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ハガル・トッカータ  作者: 借屍還魂
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本当の動機

「確かに、最初は国内が混乱するかもしれない。だが、魔術道具と装飾品は別物だ。すぐに用途の違いから販売ルートも別になるはずです!!」

 エルガー伯爵子息は椅子から立ち上がって叫ぶように言う。かなり熱が入っているし、目線も真っ直ぐ僕に向いている。

「兄に黒魔術が掛けられたなら、他の上位貴族が警戒しないはずもない。こぞって魔術道具を買い求めるようになるでしょう」

 逆を言えば、黒魔術を使用すること自体は可能だと、黒魔術の技術は存在するのだと証明することになる。装飾品として魔術道具を持ち込んで、よからぬことを企む輩が出てくるかもしれない。

「……魔術道具を製作するには魔導士塔の許可が必要です。防御系の効果を持つものに製作を限るなど、対策は幾らでもある。それならば使われる鉱石も限られますので、市場の混乱も少なく済むはずです」

「それでも、価値の低かった宝石が評価されることに変わりはありません」

 それに、魔石さえ手が入れば魔術道具を作ることは簡単になる。防御魔法の為の魔石は他の魔法にも利用することができるだろう。色味だけではどんな魔法か、魔導士でもなければ判断することができないだろう。

「それに、誰が魔術道具を管理するのですか?魔導士の多くは自身の研究範囲には強い関心を持っていますが、悪く言えば他の分野に対して興味が薄い、もしくは全くない人も多い。そんな人たちが、自身の研究以外に時間を取られることを望むでしょうか」

「ですが、最終的な魔法の発展の為なら、協力してくれるはずです」

 魔導士塔はエリート揃いだ。それぞれ、魔術に長けた者が集められている反面、人数が少ない。現在も魔導士塔に認められている人材が少なく、貴族院の魔法教育に関してもヴィヴィア先生が実践魔法に魔法理論を掛け持ちで教えているような状況だ。

「それに、魔導士塔の目を掻い潜って魔術道具を製作するような者がいないとも限らない。魔導士塔に入れなかった、魔法の心得があるものはそれなりにいますから」

「ですが、実力としては正式な魔導士に劣ります」

「堂々巡りになっています。結局、魔術道具の価値が上昇する一方ではないですか」

 装飾品として魔術道具を付けることが普通になれば、結局、貴族たちは疑心暗鬼になるだけだ。確かに魔法は発展するが、総合的に考えると、国全体へのデメリットの方が大きすぎる。

「貴方とは分かり合えそうにないですね」

「お互いの主張を理解せずに対立することと、理解したうえで対立することは全く意味が違いますよ」

 少なくとも一方的に悪だと決めつける訳にはいかない。殿下の側近として、そんなことをするわけにはいかない。が、結論は出た。僕が椅子から立ち上がるとエルガー伯爵子息が目を見開いた。

「エルガー伯爵子息。話し合いは決裂です。どうしますか?」

 実力行使するつもりですか、という問いかけである。因みに、エルガー伯爵子息の視線が僕に集中しているうちに、カーペット越しに足元を探っていたのだが、僕の足が届く範囲内には床の凹凸が無かった。今、椅子の少し右側に立って探ると、若干の凹凸があることが分かる。

「因みに、僕が座っていた場所が魔法陣の中央だったことも分かっていますので、もう一度座らせようとしても無駄ですよ」

「驚いた。仲間と分断され、圧倒的不利な状況だったというのに、予想以上に冷静だったようですね」

「エルガー伯爵子息こそ、熱心に魔法の発展だけを考えた結果暴走してしまった、という主張は驚くほど一貫していて驚きました。随分前から用意していたのですか?」

「そこまで見抜かれていたとはね、流石はストックデイル侯爵家の御子息だ」

 僕の事を真っ直ぐ見ていたし、興奮したように話をしている割には身振り手振りが大きくなっていないし、瞳孔も開いていない。最初から準備していた台詞を説得力があるように感情的に言って見せただけ、と疑うには十分だった。

「国益に繋がるのなら理解を見せてくれるかもしれない、と思っていたのですがね」

「そこまで考えているのなら、僕と兄の仲があまり良くないことも知っていたのでしょう?」

「勿論です。上手くいけば協力してくれると思ったのですが。何時から気付いていました?」

 ニコニコと笑顔を貼り付けて話すエルガー伯爵子息は、何時から計画していたのだろうか。じわじわと近付いて、隙を見て黒魔術を発動させようとしてきている。当然、僕もできる限り中心に近付かないように後ろにさがる。

「宝石の価値についての話題になった辺りからです。そこで矛盾に気付きました」

 魔術道具を作成したいのなら、安く魔石になる鉱石を手に入れられる方が都合はいい筈だ。なのに、彼は使用する鉱石は一部だ、と述べた。防御魔法の為の鉱石に限定すればいいと言ったのだ。

「僕が防御魔法についての知識が無いと思っていたのでしょうが、殿下のお側には、防御魔法を扱える者はいるのです」

 そう、紫色の瞳を持った人物がいるのだ。


次回更新は1月7日17時予定です。

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