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ハガル・トッカータ  作者: 借屍還魂
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不調の予兆?

「…………ミフネ嬢、この話、他の人には?」

「まだしていません。するとしても、ヴィヴィア先生に伝える予定です」

 今後の方針は僕と一致しているようで安心した。それにしても、もし一連の事件が人為的なものだったとして、いつもの事だが重要になるのは誰が、何のために起こしているのか、という事である。

「共通点を探すって言っても、魔法が関わることばかり、ってことくらいしか……」

「その時点で、ある程度魔法に詳しい相手だと判断はできますね」

 後は、貴族院に詳しくないと難しい事も多いだろうか。特に、黒魔術の部屋は中々見つけられなかったし、八年以上使われていなかった部屋を見つけたとなると、建物の構造から部屋数が足りないこと見抜いたことになる。つまり、一度はあの場所に行ったことがある人物だろう。

「色々加味したら、取り敢えず、一年生の大半は候補から外して良いでしょうね」

「地方出身の方は基本的な魔法しか扱えませんし、土着の儀式なんて知らないでしょうからねぇ」

「となると、王都付近出身者か、二、三年生になりますが……」

「もう一つ、共通点がありますよ?」

 如何せん、数が多い。もう少し絞らなければ報告するにしても曖昧過ぎて、寧ろ迷惑になってしまうだろう。そう思っていると、ミフネ嬢がまだ共通点はある、と言った。だが、その表情はいつも、僕達が気付かないことを言う時の不敵な笑顔ではなく、真剣なものだった。

「わたし達が深く関係していることです」

「……あ」

 言われて、ハッとした。完全に忘れていたが、一連の事件に僕達は全て関わっている。関わっているからこそ、今、こうやって話し合いをしているのである。灯台下暗しとはこのことだろう。ミフネ嬢が先に気が付いたことに悔しさはあるが、手掛かりが増えたと明るくとらえることにする。

「黒魔術はモミジさんを狙って行われたものです。黒魔術の部屋だけ教えれば関係ない、と言いたいところですが、あの三人はモミジさんに対して負の感情を抱いている、という共通点から集まっている人たちでした」

「モミジを狙いそうな人物を選んで教えた、と考えたわけだね」

「で、悪魔はわたしを狙っていました。今回はクインテットさんが意識不明、わたし達も問題に答えることになりました」

「後者に関しては、実際に乗っ取られたのはフィッシャー辺境伯爵子息だったけれどね」

 改めて整理すると、今年起こった問題の渦中には常に僕達がいるような状況である。先生が呆れもするはずである。

「まだ、今回の男が生徒の意識を奪った方法は完全には判明していませんが、数人しか被害者が出ていないことから、特定の人物を狙った犯行とみて構わないでしょう」

「被害者全員に対して恨みを持っていそうな人物が見つかればいいけど、逆に、カモフラージュの為に関係ない人物を入れている可能性もあるな」

「その辺りはあまり期待しない方がいいでしょうね。一応、考えてはみますけど」

「動機が分かれば殿下をお守りしやすいのですが……」

 何故僕達を狙っているか。クインテット嬢の言う通り、相手の動機を突き止めることが重要だ。一番厄介なのは殿下に危害を加えたい場合である。僕かミフネ嬢、クインテット嬢の立場を奪いたい、又は恨みがある、というのなら各自で対応できるというか、最悪殿下と別行動ができる。

「……では」

「そうですね」

「……あ、モミジ様」

逆に、殿下を狙っているが、僕達が常に一緒に居るのでまずは僕達から排除しようという相手だった場合は、選択授業や寮での時間に行動を起こすのではないだろうか。一番武術に長けているクインテット嬢がいないときに武器を持った相手が来たら、魔法の相性が悪い相手だったら、

「モミジ様」

「っ、クインテット嬢、すみません、聞いていませんでした」

「いえ、構いませんが……」

 自分の考えに没頭しすぎて、話が全く耳に入って来ていなかった。声を掛けてくれたクインテット嬢に謝ると、構わないと返してくれたものの、何か言いたげな表情で僕の方を見つめている。

「えっと、聞き逃した部分をもう一度言って貰ってもいいですか?」

「あ、いえ、そう、ですね。今から、ヴィヴィア先生の所に報告と相談に行こう、とのことで……」

 二回は言い難い事のだったんだろうか、と思いつつ聞き返すも、帰って来た返事は特に言いよどむような内容ではない。不思議に思いつつ、いつも通り、殿下の少し後ろに行こうとすると、既に殿下とミフネ嬢の姿が無い事に気が付いた。

「え!?置いて行かれた?」

「そのようです……」

「僕が遅いからクインテット嬢だけ残して言った訳じゃなくて、クインテット嬢も気付いてなかったんですか?」

「はい、不甲斐ないですが……」

 気配に敏感で、殿下を常に気にしているクインテット嬢らしくない。意識を取り戻してから、まだ本調子ではないのだろうか。そんなことを考えつつも、取り敢えずは二人に追いつかなければ、と全速力で走り始めた。


次回更新は11月17日17時予定です。

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