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ハガル・トッカータ  作者: 借屍還魂
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新たな発想

 一晩明けて、僕は新しい条件を含んだ実験計画を、ミフネ嬢は安全に実験を行うためのクッションを、クインテット嬢は前回のボガートのように戦闘が発生した場合に対処するための武器を準備した。

「「「「おはようございます」」」」

「……朝から元気だな」

 そして、昨日と同じ階段に集合し、既に待っていたヴィヴィア先生に揃って頭を下げたのである。昨日の放課後、予定より少し早く実験を切り上げ、先生に昨日の実験成果を報告したのである。

「全く、昨日の放課後に既に転倒条件を満たすようなところまで進めているとは……」

「その辺りに関しては、勢いでやってたので……」

「思ったより実験の進行が早かったですね」

 職員会議があったことや、最初は危険性の低い実験から行う予定だったこともあり、二人で階段を上る実験まで行うとは思っていなかったらしい。後から報告を聞いて、こんなことになる位なら職員会議位適当に言い訳をして抜けるべきだった、と頭を抱えていた。

「それで、今日はどの実験からするつもりだ?」

「先生にご協力いただけるという事で、殿下が参加する実験を行いたいと思います」

 先生は、持っていた鞄から幾つか道具を取り出しながら僕に聞いた。鞄に入っているのは、安全確保の為の魔術道具だろう。一番大きな布のようなものをミフネ嬢のクッションの上に置き、小さなブローチの様なものを二つ掌にのせて僕たちに見せた。

「ストックデイルとファラデー以外の男女二人組という事か?」

「いえ、僕と殿下で、男子二人組の場合を試そうかと」

「そうか。なら、二人共これに魔力を込めろ」

 先生に渡された、小さなブローチには、透明な石が嵌められていた。言われた通りに魔力を込めると、僕の持っているブローチの石は緑色に、殿下の持っているものは金色に変わった。

「これは、あまりに危険な攻撃などから守ってくれるものだ。今回は落下した際の衝撃から体を守るために使う」

「胸につけておけばいいですか?」

「ああ」

 ミフネ嬢が持ってきたクッションの上に敷いたものは、衝撃吸収能力が底上げされるものらしい。本来は硬い地面にそのまま敷いて使うそうなので、クッションに敷いていいたらまず怪我をすることはないだろう、とのことだった。

「では、『朝、男子二人』の条件から」

 安全確認良し。上の階に記録係のクインテット嬢、下の階にミフネ嬢と先生がいることを確認して、僕は殿下の少し先を歩き始めた。


 朝の授業前の時間ギリギリまで実験を繰り返した結果、男子二人組、女子二人組ではどのような条件でも、透明な段は現れないことが分かった。念のため、僕とヴィヴィア先生の組み合わせでも試したが、何も起こることはなかった。

「謎は深まるばかり、ですねぇ」

「男女でないと発動しないことは、殆ど確定ですが」

 残るは男女の組み合わせのみ。今日中に条件が確定すればいいのだが、男女二人組の時には満たし、婚約者同士では満たさない条件というものが何かわからないと解決しないだろう。

「僕とミフネ嬢か、クインテット嬢で試して、駄目なら殿下にご協力いただく必要がありますね……」

「勿論、協力させてもらうよ」

「相手を変えるだけで変化はあるのでしょうか?」

「わたし達は殿下の婚約者候補ですからねぇ。その辺りで差が出るかもしれません」

 透明の段差は、僕達の関係性を察知するような方法を持っている可能性もある。それが条件に含まれているのなら、婚約者同士では発動させないことは可能だろう。とはいえ、何故婚約者同士の時は発動しないのか、理由は気になるが。

「いっそ、階段と会話できたらいいんですけどねぇ……」

「そもそも階段に意思があるとは限らないし、そんなに便利な道具はないと思うよ」

「あるかもしれませんよ?放課後、先生に聞いてみましょう」

 ミフネ嬢は、期待一杯の眼差しで言ったのだった。殿下とクインテット嬢はいつもの通り、笑顔を浮かべて見ているだけだった。


「そんな魔術道具はない」

 そして放課後、ミフネ嬢は、先生の顔を見るなり物と会話する道具について尋ねた。そしてあっさり否定された。

「そもそも、会話を成立させるためには、相手側に生命があることが前提だ」

「鉱石なら兎も角、木は元々生きていたと考えたら実現不可能ですか?」

「……確かに生命活動は行っていたとして、そこに意思が存在していたといえるか?」

 納得いかない、と顔に書いてあるミフネ嬢を見て、先生はため息をつきながら説明した。それでもミフネ嬢は食い下がる。

「木に宿っていた、妖精とか……」

「その類の妖精は、木が死んだ時点でいなくなるだろう」

「今回は、この現象を妖精と見立てるとか……」

「発想は面白いが、今すぐに試すことはできないな」

「そうですか……。モミジさん、行きましょう」

 そして、落胆した様子のまま、『男女、放課後、お互い階段の端』と言う条件で上り、あまりに気を抜いていたミフネ嬢が階段から落ちて先生に叱られたのであった。


次回更新は8月13日17時予定です。

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