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ハガル・トッカータ  作者: 借屍還魂
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悪戯の知識

 その三年生は、ベルナール伯爵令嬢の後ろをついて来ている存在について、明言はしないものの、特徴を教えてくれた。

「あいつは、悪戯好きらしいわ。夜中に物を動かしたり、隠したりする。酷い時は寝ている相手の耳を引っ張ったり、布団をはがしたりするし、その手は驚くほど冷たいの」

「やられたことがあるんですか?」

「私は物を隠されたくらいだったわ。夜更かしをした人を優先的に狙うみたいだから、優先度が低かったんでしょうね。今の時期も、被害が深刻な人の対応が終わって、今迄何もなかった子に悪戯が始まったんでしょう」

 つまり、流星群の翌日に授業中に居眠りしてしまったほどに夜更かしした生徒は、既に先生方によって対策をして貰った。そして、対策をして貰った相手には手を出せなくなったので、今迄狙っていなかった令嬢たちを狙い始めた、ということか。

「悪戯をすると決めた相手の後ろをどこまでも付いて行くの。ただ、決めた相手以外がいるときは何もできないから、一人にならなければ大丈夫」

「ありがとうございます」

「対処法は知らなくて何もできないの、ごめんなさいね」

 それだけ覚えているなら、対処法に関しても何か知っていると思ったのだが、二年前に同じようなことが起きた時は、他の生徒と一緒にお守りを持たされただけで、悪戯が無くなると同時に回収されたので詳しい事は全く分からない、ということだった。

「というか、お守り効くんだね……」

「お守り、の内容にもよりますよねぇ」

 自分たちの教室に戻りながら話をする。お守りと言っても、手のひらサイズの布に包まれたものを渡されただけで、中身は何かわからないのだ。防御魔法などが発動する魔術道具のようなものだった可能性もあるし、魔除けのようなものなのかもしれない。

「魔除け、とはいえ、種類って沢山ありますよねぇ」

「地域によって魔除けになるものが違ったりするからね」

「それに、特定の存在にだけ効くものもありますね」

「逆を言うと、かなり限定的なものを使わないと対処できない相手もいるね」

 代表的な魔除けは、アミュレットやチャーム、タリスマン。それに、護符や鈴、食べ物なら桃や塩、小豆やニンニク、鉱石類ならエメラルドやオニキス、水晶やターコイズあたりが有名だろうか。一応、銀も魔除けに入る気がする。

「取り敢えず、銀製品は持ってますよね?」

「あ、はい。生まれた時にスプーンを」

「一応、近くに持っておいた方がいいかもしれません」

 殆どの貴族の子供は、生まれた時に幸福を祈って銀のスプーンを送られる。この国の場合、瞳と同じ色の宝石を持ち手部分に埋め込んだデザインが人気だ。なので、貴族院に入る生徒は大抵銀のスプーンを持っている。今回の相手に効くかはわからないが、ないよりマシだろう。

「後は、特徴から相手を特定することが大切だけど」

「僕が気になったのは、名前を付けてはいけない、の部分かな」

「どういうことですか?」

 聞いた話では、相手に名前を付けてはいけないという事とだったが、名前がないのなら本で調べることも難しい。だが、こういう場合、名前を付けてはいけない、というのは種族名を付けてはいけない場合と、個体名を付けてはいけない場合がある。

「今回の相手は悪戯をするだけの存在みたいだし、名前を付けてはいけない、というのは、固有の名前を付けてはいけない、という事だと思うんだ」

「でないと、対処方法を残したりするのは難しいですよねぇ」

「先生方の対応の速さからしても、恐らく対応マニュアルがある。種族に関しては調べたらわかると思う」

 悪戯をするだけの存在と言うのは結構いる。有名なのは、プーカやブラウニーだが、この二つは相手を適切に扱えば悪戯はしないし、名前を付けてはいけない、というルールはない。

「ピクシーの可能性は?」

「足音がする、の時点で考えにくい。それに、ピクシーなら上着を裏返して着ればいい」

「お守りを貰った、と言っていましたし、違いそうですねぇ」

 取り敢えず、挙げれるだけ候補を挙げていこう、と言うことになり、次々と悪戯をする存在の名前を出していく。消去法で特定できるかもしれないからだ。

「グレムリンは?」

「機械がない」

「ジャックフロスト?」

「季節が違い過ぎる」

 グレムリンは機械に悪戯をするので、貴族院に出たとしても生徒の部屋には来ないだろう。ジャックフロストに関しては、もう既に冬は終わっている。

「……流石に、資料がないとわからないですね」

「放課後調べましょう」

「そうだね」

 午後の授業は男子は算術、女子は刺繍だったか。令嬢には悪いが、放課後まで待ってもらおう。女子と別れ、殿下と歩いている時、唐突にミフネ嬢に香り袋を返すのを忘れたことを思い出した。

「モミジ、どうかした?」

「いえ、ミフネ嬢に、借りていたものを忘れていて」

「放課後にも合流するだろうから、後でもいいとは思うけれど……。気になるなら今から追うかい?」

 本人に会ってすぐに思い出さなかったという事は、あまり重要な事ではないだろう。僕は少し考えてから、首を横に振った。

次回更新は7月25日17時予定です。

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