒い蛇によって僕が怪我をすることについての話し合いは殆どしなかった。

「まあ、モミジさんですからねぇ」

「ミフネ嬢、それはどういう意味で言ってます?」

「しっかりしてますし、なんとかなると思って言ってます」

 実際に模擬試合では物凄く被害に合ったのだが、その辺りはどうなのだろうか。というか、先生が適当な理由で安全性を判断している筈がない、と思い見ると、理由を説明してくれた。

「まず、蛇はストックデイルにしか見えない。という事から、黒魔術によるものだと仮定して調査を進める」

「他の可能性は捨てるんですか?」

「極めて可能性が低いからな。行き詰ったら他の手段も考慮する」

 一応、先生は実践魔法の授業で使用したコートを調べてきた結果、幻覚魔法などの可能性は低いと判断された。また、僕が薬物などで幻覚を見ている可能性については、僕が自分でブローチを外したようには見えなかったので除外された。

「以上のことから、黒魔術によるものと考える」

「成程」

「でも、そこから特に対策を練らないことにはどう繋がるんですか?」

 ミフネ嬢が尋ねた。黒魔術の可能性が高い事は分かったが、だから僕が無事だという理由は謎だ。すると、先生は魔法理論の基本を覚えているか、と前置きをしてから説明を始めた。

「高位貴族は魔力が多い分、魔法への耐性も高い。ストックデイルの魔力量は貴族院内でも上位だ。早々、状況が悪化するとは考え難い」

 魔法は魔力によって引き起こされる。なので、魔力を多く持っていると、無意識に自分に害をなす魔法を無効化するため、耐性が高くなる、というやつだ。最初の頃の魔法理論の授業で言われた気がする。

「逆を言うと、モミジ様に被害を及ぼせるなら、相手がかなり絞れるという事ですね」

「そうなるまで放置するつもりはないがな」

 黒魔術の難しい点として、相手が魔法への耐性が高かった場合、相手に掛けようとした魔術が自分にそのまま返ってくる、という特性があるらしい。ハイリスクハイリターンなので、中々手を出す人はいない。

「単純に魔力量で勝っているだけでなく、黒魔術に割いた魔力の量が重要になる」

「モミジさんより多い魔力を、一つのことに使用できる余裕がある人なんて、中々いないですねぇ」

「一応、僕は侯爵家だからね」

 高位貴族になればなるほど、魔力は多い傾向にある。僕は侯爵家、平均より遥かに多い魔力を持っている。公爵家や王家、魔導士塔の魔導士には敵わないが、早々負けることはない。

「後は、先程述べた通り術の使用者と対象者の繋がりが強い。その特性を利用して、魔力の逆探知を行う」

「えっと、魔力を基に、誰が魔法を使用したのか特定する方法ですよね」

 魔法を使うために必要な魔力は、人によって特徴が異なる。その為、魔力から個人を特定することが可能なのである。魔法を使った犯罪などが起こった際に、逆探知による捜査が行われることがある。

「一般的には魔法が使用された場所から探知を行うが、今回は不明だからな」

「僕が触媒になる、と……」

「とはいえ、早くても二、三日はかかる。それまでに他の方法で解決を目指す」

 魔導士塔に調査を依頼して、最速で二日はかかるそうだ。調査開始までに時間が掛かれば更に解決は遅くなるため、他の方法での解決も同時進行で目指していく。

「具体的に、どうすればいいですか?」

「黒魔術というのは余程相手を恨んでいない限り行わない。つまり」

「モミジさんを恨んでいる相手を探して、不審な点がないか調べればいいんですね!!」

 黒魔術を継続して行っている場合は、魔法陣や媒体をそのまま置いている筈なので、それを直接発見することでも解決に繋がる、と先生は言った。

「とはいえ、人目につく所で黒魔術なんてしませんよねぇ……」

「禁術に指定されていますから、見つかった時点で罪に問われますね」

「普通に考えて、自室とかでやるだろうな……」

 最近、部屋に籠りがちな人物を調べてもいいが、普段から部屋で過ごす時間が長い人もいるし、単純に体調不良の可能性もある。知り合いでないなら部屋の中を見せてもらえるはずもないので、実際の現場を押さえるのはなかなか難しいだろう。

「候補を絞るだけでもいい。それだけで特定は楽になる」

「わかりました」

「今日の話は終わりだ」

「はい、失礼しました」

 自分を恨んでいる相手を探すのは少々微妙な気分だが、仕方がない。できる限り早く犯人を見つけよう、と皆の後ろを歩きながら最近の出来事を思い浮かべ始めた。


次回更新は8月30日17時予定です。

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